欅坂46 メンバーの素を引き出す、冠バラエティー番組
欅坂46のメンバー1人ひとりの個性を見出して、ファンへ浸透させる役割を果たしているのが、冠バラエティー番組だ。『欅って、書けない?』(テレ東系)が放映中。『KEYABINGO!2』が2017年3月末まで放映されていた。
15年10月に初の冠番組としてスタートした『欅って、書けない?』は、乃木坂46の初冠番組『乃木坂って、どこ?』(現在はリニューアルして『乃木坂工事中』)と同じスタッフが手がけ、同様にデビュー前からスタート。欅坂46が所属するソニー・ミュージックレーベルズが制作する、いわば公式番組であることから、シングルの選抜メンバーやフォーメーションなど、グループに関するオフィシャルな決定事項の発表の場にもなっている。
握手会での会話の糸口に
番組プロデューサーのケイマックス・長尾真氏は「それぞれのメンバーが持っている可能性を見つけて、世の中の多くの方たちに伝えることが番組のコンセプト。番組を通じてメンバーの取扱説明書が出来上がって、握手会に行くファンがメンバーとの会話のきっかけのヒントになればいい」と話す。
普段は無口なのに、お笑い芸人ゴー☆ジャスの「君のハートにレボリューション!」をまねるときだけは堂々とする渡辺梨加、チーム対抗の運動会で負けて号泣する、負けず嫌いな守屋茜、初めてチャレンジするときに「大丈夫です」と根拠なき自信に満ちあふれた表情で答える今泉佑唯など、『欅って、書けない?』発で定着したキャラクターは多数ある。
長尾氏は、当初乃木坂46の冠番組と同様のフォーマットで番組を作ろうと考えたが、「初めて欅坂46のメンバーと会ったときの印象は、とにかくしゃべらなかった」と笑う。おとなしいメンバーの個性を引き出すためにMCに抜てきされたのは、AKB48関連番組の司会も手がけアイドルに詳しい土田晃之と、アイドル番組のMCは初めてのハライチ・澤部佑の2人。土田はバラエティー番組でのトークに慣れていないメンバーの会話のきっかけを作り、澤部はファンと同じ目線で少しずつメンバーに興味を抱いていくという役割分担だという。
長尾氏は、番組での活躍が印象的なメンバーとして、2017年1月からキャプテンを務める菅井友香、新曲『不協和音』で初のフロントに抜てきされた織田奈那らの名前を挙げる。「番組で菅井さんが乗馬をしている様子や、豪華な別荘の写真をオンエアすることで、本当のお嬢様だということが伝わってきた。普段はおっとりしていますが、メンバーが1人でも早口言葉を失敗してはいけないという連帯ゲームの時に、キャプテンとしての責任感の強さを感じさせたのが印象的でした。織田奈那さんは、当初メンバーの口数が少なかったときから、唯一積極的にしゃべってくれた。MCの2人も彼女の存在に何度も助けられたと言っていますね」。
また、自然なリアクションのうまさを高く評価するのが鈴本美愉。「彼女が驚いたりするときの表情が抜群にいい。ディレクターは抜きで使いたくなる」と長尾氏は話す。
番組がスタートして約1年半が経過して、最近では自分の個性をどのように出していいのか、番組収録の合間に、スタッフに質問しに来るメンバーも増えてきたと言う。「平手友梨奈さんと長濱ねるさんは、ラジオ番組を始めるときに、何をどうしゃべったらいいのかお話を聞きたいと相談にきたことがあります。収録後に1時間以上、MCの土田さんと話をしていました」。(長尾氏)
一方、16年7月にスタートして、今年1月からシーズン2がオンエアされた『KEYABINGO!2』は、AKB48の『AKBINGO!』や乃木坂46の『NOGI BINGO!』の流れを組む冠番組。制作を担当するHuluの毛利忍氏は、『AKBINGO!』の前身番組にあたるAKB48にとって初の冠番組『AKB1じ59ふん!』の立ち上げに関わった経験も持つ。「欅坂46のメンバーはみんな最初の挨拶からおとなしかった。でも、楽屋ではにぎやかにしているらしい。であれば、なんらかのスイッチを入れてあげれば、素が出るだろうと思った」と番組の狙いを話す。
ロケで見せたはじける姿
試行錯誤を重ねて見つけたスイッチとは、「違う人間になりきる」と「スタジオを飛び出してのロケ」の2つ。「なりきりで印象に残ってるのは、『不良娘No.1決定戦』で振り切ってヤンキーにふんしてくれた、齋藤冬優花さんと志田愛佳さん。原宿にロケに行った回では、突然寄り道をしてクレープを食べたり、ストリートライブを開催したりと、みんなはじけてくれた」(毛利氏、以下同)。
こうした工夫で、番組では少しずつ素を見せ始めるメンバーが増えている。「佐藤詩織さんは『1対1のガチンコ対決』という回の、体操着の下で風船が爆発する罰ゲームで何かをつかんだようで、よくしゃべるようになりました。長沢菜々香さんは『息子の嫁にしたい選手権』で敗れてしまった悔しさから本当に泣き出してしまった。番組の進行を考えるとありえないんですが(笑)、それが不思議な魅力になっている」。
今後も冠バラエティー番組で新たな個性を発揮し、人気を高めるメンバーはまだまだ続いていきそうだ。
(ライター 高倉文紀)
[日経エンタテインメント! 2017年5月号の記事を再構成]
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