潜入!ミケランジェロの「隠し部屋」 下手すぎる画も

ミケランジェロはこの地下室で自分の人生と芸術を見つめ直していたのではないかと、ビエッティ氏は分析する。部屋の壁には、完成を目指していた作品に加え、すでに完成した傑作と同じものも描かれているという。例えば、ダビデ像(1504年完成)の細部やシスティーナ礼拝堂(1512年公開)の人物画などだ。

ミケランジェロは無限の創造性に駆り立てられた「天才」だった。「そんな彼に何ができるでしょう? ただ描くことだけです」

隠し部屋に描かれていたデッサン。ミケランジェロによる未完の作品「ダビデ/アポロ像」のポーズを連想させる。(PHOTOGRAPH BY PAOLO WOODS, NATIONAL GEOGRAPHIC)
「ダビデ/アポロ像」。(PHOTOGRAPH BY GETTY IMAGES)

ミケランジェロにしては下手な作品も!?

とはいえ、何世紀も前に描かれた署名のないデッサンの作者を断定することは難しい。一部の作品はミケランジェロにしては下手だという意見が大半を占めているようだ。その他の作品については、意見が分かれている。

1975年にこの部屋が見つかった際、ルネサンス芸術の権威とされるある人物は、20世紀最大級の芸術的な発見だと称賛した。しかし、米ワシントン大学セントルイス校でミケランジェロの研究を行うウィリアム・ウォレス氏は懐疑的だ。

このデッサンは素描「キリストの復活」と似ている。(PHOTOGRAPH BY PAOLO WOODS, NATIONAL GEOGRAPHIC)

ミケランジェロは非常に有名だったため、わざわざ地下室に身を潜めなくても、別のパトロンが喜んで受け入れたはずだと、ウォレス氏は分析する。デッサンが描かれた時期についても、1520年代だったのではないかと考えている。建設中の新聖具室でれんがを積んだり、大理石を切ったりする仕事の合間に、ミケランジェロと弟子たちが一息ついていた時のものかもしれない。

いくつかのデッサンは確かにミケランジェロのものかもしれないが、弟子たちが芸術的な難題を解決するため、あるいは休憩時間の単なる暇つぶしのため、壁に絵を描いていた可能性が高いと、ウォレス氏は語る。

素描「キリストの復活」。(PHOTOGRAPH COURTESY HER MAJESTY QUEEN ELIZABETH II, 2016)

「一つひとつの作者を特定することはほぼ不可能です」。ただし、たとえ作者がわからなくても、作品の価値や発見の重要性は変わらないと、ウォレス氏は言い添える。「あの部屋に入るだけでワクワクし、自分は恵まれていると実感します。巨匠とその弟子、助手たちの作業風景をじかに感じることができるのですから」

部屋に入ると、そうした幸運に恵まれた人々の気持ちがよくわかる。部屋の隅に小さな窓が1つあるだけの薄暗い空間で4枚の壁に囲まれていると、まるでミケランジェロの頭の中をのぞいているような気分になり、建物全体がその驚異的な芸術性で満たされていることを実感する。

「彼の才能は無限です」とウォレス氏は言う。「彼は89歳で亡くなりましたが、最後まで進歩し続けることをやめなかったのです」

(次ページで「隠し部屋」で見つかったデッサン5点と関連作品を紹介)

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