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宇宙人はいるのか? 火星で見つかった「怪現象」 科学で挑む人類の謎

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/5/21

ナショナルジオグラフィック日本版

NASAのバイキング1号が1976年に撮影した火星の地表。スフィンクスのような顔が写っている。(NASA/JPL)

 自然の造形など、ランダムに出来たものが何か特別なものに見えることを心理学では「パレイドリア」という。例えば、トーストの焦げ目に聖人像を見たり、雲が顔に見えたりする場合がそうだ。

 1976年、NASAの火星探査機バイキング1号が地球に送り大騒動を巻き起こした画像は今も記憶に新しい。シドニアと呼ばれる地域に、空を見つめる「スフィンクス」があるというのだ。この後、火星の生命体についての熱い議論は25年にわたって続いた。

 2001年になって、無人の火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤーが鮮明な画像を撮影し、この議論に決着をつけた。スフィンクスに見えたものは、火星の平原にある丘にすぎなかったのだ。

 こうした好奇心に胸を躍らせるような話は、探査車の技術が進み、火星の姿を鮮明な画像で眺められるようになると激減した。そんななか、2012年に火星探査車キュリオシティから心ときめく映像が届いた。ロックネストと呼ばれる地域で、火星の「ネズミ」を撮影したというのだ。

 「UFOサイティング・デイリー」というウェブサイトは、勇んでこの謎のネズミの話を掲載した。ところが、案の定、このネズミも岩だということが判明した。

 火星の広々とした何もない空間は、パレイドリアを引き起こしやすい風景といえる。火星のスフィンクスやネズミは、その一例にすぎない。

■「たき火」のような謎の光

 それでもインターネット上には、火星に生命がいると信じて疑わない人たちがいる。2014年には、探査車キュリオシティの右側に載せたカメラが撮影した2枚の写真が熱い議論を巻き起こした。1枚は4月2日、もう1枚はその翌日に撮られたもので、そこには火星の地平から、にじむように光が立ち上っている。不思議なことに、左側のカメラで同じ場所を撮った写真にその光はなかった。これを一部の人は、火星人が火をたく様子が写っていると信じたのだ。

火星からの画像。赤丸で囲んだ部分に謎の光が写っている。(NASA/JPL-Caltech)

 キュリオシティ・チームで画像技術を担う科学者ジャスティン・マキは、この騒ぎの火消しに追われることになった。マキは、火星で火がたかれたのではなく、車載カメラに宇宙線が当たったか、太陽光が岩石で反射したものが写ったのだろうと説明している。

 宇宙線は宇宙の中では当たり前にある存在で、あらゆる方向に飛んでいる荷電粒子だ。たまたまカメラに衝突すれば発光することもある。謎の光が右のカメラだけに写って、左には写らなかった理由はこれだとマキは言う。宇宙線は右のカメラだけに衝突したという理屈だ。

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