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「震災と日本」を海外は注視 復興を発信し続けるわけ

インバウンドサイト発 日本発見旅

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NIKKEI STYLE

日本は世界有数の地震国です。国土の面積は世界の陸地面積のわずか0.25%ほどなのに、2000~2009年の統計では、世界で起こったマグニチュード6以上の地震の約20%が日本とその周辺で発生しているのです。ここ数年だけでも、私たちは大きな地震を何度か経験しています。この国で生きていく限り、それは宿命なのかもしれません。

世界から問い合わせが殺到した東日本大震災

「ジャパンガイド」が拠点を日本に移した後に起きた最も大きな震災は、2011年3月11日の東日本大震災でした。マグニチュード9.0の地震と津波のニュースが世界に伝わると、サイトにはユーザーからの問い合わせが続々入ってきました。多くが「日本への旅行を考えている」あるいは「既に飛行機も宿も予約済み」という人からで、「日本に行っても大丈夫か?」という内容がほとんどでした。

日本国内にいても各地の被害状況がなかなかつかめない中、夫・シャウエッカーはできるだけ正確な情報を早くユーザーに伝えようと、昼夜を問わずコンピューターに向かっていました。というのも、海外メディアでは「東京は壊滅状態だ」「(花粉症のマスクの人が多いのを)放射能の恐怖でみんなマスクをしている」など、あまりにもデタラメな記事が多く、腹が立ったからだそうなのです。

震災から約1カ月半後の4月30日、私たちは初めて被災地を訪れました。特に、津波の被害が大きかった地域の実態を正確に知っておかなければと考えたからです。しかし葛藤もありました。報道機関でもない我々がこの時期に被災地に入ってもよいものだろうか……。それでも行く必要があると感じ、地元の方や復旧作業に取り組んでいる方々にご迷惑をかけないよう、水や食料を積み込んで群馬から車で出掛けました。

現地の状況は想像を絶する悲惨さでした。私たちは言葉を失い、ただ黙々と写真を撮り続けるしかありませんでした。あの日のすべての光景、あの衝撃と絶望感を、私は一生忘れることはないでしょう。

復興への道のりを定期的に取材

それからは年に2回、春と秋に被災地を取材しています。観光業が将来的には被災地の大きな力になると、夫は早くから考えていたようです。津波の被害が顕著だった岩手県の田老・宮古・釜石・陸前高田、宮城県の気仙沼・南三陸・女川・石巻は必ず訪れ、各地で定点観測できる撮影地点を決めて、復旧・復興の足跡が写真でたどれるようにサイトのページを構成しています。

最初の2年間は、半年ごとに訪れてもがれきの仕分けが進んだ程度で、これだけの大災害からの復興はそう簡単ではないことを思い知らされました。

震災から2年後の2013年4月、NHKの朝ドラ「あまちゃん」がスタート。ふだんドラマを見ない夫が珍しくハマり、同年10月の取材ではドラマの舞台となった岩手県久慈市にも足を延ばしました。ジャパンガイドではこのように、周辺の観光地も必ず紹介するようにしています。外国の人に東北の観光地の魅力も知ってほしいからです。ほかに北山崎断崖の景勝地や浄土ヶ浜(岩手県)、猫島として知られる田代島や松島(宮城県)、福島県も訪れています。

このころから被災地は徐々に変わり始めました。がれきの撤去が進み、倒壊した建物や家屋の解体も進んでいる様子が各地で見られました。

2014年、突如大きく変わったのが陸前高田です。巨大ベルトコンベヤーが旧市街地に張り巡らされ、街をかさ上げするための土砂が山から大量に運ばれていました。あまりの変貌ぶりにショックを受けましたが、1日8時間稼働で10トンダンプカー4000台相当の土砂を移送できると聞くと納得せざるを得ません。現在、これらのベルトコンベヤーは役目を終えてすべて撤去され、運ばれた土砂でかさ上げ工事が進んでいます。

南三陸も旧市街全体がかさ上げされ、定点観測地としていた高台が、もう地面の高さとほぼ同じになっていました。3階建ての建物がすべて津波にのみ込まれたあの防災対策庁舎は、周囲のかさ上げによって、遠くからは建物の上部が見えるのみとなっています。

「元の街には戻らない……」

今年の春も被災地に行ってきました。復興工事はさらに進み、新市街地のかさ上げ、宅地にするための高台整備、新しい防潮堤の建築などが各地で見られるようになりました。造成地では重機が何台も作業をしており、道路は大型ダンプカーがひっきりなしに行き交う、そんな光景が当たり前になった現在の状況でした。

街全体が未来に向けて大きく変化していく一方で、いまだに仮設住宅で暮らしている人も大勢いらっしゃいますし、何より家族や親しい人を震災で亡くした心の傷は何年たっても癒えることはないであろうと思われ、被災した人々の気持ちが置き去りにされてはならないと改めて感じています。

気仙沼で、定点観測地である鹿折唐桑(ししおりからくわ)駅近くの小さな丘に上ったときのこと。その場所で初めて地元の方とお話しする機会がありました。街を眺めていた年配の女性で、聞けば妹さんや親戚の方がすぐ目の前の市街地だった場所に住んでいたのだそうです。幸い皆さん無事だったそうですが、家は全部流され、今はそれぞれ別の場所に仮住まいされているとか。新たにアパートが何棟も建ち大型店がオープンしても、「もう元の街には戻らないですね……」とため息まじりにおっしゃる姿が印象に残っています。

この春はうれしいニュースもありました。今まで仮設で営業されていた「南三陸さんさん商店街」が、かさ上げされた新市街地に本設商店街として3月3日オープン。鉄道に代わって人々の足となっているBRT(バス高速輸送システム)の気仙沼線・志津川駅も商店街の隣に移転してきて便利になりました。

陸前高田では、4月27日に大型ショッピングセンター「アバッセたかた」がオープンしたばかり。アバッセとは方言で「一緒に行きましょう」という意味だそうです。岩手県全域に店舗を持つ大手スーパー「マイヤ」も出店しており、震災直後の悲惨な姿を目にしているだけに、豊富な品ぞろえの店内で地元の皆さんがうれしそうにお買い物をしている様子を拝見し、ウルッときてしまいました。

このような商業施設のオープンは、新市街地に人々が集まる中心となる場所ができるということで、明るい兆しを感じました。観光客も、飲食やお土産購入などで立ち寄りたくなるスポットになりそうです。

2016年4月には、九州の熊本県とその周辺を大きな地震が襲いました。14日夜に震度7の地震が発生、16日未明にはさらに大きな地震が起きて、こちらが本震であると後に気象庁が発表しました。

熊本地震の復興も継続取材

熊本地震でも各地で甚大な被害が出ましたが、中でも衝撃的だったのは熊本城の映像です。屋根瓦がはがれ落ち、大天守のしゃちほこも落下。石垣は50カ所もの部分で崩落が見られ、無残な姿になってしまいました。

ジャパンガイドでは同年11月と地震から1年後の今年4月に熊本城を訪れています。11月の時点では、被害状況が予想していたよりずっと大きく、しかもほとんど手付かずの状態であったことにかなり驚きました。熊本城は国の重要文化財であるため、地震前と同じ状態に修復しなければならないそうです。図面や写真を参考に、崩れ落ちた位置も重要な手掛かりになるので、むやみに動かしてはいけないのだとか。だから手が付けられないままだったのです。

しかし今年の3月には、進展が見られました。崩れた石垣は、石一つ一つに番号が付けられて空き地に並べられはじめていましたし、角部分の縦一列の石だけで上の建物を支えていた「奇跡の一本石垣」と呼ばれる箇所には、大きな鉄骨の支えが設置されていました。全体の復旧には20年という歳月を要するそうですが、大天守の外観修復は2019年の完成を目指しているそうです。熊本城も今後定期的に訪れ、復興の状態をリポートしていく予定です。

外国の人々の地震への関心は?

海外の人たちは、日本が地震大国であることをほぼ知っているそうです。ジャパンガイドのような観光ウェブサイトや旅行ガイドブックには地震に関する記載があるからです。

地震についてのサイトへの問い合わせ件数は、ふだんは特に多いわけではありませんが、それでもクエスチョン・フォーラムでは時折見受けられます。内容は「子供が日本に留学(または長期滞在)するが地震は大丈夫か?」といったものがほとんど。本人より親御さんが心配しているケースのほうが多いですね。回答は、地震対策も含めた現状を伝え、判断は質問者に委ねているそうです。

◇  ◇  ◇

毎年3月11日前後には、必ずテレビで東日本大震災の特別番組が組まれています。最近気になるのは、「被災地以外の人々はもう震災のことを忘れてしまっている」というような言葉がよく聞かれることです。

本当にそうでしょうか。あの日、被災地の様子を伝えるテレビの画面にくぎ付けになって驚き、心配し、胸を痛めた記憶は、きっとまだ多くの人の心の奥底に生々しく残っているような気がするのです。人はそれぞれ自分の生活がありますから、四六時中、被災地のことを考えていることはできませんが、完全に忘れ去ってしまったわけではないと思います。

いま私たちにできるのは、震災や被災地のことを忘れずにいることです。6年前はできなかったけれど、時間的・経済的に可能になったときに被災地を訪れてみるのもよいと思います。観光旅行でいいのです。復興した観光地に出かけ、地元の名物をいただいてお土産を買う。機会があったら地元の方とお話をしてみる。そんなふうに、ふつうに旅行を楽しめることが、被災した地域への支援につながると確信しています。

※2011年4月~2016年10月までの被災地リポート一覧は下記から見られます。定点観測の写真は、日付をクリックすると同じ場所の過去の写真を見られるようになっています。

http://www.japan-guide.com/blog/recovery/

シャウエッカー光代
 ジャパンガイド(株)取締役。群馬県生まれ。海外旅行情報誌の編集者を経て、フリーの旅行ライターとなり、取材などで訪れた国は約30カ国。1994年バンクーバーに留学。クラスメートとしてスイス人のステファン・シャウエッカーと出会い、98年に結婚。2003年、2人で日本に移住。夫の個人事業だった、日本を紹介する英語のウェブサイト「japan-guide.com」を07年にジャパンガイド株式会社として法人化。All About国際結婚ガイド、夫の著書『外国人が選んだ日本百景』(講談社+α新書)『外国人だけが知っている美しい日本』(大和書房)などの編集にも協力。

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