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口説き文句はジョブズ流 起業直後に大手金融幹部招く 「ヘルステック」ベンチャーのフィンク(4)

2017/5/17

フィンクの設立5周年を祝う同社幹部(右から溝口勇児社長、乗松文夫副社長、南野充則CTO、小泉泰郎副社長ら)

 スマートフォン(スマホ)などを駆使して健康に役立つ情報を一人ひとりに合わせて提供する「ヘルステック」ベンチャーのFiNC(フィンク、東京・千代田)。今回は、溝口勇児社長兼最高経営責任者(CEO、32)に起業後を振り返ってもらう。社員は自分1人、貯金も400万円だけという滑り出しで、ヒト、モノ、カネ、情報のすべてが不足していた。起死回生の一策が、大手金融機関出身の実績ある経営者を会社に招くことだった。溝口氏のビジョンと情熱にシニア経営者の経験が加わって、フィンクの成長ストーリーが始まった。(聞き手は編集委員 渋谷高弘)

 ――創業時の様子を聞かせてください。

 「創業時は自分ひとりで、東京都が浜松町で運営するベンチャー企業のインキュベーション施設に入居しました。ヘルスケア関係のベンチャーが入居でき、家賃も安く、都の支援も受けやすい環境が利点でした。初めは、お客様の遺伝子や血液、尿、生活習慣、食習慣などを検査し、その結果を解析、評価するサービスでした。一人ひとりの検査結果に合わせて解決方法を提案するのです。今、フィンクがスマホや人工知能(AI)で提供しているサービスの前身です」

「フィンクのゴールを実現するには、自分ひとりの人生を投入するだけでは足りない」と話す溝口社長

 ――事業は順調に進んだのですか。

 「貯金した 400万円の資本金に加え、借り入れや社債などで当初3000万円くらい集めていましたが、人を積極的に採用したり、ライフサイエンス専門会社にコンサルティングを依頼したりで、半年くらいで資金をすべて使い果たしてしまいました。すでに従業員を10人くらい抱えていたので、僕がフィットネスクラブを運営する会社のコンサルティングをするなどして、生計を立てなければなりませんでした。2013年7月には完全個室の『プライベートジム』を開設。14年3月にはスマホでお客様一人ひとりに管理栄養士やトレーナーといった専門家がダイエットを個別指導する『FiNCダイエット家庭教師』のサービスを始めました。スマホ経由ですから、時間と場所の制約を受けず、多くのお客様に提供できます。もともと僕がやりたかったサービスの最初の一歩でした。ただ、資金繰りは厳しい状況が続きました」

 ――苦境をどう乗り切ったのですか。

 「14年の春だったと思いますが、現在共同代表で副社長の乗松文夫と出会えたことが転機でした。乗松は日本興業銀行出身で、(興銀などを母体とする経営統合で発足したみずほフィナンシャルグループの)みずほ銀行の営業担当常務執行役員や、売上高が数百億~数千億円の規模の会社のトップの経験がありました。当時は東北で被災地支援事業をしていました。その取り組みの1つであった医療連携システム構築でのパートナー技術者だったのが、現在当社の取締役兼最高技術責任者(CTO)である南野充則だったのです。南野の紹介により、乗松に自分の思いやフィンクのビジョンを紹介する機会が得られました」

 「孫正義さんが、富士銀行の副頭取からソフトバンクに転じた笠井和彦さんについて『自分が今あるのは、笠井さんのおかげ』と振り返っています。それを知っていた僕も、かねて金融機関出身で実績や経験の豊富な経営者をフィンクに招きたいと思っていました。そこで僕は乗松に初めて会った時、自分やフィンクを紹介したうえで、『医療への取り組みも素晴らしいことですが、これからは病気の予防、健康のサポートにもっと力を入れる時代です』と力説しました」

 「お会いした時、乗松は監査役とか社外取締役、あるいはアドバイザーくらいならやってもいい、という受け止め方だったと思います。でも、僕はそれでは困ると思いました。アドバイザーでは、できることに限りがあります。なんとしても乗松には常勤の取締役になってもらい、フィンクにフルコミット(全力投入)してもらわなければならないと思ったのです。『すべての人々に(心身の健康を保つための)パーソナルコーチを』というフィンクのゴールを実現するには、僕ひとりの人生を投入するだけでは限界があり、乗松のような経験豊かな経営者と一丸になって臨む必要があると考えていたからです。そんな僕の気持ちが通じたのか、最後には乗松も入社を決断してくれました」

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