見たら必ず欲しくなる 革財布のすごいイノベーション

ただ、本場のヨーロッパに比べ、日本は革業界の外の人が革製品を作ることにさほどの障害がない。だからこそ、1級建築士出身のエムピウ、プロダクトデザイナー出身のrethink、全くの素人だったバリューイノベーションなど、革業界の外から来た人たちが革製品にチャレンジすることができたというわけだ。

身近に起きているすごいイノベーション

その後も、safujiの「ミニ長財布」「キー付きミニ財布」、VINTAGE REVIVAL PRODUCTIONSの「AIR WALLET」「FLATZIP WALLET」、ルボアの「Ollet」など、個性的な革財布が次々と登場。エムピウも改良型の「millefoglie II P25」、ミニマムな「straccio」などの新作を発表、バリューイノベーションの「旅行財布」、cyproductの旅行に対応した「トラベルカード&コインケース」、リーズナブルな「カード&コインパースnaked」など、イノベーションを起こしたメーカーもまた、次々と、改良したり、新たな発想で作る革財布を発表し続けている。十分、一つのジャンルを形成するまでになっているのだ。

「キー付きミニ財布」(safuji)。キーケースにみえるが、これもカードも収納可能
コインケース部の下に紙幣を通す構造なので、このサイズながら紙幣は二つ折りで収納可能。カードケースを外部に出した構造で、外観がより小さく見えるのだ。財布を開かずにカードが出せるのもポイント

これらは、デパートの催事や、革小物のイベントなどで店頭に並べば、あっという間に完売するほどの人気がある。つまり、実物を見れば買いたくなるだけの魅力を備えているのだ。新しく、変わっているが故に、説明無しでは、どう使っていいか分からないケースもある。しかし、使い方が分かれば、いきなり慣れるというか、もうずっと使っていたように手に馴染み、支払いなどの動作が、とてもスムーズで楽にできることに気がつくのだ。そのくらい、即効性は高い。

しかし、これらの製品は、十分売れているとはいえ、まだ革財布というジャンル全体から見れば、一部の小さなイノベーションにすぎない。また、考案し作った人のオリジナリティーが強く反映された製品なので、他のメーカーがまねして作ってよいものではない。だから、従来の財布に取って代わるということはないだろう。

それでも、従来の財布の使い勝手の悪い部分に気がつき、それを解決するために、新しいアイデアと技術とデザインを作り出しているのはものすごいことだ。おかげで今や、財布をブランドや革の素材感だけでなく、使い勝手やデザイン、用途などから選ぶことができるようになっている。

一度、その「新しい革財布」を体験してほしい。身近なところで、すごいイノベーションがこっそりと起きていることに気がつくはずだから。

納富廉邦
佐賀県出身、フリーライター。IT、伝統芸能、文房具、筆記具、革小物などの装身具、かばんや家電、飲食など、娯楽とモノを中心に執筆。「大人カバンの中身講座」「やかんの本」など著書多数。講演、テレビやラジオの出演、製品プロデュースなども多く手がける。
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