街全体が未来に向けて大きく変化していく一方で、いまだに仮設住宅で暮らしている人も大勢いらっしゃいますし、何より家族や親しい人を震災で亡くした心の傷は何年たっても癒えることはないであろうと思われ、被災した人々の気持ちが置き去りにされてはならないと改めて感じています。
気仙沼で、定点観測地である鹿折唐桑(ししおりからくわ)駅近くの小さな丘に上ったときのこと。その場所で初めて地元の方とお話しする機会がありました。街を眺めていた年配の女性で、聞けば妹さんや親戚の方がすぐ目の前の市街地だった場所に住んでいたのだそうです。幸い皆さん無事だったそうですが、家は全部流され、今はそれぞれ別の場所に仮住まいされているとか。新たにアパートが何棟も建ち大型店がオープンしても、「もう元の街には戻らないですね……」とため息まじりにおっしゃる姿が印象に残っています。
この春はうれしいニュースもありました。今まで仮設で営業されていた「南三陸さんさん商店街」が、かさ上げされた新市街地に本設商店街として3月3日オープン。鉄道に代わって人々の足となっているBRT(バス高速輸送システム)の気仙沼線・志津川駅も商店街の隣に移転してきて便利になりました。
陸前高田では、4月27日に大型ショッピングセンター「アバッセたかた」がオープンしたばかり。アバッセとは方言で「一緒に行きましょう」という意味だそうです。岩手県全域に店舗を持つ大手スーパー「マイヤ」も出店しており、震災直後の悲惨な姿を目にしているだけに、豊富な品ぞろえの店内で地元の皆さんがうれしそうにお買い物をしている様子を拝見し、ウルッときてしまいました。
このような商業施設のオープンは、新市街地に人々が集まる中心となる場所ができるということで、明るい兆しを感じました。観光客も、飲食やお土産購入などで立ち寄りたくなるスポットになりそうです。