誤算の日銀物価目標 将来の円高リスクに(加藤出)東短リサーチ社長チーフエコノミスト

日銀の黒田総裁は2%の「物価安定目標」の達成に強気の姿勢を崩していない(4月27日、日銀本店)
日銀の黒田総裁は2%の「物価安定目標」の達成に強気の姿勢を崩していない(4月27日、日銀本店)
「金融緩和策がインフレ率を押し上げる効果は、日銀が思っているほど強くない。そうした現実を正面から受け止めるべきだろう」

日銀の政策目標である2%の「物価安定の目標」(インフレ目標)の達成は誤算続きとなっている。異次元緩和を始めてから約4年。米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が金融政策の正常化に向けて歩を進める中、日銀は緩和の長期化を余儀なくされている。これは将来の政策の手足をしばり、円高リスクとなって跳ね返る可能性がある。

「2%の『物価安定の目標』の実現に向けて状況は着実に改善しています。大切なことは『やり遂げる』ことです」。黒田日銀総裁は5月10日、都内の講演でそう述べた。

しかしながら、実態は苦しい。日銀政策委員会のインフレ率(生鮮食品を除いたコアCPI=消費者物価指数の前年比)予想中央値にそれが顕著に表れている(下のグラフ「日銀政策委員会 コアCPI予想」を参照)。

インフレ目標は下方修正続き

日銀は2013年4月に、今後2年間でマネタリーベース(資金供給量)を2倍にすれば、インフレ率は2%に達すると宣言して異次元緩和策を開始した。その際、15年度のインフレ率は2%近辺になるとの見通しが示されていた。しかし、当該年度が近づいてきたところ、予想は下方修正され始め、結局0%へ低下した。

続く16年度は2%をやや上回る予想となっていたのだが、これも時間の経過とともに狂いが生じ、結局マイナス0.3%へと沈んでしまった。日銀は17年度こそ2%に近づくのだと強調していたが、既に下落が始まっている。この4月時点の予想は1.4%だが、今後も下方修正は続きそうだ。この予想は年度の平均なのだが、今年3月時点の実績はわずか0.2%である。今後急速に上昇していかないと平均は1.4%に届かない。

今年度はエネルギー価格が昨年度よりも高めに推移しそうなので、それがインフレ率をある程度押し上げるだろう。しかし、他の品目に関しては日銀の期待よりも企業は全般に値上げに慎重である。有効求人倍率はバブル期並みの1.45%と顕著な人手不足となっており、非正規雇用を中心に賃金は上昇しているのだが、販売価格への転嫁はゆっくりとした動きになっている。

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