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長期金利上昇の試算も 住宅ローン、商品選びは慎重に 不動産コンサルタント 田中歩

2017/5/3

 住宅ローン金利は日銀のマイナス金利政策で大きく低下しましたが、このところ底堅い動きを見せ、4月には多くの金融機関が金利を上げました。5月には再度下げており、当面は金利の急上昇があるとは思えませんが、30年以上の長期間にわたって返済していくことを考慮すると、少し立ち止まって考えることが必要だと思います。

■商品タイプは大きく3つ

 住宅ローンには、大きく3つの商品タイプがあります。「変動型」「固定期間選択型」「全期間固定型」の3種類です。

 変動型は金利が変動する商品で、金利が上がれば毎月の返済額も上がります。ただし、金利が上昇しても5年間は返済額が変わらず、変わるとしても直前の返済額の1.25倍を上限とするルールになっているのが一般的です。

 固定期間選択型は3年、5年、10年などといった期間は固定金利が適用されますが、期間経過後は、その時点の金利で変動金利か固定金利を選ぶという商品です。こちらも金利が上がれば返済額がアップします。一方、全期間固定金利型は返済期間中、原則として返済額は変わりません。ですから今後、金利が上昇したとしても気にしなくて済む商品です。

 大枠の商品タイプを理解したところで、金利上昇がない場合のシミュレーションを見てみましょう。

 仮に3000万円を35年の元利均等返済、ボーナス返済なしで借りた場合、変動型0.625%、固定期間選択型(10年)0.9%、全期間固定型1.2%とすると、毎月の返済額はそれぞれ、7万9544円(総返済額3341万円)、8万3295円(総返済額3498万円)、8万7511円(総返済額3675万円)となり、金利がこのまま変わらないならば、全期間固定型は前の二者に比べてお得感が小さくなっています。

■全期間固定型、過去最低の利用率

 こうした結果が影響しているのかどうかはわかりませんが、住宅金融支援機構の調査によると、2016年3~9月の間に変動型を選んだ利用者は全体の49.2%と半分近くを占め、固定期間選択型も36.9%でした。一方、全期間固定型は13.9%にとどまっています。14年以降でみると、変動型、固定金利選択型はともに最大の利用率となり、逆に全期間固定型は過去最低となっています。

 住宅金融支援機構では、変動型や固定期間選択型型を実際に利用した人に対し、住宅ローン商品の特性や金利上昇リスクをどの程度理解しているかについても調査しています。この調査の中から変動型を選んでいる利用者を抽出したところ、「将来の金利上昇によってどれくらい返済額が増えるか」について合わせて45.2%の人が「理解しているか不安」「よく理解していない」「全く理解していない」と答えています。さらに「将来の金利上昇に伴う返済額増加への対応策」については、同様に「理解していない」と答えた人が50.1%と半数に達しました。

■長期金利「3年後に1.4%へ上昇」

 金利がどの程度上昇するか予測することは極めて難しいのですが、内閣府が1月に発表した「中長期の経済財政に関する試算」におけるベースラインシナリオ(経済再生シナリオほどは再生しない場合のシナリオ)では、長期金利は20年に1.4%、25年には1.9%と予測しています。経済再生を最優先事項としているがゆえ、一定のバイアスはかかっていると思われるものの、これは一つの参考になるでしょう。

 現在の長期金利はおおむね0%ですから、仮に10年後にベースラインシナリオ通り1.4%まで長期金利が上昇すると仮定した場合、返済額がどうなるか、シミュレーションしてみました。

 長期金利が10年後に1.4%上昇すると、変動型の場合、毎月返済額は1万4342円、総返済額は430万円上昇、固定期間選択型で同1万4819円、同445万円の上昇となります。商品タイプを選ぶときは、このような金利上昇に伴う返済額増加に耐えられるかどうかをまず確認すべきでしょう。

■変動、固定期間選択型は預貯金で備えを

 変動型や固定期間選択型を選ぶのであれば、収入に対してぎりぎりの返済額を設定せず、万が一に備え、実際の返済額に加えて多少の預貯金をしておくという対策が必要になります。また、全期間固定型を選ぶ場合の総返済額とそれ以外の商品を選んだ場合の総支払額の差額を、金利が上昇した場合の保険料として捉えたときに、自分にとって意味があるかどうかを立ち止まって考えることも重要でしょう。

 住宅ローンは、主に不動産業者などが勧めるケースが多いというのが実情ですが、自分でシミュレーションできないのであれば、中立的な専門家に相談しながら住宅ローンを選ぶことも大事です。

田中歩
 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション付き住宅売買コンサルティング仲介など、ユーザー目線のサービスを提供。2014年11月から「さくら事務所」執行役員として、総合不動産コンサルティング事業の企画運営を担う。

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