3浪で日大医学部へ 「神の手」磨いたパチンコ通い天野篤・順天堂大学医学部付属順天堂医院院長が語る(下)

天皇陛下の心臓冠動脈バイパス手術の執刀を任された時は、すでに十分な経験を積んでいたので自信はありました。そして何より自分にとってよかったのは、陛下を担当した後の5年間で、それまでの20年間に匹敵するくらいの成長を経験できたことです。それくらい陛下は人として素晴らしい方。陛下が国民と共にいらっしゃる限りは、私も患者と共にいよう。そう自分に誓いました。

最近は、外科医志望の高校生への支援に力を入れている。

医者になる時に外科医を選んだのは、人より3年遅れていたので、その分1日でも早く1人前になりたかったから。外科医の方がその可能性が高かった。もう一つは、テレビドラマ「白い巨塔」の影響です。野心むき出しの主人公、財前五郎が芸者に囲まれて食事をするシーンを見て、外科医は格好いいなと思いました(笑)。

真面目な話、外科医は格好よくなくてはいけないと思っています。最近は外科医のなり手が減っていますが、それは若い人が憧れるような格好いい外科医がいないからだと、私は考えています。

4年前、浦高の医学部志望の生徒3人を、夏休み期間中、手術室に招いて私の手術に立ち会わせるという試みをしました。

現在の浦高校長の杉山剛士先生から、生徒のために何か協力してもらえないかという話をいただき、だったら私たちも外科医不足で困っているので、外科医の仕事を実際に見てもらい将来の進路選択に役立ててもらおうと。まあ、現役時代、不真面目な生徒だったことへの贖罪(しょくざい)の意味もありました。

それ以降、毎年、浦高以外からも含めて医学部志望者を手術に立ち会わせ、さらには手術前後に患者と面会させるという体験学習を続けています。参加する高校生には、手術のことだけでなく、外科医になることの覚悟だとか、医学部生には1人平均1億円という莫大なお金が費やされているのだから、1日でも早く医者になって、受けた恩を社会に還元しなさいといった話もします。

心臓外科は結果が見えやすいので、みんな話をよく聞いてくれます。体験後の感想で、約8割が将来は外科医になりたいと言ってくれているので、目論見は順調です。

浦高の生徒を見ていると、自分の浦高時代を思い出すこともありますね。不良生徒でしたが、麻雀にしてもスキーにしても、いろいろなことに興味を持ちました。自分の可能性を信じ、夢を見させてくれた高校時代というのは、60歳を過ぎてもこうして前を向いて進んでいける原動力になっているのかなと思います。

(ライター 猪瀬聖)

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