2016年4月には、九州の熊本県とその周辺を大きな地震が襲いました。14日夜に震度7の地震が発生、16日未明にはさらに大きな地震が起きて、こちらが本震であると後に気象庁が発表しました。

熊本地震の復興も継続取材

熊本地震でも各地で甚大な被害が出ましたが、中でも衝撃的だったのは熊本城の映像です。屋根瓦がはがれ落ち、大天守のしゃちほこも落下。石垣は50カ所もの部分で崩落が見られ、無残な姿になってしまいました。

熊本城の被害はほぼ全体に及び、とりわけ屋根瓦の崩落と石垣の崩壊は深刻な状況になっています。写真は地震から約1年後の今年3月に撮影した戌亥櫓(いぬいやぐら)(写真:japan-guide.com)

ジャパンガイドでは同年11月と地震から1年後の今年4月に熊本城を訪れています。11月の時点では、被害状況が予想していたよりずっと大きく、しかもほとんど手付かずの状態であったことにかなり驚きました。熊本城は国の重要文化財であるため、地震前と同じ状態に修復しなければならないそうです。図面や写真を参考に、崩れ落ちた位置も重要な手掛かりになるので、むやみに動かしてはいけないのだとか。だから手が付けられないままだったのです。

しかし今年の3月には、進展が見られました。崩れた石垣は、石一つ一つに番号が付けられて空き地に並べられはじめていましたし、角部分の縦一列の石だけで上の建物を支えていた「奇跡の一本石垣」と呼ばれる箇所には、大きな鉄骨の支えが設置されていました。全体の復旧には20年という歳月を要するそうですが、大天守の外観修復は2019年の完成を目指しているそうです。熊本城も今後定期的に訪れ、復興の状態をリポートしていく予定です。

石垣修復のため、番号が付けられ敷地内に並べられた石材。形から元の位置を特定する作業を地道にやっていくしかないのですが、効率アップのためのソフトも研究機関で開発中だそうです(写真:japan-guide.com)
縦一列に残った石垣に、不安定に乗っていた飯田丸五階櫓。見るたびにハラハラしましたが、ついに鉄骨の支えが付きました。上から腕で支えるようなユニークな形です(写真:japan-guide.com)

外国の人々の地震への関心は?

海外の人たちは、日本が地震大国であることをほぼ知っているそうです。ジャパンガイドのような観光ウェブサイトや旅行ガイドブックには地震に関する記載があるからです。

地震についてのサイトへの問い合わせ件数は、ふだんは特に多いわけではありませんが、それでもクエスチョン・フォーラムでは時折見受けられます。内容は「子供が日本に留学(または長期滞在)するが地震は大丈夫か?」といったものがほとんど。本人より親御さんが心配しているケースのほうが多いですね。回答は、地震対策も含めた現状を伝え、判断は質問者に委ねているそうです。

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毎年3月11日前後には、必ずテレビで東日本大震災の特別番組が組まれています。最近気になるのは、「被災地以外の人々はもう震災のことを忘れてしまっている」というような言葉がよく聞かれることです。

本当にそうでしょうか。あの日、被災地の様子を伝えるテレビの画面にくぎ付けになって驚き、心配し、胸を痛めた記憶は、きっとまだ多くの人の心の奥底に生々しく残っているような気がするのです。人はそれぞれ自分の生活がありますから、四六時中、被災地のことを考えていることはできませんが、完全に忘れ去ってしまったわけではないと思います。

いま私たちにできるのは、震災や被災地のことを忘れずにいることです。6年前はできなかったけれど、時間的・経済的に可能になったときに被災地を訪れてみるのもよいと思います。観光旅行でいいのです。復興した観光地に出かけ、地元の名物をいただいてお土産を買う。機会があったら地元の方とお話をしてみる。そんなふうに、ふつうに旅行を楽しめることが、被災した地域への支援につながると確信しています。

※2011年4月~2016年10月までの被災地リポート一覧は下記から見られます。定点観測の写真は、日付をクリックすると同じ場所の過去の写真を見られるようになっています。

http://www.japan-guide.com/blog/recovery/

シャウエッカー光代
 ジャパンガイド(株)取締役。群馬県生まれ。海外旅行情報誌の編集者を経て、フリーの旅行ライターとなり、取材などで訪れた国は約30カ国。1994年バンクーバーに留学。クラスメートとしてスイス人のステファン・シャウエッカーと出会い、98年に結婚。2003年、2人で日本に移住。夫の個人事業だった、日本を紹介する英語のウェブサイト「japan-guide.com」を07年にジャパンガイド株式会社として法人化。All About国際結婚ガイド、夫の著書『外国人が選んだ日本百景』(講談社+α新書)『外国人だけが知っている美しい日本』(大和書房)などの編集にも協力。