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人気の「お任せ運用」 コストは高めで見えづらく ラップ口座、ファンドラップ、ロボアド

2017/5/21

「お金のデザイン」が提供するロボット・アドバイザーの画面

 午後8時すぎ。筧家では幸子と息子の満が相変わらず投資の話で盛り上がっています。話題の中心はやはり、投資にかかる手数料。最近は満もずいぶんと詳しくなりました。そこへ娘の恵が会社から帰ってきました。

 幸子 随分お疲れね。

  大型連休を乗り切ったら夏休み向けの仕事で大忙し。誰かに丸投げしたいわ。

  仕事を人任せにはできないよ。資産運用ならプロに任せるサービスが人気だよね。

 幸子 金融機関に運用を任せるサービスのことね。「ラップ口座」などと呼ばれるわ。日本投資顧問業協会によると、ラップ口座の残高は2016年末で6兆4148億円。4年ほど前は1兆円にも満たなかったから急増といえるわ。野村、大和、SMBC日興など大手証券会社や三井住友信託銀行などは特に残高が大きいのよ。

  金融機関に運用を任せる流れが知りたいわ。

 幸子 まず金融機関が顧客から運用の目的や、どれくらいの値動きなら我慢できるかという「リスク許容度」などを聞き取り、その人に適した資産配分を提案するの。顧客が納得すれば、金融機関に運用を任せる「一任契約」を結ぶわ。契約を結んだ後、金融機関は金融商品の選択や購入、それぞれの商品の値動きによって乱れた資産配分の再調整まで代行するのよ。

  投資の対象は?

 幸子 ラップ口座で今、大きく伸びているのが「ファンドラップ」よ。複数の投資信託を組み合わせ、個人ごとに適した資産配分を目指すの。300万~500万円を最低投資額として申し込みを受け付ける金融機関が多いわ。

  手数料はどれくらいかかるの?

 幸子 運用を任せることへの報酬と口座を管理する費用などをひとまとめにして、資産残高に一定率をかけた形で徴収されるわ。水準は各社で差があるけど、イデア・ファンド・コンサルティングの吉井崇裕社長は「報酬部分で年0.5%、口座管理部分で年1%、計年1.5%程度が平均でしょう」と教えてくれたわ。

  その水準なら、お得なのかしら?

 幸子 そう考えるのは早いわ。ファンドラップのコストはほかにもあるのよ。金融機関に払う直接の手数料以外に、ラップ口座で投資した投信にかかる信託報酬などのコストが間接的に資産から差し引かれているわ。信託報酬は見た目にはわかりづらいけど、日々、資産から引かれていくから重要よ。吉井さんはラップ専用投信の信託報酬の水準を「平均で年1%程度」とみているわ。運用報酬や口座管理費と合計すると年2~3%になる計算ね。

  そう聞くと高いね。

 幸子 コストを帳消しにできる高い利益を上げ続けられるかによって評価は変わるけど、決して低いとはいえない水準ね。

  もっと手軽に運用をお任せできる方法はあるの?

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 良男の妻。ファイナンシャルプランナー資格を持ち、家計について相談業務を手掛ける。 筧恵(かけい・めぐみ、25=中) 娘。旅行会社に勤める社会人3年目。自分磨きと"コスパ"にはかなりこだわっている。 筧満(かけい・みつる、15) 息子。投資を勉強しながらジュニアNISAで運用中。尊敬するのは米国の著名投資家。

 幸子 お任せという点では、ファンドラップよりもコストや投資単位が低いロボットアドバイザー(ロボアド)も急速に増えているわ。ファンドラップは退職金などを委ねるシニア層の利用が多いけど、ロボアドはスマートフォンなどを使いこなす現役世代が中心客よ。

  ロボットがアドバイスしてくれるのかな?

 幸子 一般に想像するロボットとは少し違うけれど、リスクと収益の様々なパターンをコンピューターが計算し、最適と思われる投資配分を助言したり、提案したりするの。提案までを無料のサービスとして提供する会社もあるけど、その後にファンドラップと同様に一任契約を結び、金融商品の購入や資産の再配分まで担うサービスが増えているわ。

  コンピューターで自動化するから低コストなのね。

 幸子 2016年2月にサービスを始めたお金のデザイン(東京・港)のロボアド「THEO(テオ)」の手数料は最大年1.08%、同7月に参入した楽天証券「楽ラップ」は固定報酬型では最大年0.702%。いずれも投資単位は最低10万円からよ。ただ、ロボアドもこのコスト以外に投資対象の金融商品の間接コストがあるわ。

  どれくらいなの?

 幸子 テオの場合、投資対象は海外のETF(上場投資信託)で、運用中に「経費」と呼ぶコストが自動で差し引かれるわ。その水準は一般的な投信よりは低いのが普通だけど、運用中に変更されることも少なくないので「事前に数値を開示することは難しい」(お金のデザイン)そうよ。楽ラップは「組み入れる国内投信の間接コストも含めて1%未満を目標に運用する」としているけど、急激な相場変動などで一時的に上回る可能性がゼロではないわ。

  比較が難しいわね。

 幸子 ロボアドもコストが適切かの評価は結局、運用実績によって変わるから、表面的な手数料の高低だけでは比べられないわね。単純に分散投資をして、資産配分の再調整も任せたいというだけなら、過去の実績などから運用が安定しているバランス型投信を自分で調べて購入する手段も考えられるわ。お任せ運用の利用を考える場合は自分の投資目的や目指すリターンをよく考えて、幅広い選択肢から適切な商品・サービスを選ぶ姿勢が求められるわね。

■リターンに見合うか熟慮必要
 イデア・ファンド・コンサルティング社長 吉井崇裕さん
 ファンドラップが急増している背景には金融機関側の事情があります。短期間に投信の買い替えを促し、販売手数料を稼ぐ回転売買が金融庁から問題視され、その代替策として拡販が進んだといえます。ただコストは総じて高く、個人投資家はその点を熟慮したうえで投資を判断すべきでしょう。相対的にコストが低いロボアドも、国内の手数料水準は米国と比べれば、まだ高いという見方もできます。
 こうしたコストが、自分が目指す目標リターンに見合う水準かどうかが大事なポイントです。例えば、年3~7%程度の安定運用を目指すならば、コストが年3%では年間のリターンがほぼ半減からゼロという計算になります。長期的に安定運用を目指す投資家は特にコストに敏感になる必要があります。
(聞き手は堀大介)

[日本経済新聞夕刊2017年5月17日付]

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