ソーシャルレンディング 高利回り、ネットで投資募集融資先には延滞・焦げ付きリスクも

2017/5/2
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マイナス金利で手持ち資金の運用先が限られるなか、「ソーシャルレンディング」の利回りの高さに興味を持っています。どんな商品なのですか。

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ソーシャルレンディングはお金の借り手と貸し手をインターネットで仲介するサービスだ。不特定多数の個人が出資者となり、運営会社を通じて企業などにお金を貸し出す。社会的意義が大きい事業への応援資金を集める目的で、まず米英で拡大。日本では2008年に個人向けが、11年以降は法人向けが広がった。

期待利回り、年率5~10%前後

国内大手の運営会社が投資家に表示する期待利回りは年率5~10%前後と高く、スマートフォンなどで手軽に投資できる便利さから利用者が増えている。大手を見るとmaneo(マネオ)、SBIソーシャルレンディングは不動産担保ローン、クラウドクレジットは海外向けの融資が多いという特徴がある。

投資家は気に入った案件をウェブサイト上で選び、運営会社と匿名組合契約を結ぶのが一般的だ。案件には期待利回り、募集額、運用期間などの記載があるが、借り手は「A社」「C社」などと匿名で複数社が表示され投資家が詳細な情報を入手するのは難しい。「貸金業法にある『借り手保護』が主な理由」(大手運営会社)という。

運営会社は匿名組合を通じて集めた資金を元に、投資家に示した期待利回りより高い利率(上限15~20%)で貸し出す。借り手が約束通り利子を付けて返済すれば、運営会社は手数料分を引いて投資家に配当を含めた元本を戻す。投資単位は一般に1万~数万円で期間は1~2年前後が多い。

利用にはいくつか注意点がある。融資先は基本的に信用力の問題で銀行から融資を受けられない企業なので、貸し倒れリスクは比較的高い。ある運営会社の代表は「焦げ付き、延滞は発生しうる」と明言する。

行政処分受けた運営会社も

行政処分を受けた運営会社もある。「みんなのクレジット」は3月、金融庁から1カ月間の業務停止命令と業務改善命令処分を受けた。金融庁によるとウェブサイト上で複数に貸し付けを予定しているよう装いつつ、実際は親会社グループに資金を集中させていた。石川貴教弁護士は「高利回り商品は高リスクなのが基本。運営会社の経営実態もよく見たい」と話す。

業界団体は運用の監視体制などを強化する方針。ソーシャルレンディングは金融商品取引法(金商法)や貸金業法などの規制を受ける。金商法では投資先の情報開示が必要だが、ソーシャルレンディングは貸金業法の観点から融資先が匿名となる。金融関連法令に詳しい峯岸健太郎弁護士は「投資家に必要な情報開示ができるような論点整理が必要だ」と指摘している。

[日本経済新聞朝刊2017年4月29日付]