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『メッセージ』監督に聞く エイリアン来訪の真意とは

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2017年秋に公開される『ブレードランナー』の続編(『ブレードランナー2049』)で監督に抜てきされたカナダの俊英ドゥニ・ヴィルヌーヴ。これまでに『灼熱の魂』や『プリズナーズ』など手がけた作品が高く評価されてきた、世界中の映画ファンから最も注目を浴びている監督の1人だ。

その最新作『メッセージ』は、初のSF作品ながら、本年度アカデミー賞の作品賞、監督賞など8部門にノミネートされた。ヴィルヌーヴ監督が来日、新作への思いを語った。

『メッセージ』は、優れたSF文学に贈られるネビュラ賞を受賞したテッド・チャンの短編小説『あなたの人生の物語』を原作に映画化。突如、地球に現れたエイリアンと、彼らの言語を読み解くことになる言語学者ルイーズの姿を描く。主演をエイミー・アダムスが務め、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカーらが脇を固めている。

「10歳の頃からSF映画を撮るのが夢でした。でも、カナダでは製作費の問題から撮れそうにない。それが、『灼熱の魂』がアメリカでヒットしたことから、アメリカ人のプロデューサーからこのSF小説に興味がないかと勧められたんです。読むと、"生きる"ことを祝福する物語であり、文化が持つ力、それを掘り下げる物語だった。何より主人公たちが、今の人類に欠けていると思われる謙虚さを持ってエイリアンと接触しようとするところにひかれました。ただ、どうやって映画化したらいいか見当もつかなかったし、当時は初めてのハリウッド映画『プリズナーズ』の撮影中だったので、自分で脚色できなかった。でも、脚本家エリック・ハイセラー(『エルム街の悪夢』)が見事に脚色していて、映画への参加を決めました」

その後、「没入感のある作品にしたい」と脚本をさらに手直し。エイリアンと人類の対話を題材にしながら、主人公ルイーズの視点で描くことで彼女の個人的な物語に導き、生と死、人生、愛、絆、母性などのテーマを浮かび上がらせていく。その一方で、ルネ・マルグリットかダリの絵画に出てくるような巨大な宇宙船やエイリアンなどのプロダクションデザインにも時間をかけたという。

「とにかく見たことがないものを作りたかったから、デザインにはリサーチと熟考を重ねました。でも、新しいものを作っていると思っても、結局はどこかから影響は受けている(笑)。僕の場合は、『メビウス』ほかフランスのバンドデシネ(マンガ)の作家たち。子どもの頃から大ファンなので」

観客の想像力を信じたい

一体、エイリアンたちは何の目的で地球にやってきたのか。その目的はなかなか分からない。ハリウッドの大仕掛けのSF大作に慣れた目には、抑制された演出にじれったさを感じるかもしれない。

「『JAWS/ジョーズ』だって、始まってから全体の3分の2くらいの時間がたってからサメが姿を現す。だけど、じわじわと来る恐怖感はある。『メッセージ』も、とってもゆっくり脱いでいくストリップのような映画と見てもらうといいかもしれません。エイリアンのことを1枚1枚はがして、謎を明かす構造ですから」と語り、こう続けた。

「僕は好きな映画のタイプは、何かに挑んでいるもの、何か未知のものを見て、自分がめまいを起こしてしまうような作品。例えば『2001年宇宙の旅』はいまだに意味が理解できていないし、心の深いところに恐怖心を芽生えさせる。そんな詩的な作品が大好きで、自分自身も未知なるものに対して扉を開けるような強さを持った作品を撮りたいと思っています。映画の強さというのは、言葉には表現しきれないもの、直感では何となく分かるけど、言葉にはできないものを伝えられることにあるのではないでしょうか。

そんなことから、将来は自分の作品のプロデュースを自分で手がけたいと思っています。というのも、ハリウッド映画はどうしても言葉で過剰に説明しすぎる。僕はもっと観客の想像力を信じたいから、過剰な説明を省いていく作品を作りたいんです」

全米で10月に公開となる『ブレードランナー2049』(日本は10月27日公開)のポストプロダクションで大忙しの中をぬって来日した。「今まさに、スタッフが音楽やVFX(映像の特殊効果)を付けているところ。アーティスティックな視点から、自分にとって最もチャレンジングな作品になりました。自分が大好きで、影響を受けた『ブレードランナー』の世界観を咀嚼(そしゃく)して、自分の作品にしなくてはならかった。ワクワクする半面、とても怖い体験にもなりましたね(笑)」

『メッセージ』
 言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は亡き娘ハンナとの記憶を思い起こしながら、湖畔の家に1人暮らしていた。そんなある日、地球のあちこちに巨大な宇宙船のような物体が現れ、ルイーズは国からの要請で物理学者イアン(ジェレミー・レナー)と協力し、彼らと意思の疎通を図ろうとするなかで、思いがけないメッセージを受け取ることになる。

(ライター 前田かおり)

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