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ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測しているリブロ汐留シオサイト店だ。企画やマーケティングにからむスキル系の本というこの店の定番の売れ筋が相変わらず好調なほか、季節ものとして決算関連の本の動きがいいという。そんな中、新刊で目立った売れ行きを見せていたのは、半年ほど前にこの世を去った名ラガーマンが残した言葉を編集した異色のリーダー論だった。

平尾語録、「リーダーの力」がキーワード

その本はマガジンハウス編『平尾誠二 人を奮い立たせるリーダーの力』(マガジンハウス)。平尾氏のことはラグビーファンのみならず多くの人の記憶に新しいだろう。同志社大学の大学選手権3連覇、神戸製鋼の日本選手権7連覇という選手時代の華々しい活躍を思い出す人もいれば、日本代表監督など指導者としての仕事ぶり、そしてその早すぎる死が心に残っている人もいよう。その平尾氏が本やインタビューで語ってきた言葉を、「リーダーの力」をキーワードにして再構成したのがこの本だ。

「強い組織をつくる」「強いリーダーをつくる」「強い個を育てる」「強い日本人になる」の4つの章立てで、91の平尾語録を収める。「場所に人を当てはめるのではなく、人に場所を当てはめる」「『おもしろい』と思えなければ、主体性は芽生えない」……こうした印象的なひと言に1ページほどの短文が付く。一度に読み通すのではなく、手もとに置いて、ちょっとした時間に開いて気になった言葉のページを読む、というような読み方がいいかもしれない。語録の一言一言から自分なりのリーダーについての考え方を深める、その道しるべになるような本だ。

恩師の寄稿や豊富な写真も収録

特別寄稿として、同学年で深い親交があったノーベル賞受賞者の山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所所長、恩師の山口良治・伏見工高ラグビー部総監督、妻の恵子さんの思い出語りも収録する。その中で山口氏は、平尾氏のリーダーの資質について「人の話をよく聞く人間だった」と回想し、その聞いた話を「自分の中で咀嚼(そしゃく)して、自分の言葉で相手に伝えることができた」と振り返っている。そんな平尾氏自身の「自分の言葉」で語られたリーダー論だからこそ、短い言葉に強さと含蓄がある。「主体性をもった個人がつくっていくのがチームだ」「支配型・強権型リーダーシップでは、10番にはなれても、1番にはなれない」。こんな言葉が響いてくるリーダー論だ。

「4月刊行の本の中では、とりわけいい売れ行き。平尾さんと同世代のビジネスマンが手にとっている」と店長の三浦健さんは話す。写真も豊富で、追悼出版の趣もあるつくりに平尾氏の死を惜しむ人たちが反応している面もあるようだ。

『生産性』が再び上位に

それでは先週のベスト5を見ておこう。

(1)さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版トム・ラス著(日本経済新聞出版社)
(2)孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごいPDCA三木雄信著(ダイヤモンド社)
(3)生産性 伊賀泰代著(ダイヤモンド社)
(4)平尾誠二 人を奮い立たせるリーダーの力マガジンハウス編(マガジンハウス)
(5)デジタルマーケティング 成功に導く10の定石電通デジタル著(徳間書店)

(リブロ汐留シオサイト店、2017年5月8日~5月14日)

冒頭の本は4位にランクインしている。1位は4月に八重洲ブックセンターを訪れたとき注目の本として紹介した1冊。自分の強みを知るといった自己啓発系の本のニーズはここ汐留でも高い。2位のスキル本は、3月にこの店を訪れたときにも売れ筋として紹介した。5位のマーケティング本は4月のベスト5にも入っていて、いずれも根強く売れ続けている。3位の『生産性』はもともと良く売れていたが、4月にテレビで新入社員に薦めたい本として紹介され再浮上している。

(水柿武志)

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