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四季島、瑞風、ななつ星 鉄ちゃん視点で見る豪華列車

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NIKKEI STYLE

日経トレンディネット

「極上の鉄道旅」をテーマにした取材で、2017年5月1日に走り始めたクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」(JR東日本)、6月17日運行開始予定の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風(みずかぜ)」(JR西日本)の車両を見学する機会を得た。

車中泊しながら観光スポットを周遊するクルーズトレインのパイオニアが、2013年に運行を始めた「ななつ星in九州」。運行開始から3年たっても、未だに定員の20倍を超える申し込みがある人気列車だ。今年運行を始める2列車は、ななつ星の成功を見て本州のJR2社が"後追い"したものともいえる。

しかし、完成した車両を見ると"三社三様"の考え方があり、車両のコンセプトがまるで異なっていることに驚く。鉄ちゃん的視点で、3つのクルーズトレインの違いを紹介したい。

(1)「どこでも走れる」驚きの秘密

クルーズトレインの運行区間は、東北本線、山陽本線といった幹線だけではない。風光明媚な車窓や観光スポットはローカル線の沿線にあることも多く、四季島は磐越西線(新津-会津若松-郡山)、ななつ星は久大本線(久留米-湯布院-大分)など、今まで夜行列車が走っていなかったような区間もコースに組み込まれている。こういったローカル線は電化されていないことが多く、現在、特急列車の主流である電車は走ることができない。

その問題をななつ星は"原始的"な方法で解決した。動力の付いていない客車をディーゼル機関車が引っ張る、「ブルートレイン」と同じ方式を採用したのだ。客車にエンジンやモーターがなく、静粛性を保てる点もメリットだ。

一方、後発となる2列車は最先端技術で対応している。四季島は通常は電車として走行。電化されていない区間ではディーゼル発電機を用いてモーターを動かすことにした。発電機は10両編成を動かすために巨大なものとなり、両端の展望車に搭載。1両の重さは60トンといい、これは機関車並みの重量だ。

車両が重いと線路や橋梁への負担が大きくなり、保守管理が大変になる問題がある。ただ、四季島が走るローカル線・磐越西線は「SLばんえつ物語」の運行区間。重量が100トンを超える蒸気機関車に対応できているので、特に問題はなかったようだ。

四季島がさらにすごいのは、新幹線の線路も走れること。もっとも、線路の幅が広い新幹線に乗り入れられるわけではなく、北海道新幹線と在来線が共用する青函トンネルに対応しているのだ。この区間は線路の幅こそ在来線だが、電圧は新幹線と同じ交流2万5000ボルト(在来線は2万ボルト)、保安システムも制限速度が運転台に表示される「デジタルATC」が採用されている。

これらに対応した結果、四季島は直流1500ボルト、交流2万ボルトと2万5000ボルト、ディーゼル発電という4つのモードを搭載することになった。

では瑞風はどうか。こちらはクルマの世界でメジャーになったハイブリッド方式を採用。ディーゼル発電機で発電した電力とバッテリーアシストを組み合わせてモーターを駆動させている。素人目には四季島と同じようにも思えるが、瑞風は電化区間であってもディーゼル発電機を使い続ける点が異なる。

ディーゼルカーのエンジン音は電車のモーターの音より大きめで、寝台列車には不向きとされてきた。瑞風ではエンジンを両端の展望車と食堂車、ラウンジカーの4両だけに配置。各個室がある車両には置かないことで、就寝時の騒音を最小限に抑えている。ちなみに、ディーゼルエンジンで直接駆動させるのではなく電気モーターを使ったハイブリッド形式にしたのは、発電機の部分以外は電車と同じ構造で、保守点検がしやすいためという。

(2)ななつ星はクラシック、四季島はモダンなデザイン

ななつ星では、水戸岡氏が手掛けたぜいたくな内装が大きな話題を呼んだ。天然木を使い、組子欄間など細かな装飾が施されている。全体としてはクラシカルなデザイン。その理由について、水戸岡氏は「クラシカルなものは、誰にでもその良さが理解しやすいから」と話す。

実は、水戸岡氏が当初提案したのはモダンなデザインだったという。しかし「JR九州の唐池恒二社長(当時)に、モダンではなくクラシックなデザインにしてほしいと言われた」(同氏)。見たことのないモダンなものは、その良さを理解するまでに時間がかかる。これに対し、長い歴史の中で良いものだけが残ってきたクラシカルなデザインなら、誰しもが上質だと感じられるという考え方からだ。とはいえ、見た目はクラシックだが、技術は最先端。例えば壁や天井は一見木でできているようだが、実際はアルミ板に0.2mmと極薄にスライスした木を貼りつけた「突板」を使っている。

これと真逆のアプローチなのが、四季島。デザインしたのはフェラーリなどのデザインで知られる奥山清行氏。天然木や和紙、漆など伝統的な素材を使いながらも、全体としてはモダンなテイストにまとめられている。いわゆる「和モダン」なデザインにしたことについて、奥山氏は「ただ昔のものをまねするのではなく、新しい日本の伝統というものを作り出さなければと考えている」と話す。過去のデザインを引用しつつ、現代に合った形にするのが奥山流。デザイナーズホテルのような空間になっている。

では瑞風はどうか。モチーフとなったのは昭和初期に流行した「アール・デコ」という様式。クラシカルな装飾でありながらも直線を基調としており、モダンな一面も備えている。重厚な雰囲気で、伝統あるシティホテルのような雰囲気だ。

「伝統」こそが瑞風のキーワード。列車名に冠する「TWILIGHT EXPRESS」の名は、1989~2015年まで大阪~札幌間で走っていた豪華寝台特急から受け継いだ。目的地が北海道から山陰・山陽へと180度変わり、「全く新しい列車」(JR西日本)という位置づけではあるものの、随所に旧列車の面影が残る。

(3)展望車に見る思想の違い

クルーズトレインの魅力は何か。クルーによる心温まるもてなしや、食堂車で味わう料理なども大きな要素ではあるが、それだけではホテルと変わらない。鉄道の旅ならではの魅力は、何といっても移ろいゆく車窓だろう。そのために各列車とも展望車を設けている。

ただ、その設計は大きく異なる。ななつ星の展望車といえば、JR九州の唐池社長(当時)が「30億円の額縁」と名付けたエピソードが有名。30億円はななつ星プロジェクトの総額。では額縁とは何か。ななつ星の最前部と最後部は平面の一枚窓(縦1.5m、横2.3m)になっており、木の大きな窓枠で囲われている。つまり、額縁の中に風景が見えるというわけだ。

風景は額縁に入れたほうが際立って見えるというのが水戸岡氏の考え。同氏の手掛けた車両を見ると、横長の大きな窓ではなく、1席に1つずつの正方形の窓が多い。「富士山ビュー特急」(富士急行)のように、もともと大きかった窓の中に、あえて木の窓枠を作って小さくしたケースすらあるのだ。水戸岡氏いわく「窓が大きすぎると、光が入ってきすぎて疲れる」。確かにそれも一理ある。

四季島の展望車は窓が天井まで回り込み、開放的。前面展望が運転台越しになってしまうのは残念だが、景色に包み込まれた感覚になれるのは、おそらく3列車の中でトップクラスだろう。日中は四方八方から光が差し込み、そのうえ壁やソファが純白なので、とにかく明るい。これは奥山氏が狙ってやっていること。ほかの車両は照度や窓の大きさを変え、落ち着いた雰囲気にしており、「さまざまな車両を歩き回って明るさの変化を楽しんでほしい」(奥山氏)。

瑞風は、運転台の下の部分に展望デッキを設置。事故防止のため先頭には出られないが、最後尾なら走行中も外に出ることができる。デザインと同様、戦前に流行した展望デッキ付きの豪華列車へのオマージュだ。

加えて展望デッキの設置は、列車名に含まれる「風」を肌で感じてもらおうという趣向でもある。ちなみに各個室にも開閉できる窓を設置。窓が開くのは、豪華列車では珍しい。

(4)ななつ星と同じところ、変えたところ

日本の在来線の車両は、欧米の鉄道車両と比べて小ぶり。限られたスペースの中でどれだけゆったりとした個室を作れるか。ななつ星の挑戦はそこから始まった。

水戸岡氏がたどり着いたのが、線路と同じ方向に置かれたソファを手前に引き出すとベッドになるギミック。限られた空間でも昼と夜の快適性を両立させた。車両の片側が通路になっているため、客室から両方の景色が楽しめないという問題は、入口の扉をエッチング入りのガラス張りにすることで、プライバシー性と眺望を両立。狭い感覚も緩和させている。

四季島の「スイート」と瑞風の「ロイヤルツイン」は、どちらもななつ星と同じようなソファとベットの兼用タイプを採用。これは必然と言えるかもしれないが、個室の細部には違いがある。

四季島は「長時間いても落ち着ける空間」(奥山氏)にすべく、窓の大きさは控えめにし、照度も絞っている。個室が設置されているほうと反対側の景色を見るためには、廊下に出る必要がある。廊下の窓は、ちょうど顔の高さに小さな窓が並ぶ独特の形状。水戸岡氏の言う"額縁効果"を別の形で狙ったものだ。

一方、瑞風の窓はとにかく大きい。前述の通り、一部の窓は開閉できるようになっていて、景色や空気を五感で楽しむ。また、個室と廊下の間仕切りを大きく開け放つことができ、プライバシーは犠牲になるものの、両側の景色を見ることができる。瑞風の場合、瀬戸内海は個室側、日本海は通路側となるので、両方に対応できる構造が必要だったのだろう。

また、さらに上級となる四季島の「四季島スイート・デラックススイート」と瑞風の「ザ・スイート」には、ななつ星にはなかったバスタブが設置されている。

四季島のバスタブは、なんとヒノキ風呂。窓には障子がはめられており、まさに和の空間となっている。車体の振動で湯がこぼれるのを抑えるため、浴槽の内側に波を静めるでっぱりが付いているのが面白い。

アール・デコ調の瑞風は、クラシックな脚付きのバスタブを設置。ちなみにこのザ・スイートは1両まるごとが1部屋になっているという、世界的にも珍しい個室。2人用だが、ソファをベッドにすれば4人まで利用できる。とはいえ1両の定員が4人というのは、日本最小である。

瑞風でもう一つ特徴的なのが、1人用の個室「ロイヤルシングル」がある点。ななつ星、四季島も2人用の個室を1人で使うことはできるが、2人利用が原則となっている。

ロイヤルシングルのベッドなどの配置は、15年に引退した旧トワイライトの「ロイヤル」を思わせる。エキストラベッドを出して2人で利用することもでき、その場合は2段ベッドになる。これも往年の寝台列車を思わせ、懐かしさを感じる。

(日経トレンディ 佐藤嘉彦、写真 山本さとる、都築雅人、水野浩志)

[日経トレンディネット 2017年5月8日付の記事を再構成]

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