2017/5/30

眠くない寝不足「潜在的睡眠不足」の怖さ」でも解説したが、睡眠時間が短くなるときは浅い睡眠やレム睡眠から削られ、深い睡眠は最後まで残る。睡眠不足の人では深い睡眠の比率がとても高く途中の目覚めも少ない。そのような「ギュッと深くて質の良い睡眠」になっているにもかかわらず疲れが取れないのだ。

日中の体調を良くしたいのであれば、帰宅後にやっている「何か」を諦めて睡眠時間を確保するしかない。そのように伝えると、

A氏「ですよね。『分かっちゃいるけど……』ってやつなんですよ(苦笑)」

A氏の生活スケジュールは『スーダラ節』で植木等が歌うサラリーマンからみたらとても立派で非の打ち所がない。晩酌は夫婦の大事な交流の時間だろうし、趣味のプラモデル作りはストレス解消になる。英会話だって自分のキャリアアップのために必要だろう。考えてみれば『スーダラ節』の彼だって仕事の接待とか何か理由があってのことかもしれない。

とはいえ1日は24時間しかない。その日に行うべきことを「あれも、これも」ではなく「あれか、これか」で取捨選択する必要がある。

生活時間をやり繰りする際に睡眠時間をどう位置づけるべきか。私がよく持ち出すキーワードが「固定費」である。

自分の生活習慣を15分単位で記録してみる

私の母は86歳で今も健在だが、その昔、無駄遣いが多く貯金ができない若かりし頃の私を心配したのであろう、一度で良いから給料日に月々の「固定費」を計算してみるよう勧められたのを思い出す。

ご存じの通り「固定費」とは、家賃、通信費、光熱費、新聞代、駐車場代、保険料など、生活上定期的に発生する出費のことである。これに対して、交際費、被服費、レジャー費などは「変動費」と呼ばれ、不要不急であれば削ることのできる出費である。

母いわく、収入からまず固定費を引き、貯金をしたければその分をさらに引いて、残額を遊興費に使いなさい。計算すれば分かることですが思いのほか少ないでしょう、と。

この「引き算法」は家計管理の大原則だし、社会人ならば考えて当たり前の話なのだが、お恥ずかしいことに言われるまでほとんど意識せずに生活していた。そして通帳をざっと見ただけでも貯金できない理由がはっきりと分かった次第である。

生活の中で「固定費」と「変動費」がそれぞれ何に該当するのか、1週間でよいのでご自分の生活時間調査をしてほしい。15分単位でそのとき何をしていたのか記録を取り、睡眠、仕事、通勤、趣味などおおまかに分類してみる。家計と同様に、数値化することで見えてくるものがある。

NHKでは70年以上も前から同様の手法で日本人の生活習慣を調査している。睡眠時間は減少の一途を辿り、老若男女を合わせた平日の平均睡眠時間は7時間14分(2010年)と過去70年間で1時間以上短くなってしまった。代わりに増えたのはインターネットやレジャーに費やす時間である。

健康を重視するなら睡眠時間は固定費の筆頭

朝の目覚めが1日の始まり、就寝時刻が1日の終わりと考えている人が多いのではないだろうか。子どもの夏休みの計画表でも起床時刻からその日にやることを書き始めることが多い。睡眠時間を確保するためにはこのような朝を起点にして生活時間をやり繰りする方法も見直したい。

やりたいこと(変動費)がいっぱいある私たちは『分かっちゃいるけど』やめられないためについつい睡眠時間(固定費)に手をつけてしまうから。そもそも午前0時が1日の始まりなのだから、就寝時刻が1日の起点になる方が合理的だ。子どもさんにも計画表の最初に就寝時刻と起床時刻をしっかりと書いてもらおう。生活リズムを整えるのにも効果的なはずだ。