「有事の金」投資、選択肢広がる ETFや純金積立など

2017/5/6
ETF、純金積立、金限日取引では純金の延べ棒と交換も可能だ
ETF、純金積立、金限日取引では純金の延べ棒と交換も可能だ

個人を対象にした金の投資商品が増えている。金価格と値動きが連動する有価証券の上場投資信託(ETF)が増えているほか、2015年には決済期限なしで証拠金を使って金を売買する市場も誕生した。いずれも少額で購入でき、管理の手間も省ける。マイナス金利下でも値上がり益の確保が期待できる。今年に入り国際紛争など有事が想定される事態も増え、投資家の関心も高い。半面、値動きも大きく元本保証がない点は注意が必要だ。

金はその希少性から有史以来、通貨として使われた。価格変動はあっても価値そのものはなくならず、現在も「無国籍通貨」と呼ばれる。戦争やテロ、政治不安などの国際情勢を揺るがす事態が起きた際に、株などの価格変動リスクを回避するために投資する資産として位置づけられている。

世界的な金の広報調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、16年の金の投資需要は重量換算で前年比7割増の1561トンで、ETFは532トンと投資全体の34%を占めた。「米国の利上げやトランプ大統領の当選、日本のマイナス金利や英国の欧州連合(EU)離脱決定などが投資需要を押し上げた」(WGC)

管理の手間不要

個人向けの投資商品に共通する特徴は、数千円~1万円程度から購入できる手軽さだ。中でも分離保管した金を裏付け資産として組成することが多いETFは、地金と違い管理の手間が不要。指し値注文など株式と同じ感覚で投資できる。

金価格に連動する運用は金そのものへの投資の代替手段になることから、2003年に世界で初めて登場して以降、急速に広がった。世界の金ETFの全残高は推定で約900億ドル(約9兆9千億円)に達しているとされる。取引価格は日々変動し、値動きで損が発生することもある。

日本では売買高が最も多い「金の果実」(純金上場信託)をはじめ、4月下旬時点で合計5本の金ETFが国内の証券取引所に上場されている。「金の果実」は三菱UFJ信託銀行が管理し東京商品取引所の金先物価格を指標にしている。

17年4月14日時点の預かり残高は521億円と、10年7月の上場時の約20億円から26倍に増加した。最低取引単位は数千円程度で、同行の星治執行役員は「株式取引と似ているのが市場拡大の一因」と説明する。

金を裏付けにするといっても、原則、一定の金ETFの受益権を持っていれば日本で金現物の延べ棒と交換が可能なのは「金の果実」だけだ。三菱UFJ信託銀行は日本国内の貴金属専用倉庫に金の延べ棒を保管しており、必要な時に保険付きで自宅に発送してくれる。

海外の金ETFも現地での金現物との交換が可能だが、主に機関投資家向けで少額の交換を認めていない場合が多い。そもそも金の現物を裏付けとしないETFもある。

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元手超えて取引