「millefoglie」が売れ始めた2006年前後から、様々な日本人デザイナーによる、従来の財布とは違った新しい革財布が次々と登場する。例えば、「millefoglie」とほぼ同時期には発売されていた、cyproductの「カード&コインパース」、少し遅れて、rethinkの「Lim Wallet」、バリューイノベーションの「薄い財布」など、それぞれに個性的で、それぞれのアプローチで従来の財布を見直したアイデアと機能とデザイン性を併せ持つ革財布が次々と登場したのだ。


この革財布イノベーションともいえるブームが、日本で起こったのも特徴的だ。どうやら、革の本場であるヨーロッパでは、革製品が伝統工芸品であるが故に、徒弟関係がしっかりしていて、その技術やデザインを継承し、製品としての完成度を上げていく方向が定着しているようなのだ。つまり、革財布に、新しい機能を追加することはあっても、基本構造を抜本的に変えることには、かなりの抵抗があるらしい。それは、日本の革業界も事情は同じで、これまで、そういう製品は出てこなかった。