2017/5/20

リスクが大きければ平均収益率も大きい、というのが金融の原則。例えば債券は共に小さく、株式は共に大きい。しかし同じ株式投信でもうまく運用して、リスクの割に平均収益率が高いものもある。それを判断する指標がシャープレシオだ。

数値は将来表さず

シャープレシオとは平均収益率をリスクで割った値(図B)。値が高いほど少ないリスクで高い収益率を得た、つまり運用が効率的だったことを示す。

投信評価サイトでは投信ごとに平均収益率、リスク、シャープレシオの実績値が開示されている。独立系ファンドコンサルタントの吉井崇裕氏は「シャープレシオは同じ分類の投信同士で比べることが大事。収益率が高かったのか、リスクが低かったのかも見たい」と指摘する。

格付投資情報センター(R&I)は4月、内外の株式と債券の4分野などを対象に、2017年3月までの過去10年のシャープレシオを基準に最優秀投信を選んだ(表C)。

国内株部門のJ-フロンティアは創業25年以下などの新興企業を中心に運用する。リスクは平均に近いが収益率が高い。「通常の投信より広範囲な30を超える成長テーマを分析し続ける運用スタイルが強み」(運用を担当するアセットマネジメントOneの岩本誠一郎氏)

外国株のセゾン資産形成の達人は、国内外の投信を組み合わせて運用するタイプ。収益率も平均より高いが、リスクも下回っている。「企業価値の見極めに定評のある投信を厳選した結果、下振れリスクを抑えられてきた」(セゾン投信の中野晴啓社長)

数値は過去の成績であり、そのまま将来を表すわけではないので参考として考えよう。特に収益率は年によって大きく変動し、収益率が長期に高かった投信が突然、同分類の投信に負け始めることもある。ただ、リスクは収益率に比べて変動幅が小さい。迷ったらリスクの値の大小を優先して判断するのも選択肢だ。

(編集委員 田村正之)

[日本経済新聞朝刊2017年5月13日付]