心拍数を活用して体の変化をより正確に知るためには、まず、普段の心拍数を計っておくことが大切です。私は現役時代、朝、目が覚めたらすぐ手首に指を置いて脈拍を数えることを習慣にしていました。

定点観測のように、毎日、起床時の同じ状態で計り続けて記録すると、自分の心拍数の平常値(安静時心拍数)が分かります。平常値を知っていれば、目が覚めて心拍数がいつもよりも高いときは「今日は疲れているな……」といった体調の変化に気づくことができます。1分間じっとしているのが面倒であれば、30秒だけ計ってそれを2倍してもいいでしょう。

安静時の心拍数には個人差があります。一般には成人の場合60~80/分くらいといわれています。アスリートは60よりも低い人が多く、運動不足の人や体調不良の人は80を超えることが多いようですが、大事なのは自分自身の平常値を知ることです。

効果的で体に負荷をかけすぎない「心拍トレーニング」

では、ランニング中の心拍数は、具体的にどんなことを教えてくれるのでしょうか。心拍数は、主に(1)体の疲労度合いや体調の変化(2)運動強度(3)心肺機能の向上度合い、を知る手段になると思います。

(1)については最初に述べましたが、これに加えて(2)や(3)を上手に利用すれば、さらに効果的なトレーニングメニューを設定することができます。それが、「心拍トレーニング」です。

心拍トレーニングとは、心拍数を計測しながら、一定の数値を目標にトレーニングを行うことを指します。心拍数を計りながら走ると、オーバーペースを未然に防ぎ、安全かつ効果的な練習ができるだけでなく、「以前は心拍数が140前後だったのが、今日は同じスピードで走って130に下がった」「心拍数160で息が上がっていたが、最近は呼吸がラクになった」など、心肺機能の向上が数値で分かるようになります。それが運動強度を上げる目安にもなるので、日々の練習をこなす上でのモチベーションにつながるでしょう。

目標とする心拍数の大まかな目安を算出する方法として一般的によく使われるのが、「カルボーネン式」と呼ばれる簡単な計算式です。

目標心拍数=

運動強度(%)×(最大心拍数[220-年齢]-安静時心拍数)+安静時心拍数

詳しくは「カルボーネン式」について説明されている書籍を読んでいただきたいのですが、運動強度とは、その人の最大心拍数(通常は「220-年齢」で計算)に対する、運動直後の心拍数の割合を指します。運動直後の心拍数が高いほど、その運動の強度は高かったということになります。

どのくらいの運動強度でトレーニングを行うかは、目的によって変わります。プロのアスリートのように「競技力向上」を目的とする場合は、運動強度を80~90%、「持久力・心肺機能向上」であれば70~80%、「脂肪燃焼・体重減少」であれば60~70%程度に設定することが多いようです。

例えば、安静時心拍数が70/分の50歳の市民ランナーが、今よりも心肺機能を強化してタイムを縮めたいと思い、運動強度を70%に設定したとすると、70%×(220-50-70)+70=140となり、心拍数140/分程度を目安に走ればいいことになります。

一方、同じランナーが、脂肪燃焼を目標に走る場合は、運動強度はもう少し低くてよいので、60%×(220-50-70)+70=130となり、130/分程度を目標に走ればいいことになります。

ただし、上記はあくまでも目安です。無理のない、自分に合ったトレーニングを心がけてほしいと思います。

次のページ
プロのトレーニングを安易にまねするのは危険