2017/5/24

岡本 マーケットに関係しているすべての業者の収益構造をよく理解しておかないとね。

大江 私は「中立的なFPです」と言うFPは信用しないようにしているんです。なぜかと言うと、FPは中立であってはいけないんですよ。お金をもらった依頼者の味方でないといけない。弁護士と一緒で、弁護士は正義を実現するわけではなく、依頼者の利益を最大化するために働きますよね。FPも、依頼された人の利益を最大化すべきです。中立なのは裁判官で、弁護士も、税理士も、依頼者の利益を最大化しないといけない。

そういう意味では、金融機関に所属するFPというのは、給料を会社からもらっているわけですから、会社の利益を最大化するために動くのは当たり前の話なんですね。それを「悪い」と言うのではなくて、それを知った上で、相談者や投資家は話を聞くべきです。

竹川美奈子さん(左)、岡本和久さん(右)

岡本 大切なのは、中立じゃなくて、独立なんですよね。所属している組織から独立しているかどうか。

大江 そうですね。あえて言えば、商品に対して中立、というのならわかりますね。

馬渕 それでも、例えば保険会社からいくらかもらっていると、「あなたは保険に入らないのがベストです」とは絶対に言いませんよね。〇〇生命にするか××生命にするかは中立だったとしても。

岡本 保険会社の窓口で、「あなたは保険に入らないほうが良い」とは言わないですね(笑)。

大江 でも、入らないほうが良い人もいるわけですよね。

FPにも専門分野がある

――さまざまな専門家がいる中で、良い専門家の見抜き方というのはありますか。

馬渕 表面的にはすぐわからないと思います。その人の話を聞いて、どんな主張だったとしても、よほどロジックがメチャクチャとか、言っていることが理解できないとかでなければ、なかなかわからないと思います。そこで、誰が何を言ったかメモを残しておくなど、フォローするとよいのではないでしょうか。言うことがコロコロ変わる人は信用できないと思いますね。

大江 正しいアドバイスをしているかどうか、判断するのは難しいですよね。たまたまうまくいくこともあるわけだし。

岡本 自分で考えるよりないです。私は長期間にわたって、超強気の人と超弱気の人、2人をフォローしています。馬渕さんじゃありませんよ(笑)。もちろん、言っていることはもっともだな、という納得性が両方ともにないといけません。その上で、自分の立ち位置をどの辺りにするか決める。

馬渕 専門家については、この人はどういうスタイルなのか、見極められると良いと思うんですね。自分の投資スタイルと合うか合わないか、ということですね。私は、短期投資家の方を対象とした話もしていますから逆張り的なことも言いますが、それはもしかしたら長期投資家の方にとっては邪魔な話かもしれないですよね。短期的には「上がったら売りましょう」で良いのですが、長期的にはずっと持っていたほうが良いかもしれない。

だから、自分がどういう投資をしたいのかで専門家のタイプを見極め、アドバイスを使うか使わないかを決める。その際、その人の話を丸ごと使うか使わないか決めるのではなく、全体としては使い物にならないけど一部だけは参考にするとか、道具として使えばよいと思っているんです。

竹川 FPは、スタンスが変わらない人の方が良いと思います。それと、金融機関の広告に出まくっている人はやめたほうが良いかなと。ある雑誌の広告ページで運用会社の社長と対談していたFPが、同じ時期に別の雑誌の記事で個人投資家にその運用会社の商品を勧めていたんですよ! 明らかに利益相反じゃないかなと思って。今、金融庁が「顧客本位の業務運営」をするように言っています。金融機関はもちろんですが、FPも顧客本位の業務運営を考える必要があります。

大江英樹さん(左)、馬渕さん(右)

大江 それともう1つ、お客さんも対価をちゃんと払わないとダメですよ。無料だからと喜ぶだけではなく、FPにちゃんとお金を払わないと、質の悪い人が増えると思います。見分ける方法は非常にシンプル。「あなたは金融機関から販売手数料をもらっていますか。それとも私の相談料だけですか」と聞けばいいんです。販売手数料をもらっていたら、FPはそれを言わないといけません。FP協会の業務倫理規定で、ウソはつけないんですよ。きっと、「もらっていますけど、中立です」って言うと思います(笑)。でも、もらっているから悪いということではないんです。もらっていると知った上で、相談したほうが良い。実際、もらっていないFPはごく少数です。相談料だけで食べていける人はほとんどいないですからね。

もう1つは、相談する相手を間違えてはいけないということ。FPにも専門があります。例えば、私もFPの資格を持っていますが、不動産のことを聞かれても全くわからない(笑)。FPの中でも、不動産が得意な人もいれば、保険が強い人もいるし、株が得意な人もいるわけですね。胃が悪いのに耳鼻科に行っても、きちんとした手当てはしてもらえません。医師と同じで、専門の分野というのはあるわけです。より専門的に相談したいのなら、「あなたの得意分野は何ですか?」と聞いたほうが良い。たぶん正直に言ってくれると思いますから。

竹川 「全部」って言ったりして(笑)。

大江 そう言う人は、信用しないほうが良い(笑)。「何でもできます」というのは、結局、「何もできない」ということと同じなんです。

岡本 FPの役割は重要になってきていると思うんです。専門的なアドバイスをするというよりも、付添人のようなかたちで。最近、投資をしていない方と話をする機会も多いのですが、投信のことを説明してもほとんどご存じないんですね。「では、とりあえず5000円で投信を買ってみましょう」「どこで売っているんですか?」「つきあいのある銀行に行って聞けばいいんですよ」「銀行に行って話を聞くときに、誰かついてきてくれる人はいないんですか?」という感じです。そのようなニーズって、すごくあるのではないかと思います。

一同 ありますね。

竹川 知り合いのFPは、お客さんと一緒に年金事務所に行くそうです。そうすると、問題がすぐ解決する。お客さん自身だと質問がうまくできず、いつまでたっても解決しなかったのですが、FPが一緒に行って正確に質問したことで、すぐ解決したのだとか。そうした取り組みはアリかもしれないですよね。

岡本 金融機関に相談に行ったら余計な商品を勧められて、買ってしまうことも多いですからね。

■この人に聞きました
馬渕治好さん 世界経済・市場アナリスト
竹川美奈子さん ファイナンシャル・ジャーナリスト
岡本和久さん 投資教育家&ファイナンシャル・ヒーラー
大江英樹さん 経済コラムニスト

日経プレミアシリーズ『投資の鉄人』の一部を再構成

投資の鉄人 (日経プレミアシリーズ)

著者 : 岡本 和久, 大江 英樹, 馬渕 治好, 竹川 美奈子
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 918円 (税込み)


注目記事