発酵食品から発見 日本食の健康効果、70年代に特徴日経BP総研マーケティング戦略研究所 西沢邦浩

いくつかの種類の製品を各種発酵食品で調べたところ、日本酒やしょうゆ、味噌に総じてpGロイシンが多かった。

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「pGロイシンを体重1kgあたり0.1~1mgほどの少量投与するだけで、大腸炎を起こすマウスの腸内環境が改善したり、高脂肪食をマウスに食べさせても、バクテロイデスという腸内細菌群が増え、体重増加を抑制したりといった効果が得られる。pGロイシンが小腸で抗菌物質を分泌させていることもわかった」と佐藤教授は言う[注2]

ほかにpGロイシンの肝臓保護作用や抗うつ作用を確認した動物試験もある。

こうした作用は、人に換算すると日本酒200mlに含まれる程度の量で起こる可能性があるという。また、味噌やしょうゆは日本酒ほど一度にとることはないが、濃度的には日本酒を超える量が入っていることが多いようだ。

飲酒習慣のない人でも、1975年当時では、煮物などでの日本酒使用量も多かったため、料理や味噌汁からある程度まとまった量の麹発酵ペプチドをとっていたと考えられそうだ。

麹発酵ペプチドに関するヒト試験の結果が待たれる。

実際、これらの麹かび発酵食品の消費量を見ると、日本酒は1975年をピークに現在では3分の1以下に、味噌も2分の1以下、しょうゆも3分の2程度に減っている。

男女ともに平均寿命が全国1位の長野県は、1人当たりの年間味噌消費量も全国1位で、2015年の家計調査では、全国平均が1.84kgに対し3.61kgも消費している。味噌やしょうゆに関しては塩分摂取に注意が必要だが、麹発酵ペプチドの摂取など発酵調味料のメリットについての効果検証も合わせ、適切な消費法を考えていくべきだろう。

美肌作用で注目されるアミノ酸も

様々な食品に含まれるが、特に発酵食品に多い「D体」のアミノ酸、D-アミノ酸でもユニークな発見が相次いでいる。

そもそもD体のアミノ酸とは何か。たんぱく質を構成するアミノ酸20種類のうち、グリシンを除く19種類には「L体」「D体」という2つのタイプがある。食品に含まれるのはほとんどがL体、人体を構成するたんぱく質もL体でできているので、これまで微量にしか存在しないD体にはあまり日が当たることがなかった。

しかし、資生堂と九州大学のチームは、皮膚の表面をおおう角層中にD体のアミノ酸が存在することを発見した。同チームは、加齢とともに角層から減少するD-アスパラギン酸に注目し、このアミノ酸に肌のハリを支えるコラーゲン線維の産生能があること、このアミノ酸を多く含む食品を2カ月間とり続けることで角層中のD-アスパラギン酸量が増えることを明らかにした。またD-アミノ酸を多く含む食品(黒酢)を3カ月間とり続けたところ、皮膚の角層でD-アラニンの量が増え、保水量が増加することを示した研究もある。

つまり、食品で摂取したD-アミノ酸は皮膚に届いて、潤いやハリを維持する美肌作用を発揮するらしいのだ。

D-アスパラギン酸は良質な睡眠に導くホルモン「メラトニン」や男性ホルモン「テストステロン」の産生にかかわること、D-セリンは脳内で神経伝達を促すことなどもわかっている。

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