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男性カップルに「里親」認定 多様な家族、考える時

2017/5/1

大阪市で昨年12月に男性カップルが「養育里親」に認定されました。同性カップルの里親は日本でほとんど例がなく、2つの観点から注目を浴びています。

1つは里親の確保です。養育里親は虐待や貧困などで親元で育てられなくなった子どもを希望者が預かる仕組みです。厚生労働省によると、日本では養護が必要な子が約4万5千人いますが、里親に預けられる子はわずか1割で、9割は施設にいます。米国や英国では8割以上が里親の下で育つのに比べて極端に少ないのです。

子どもが家庭的な環境で育つよう里親を増やそうとしていますが、なり手は少ないままです。里親になるには「きちんと育てられる人か」という行政の審査を受けます。夫婦でなければいけないという法律はありませんが、実際には結婚している男女の夫婦がほとんどでした。今回、大阪市は「性別に関係なく養育への熱心さなどで判断した」といいます。

法律上の夫婦でなければ、2人共同で未成年の養子をとり法律上の親になることはできません。子を育てたい同性カップルの選択肢に里親が入るようになれば「養護が必要な子の新たな受け皿になる」(立命館大学の二宮周平教授)と期待する声が出ています。

2点目は、今回の里親認定が同性カップルが子どもを持つ議論の第一歩になるのではないか、という観点です。

「同性カップルに子どもが育てられるのだろうか?」と思う人もいるかもしれません。京都産業大学の渡辺泰彦教授は「欧米では同性カップルに育てられた子の成長について研究が進み、社会学や心理学の観点からは問題ないという考えが主流になった」と言います。こうした研究を背景に、海外では約20カ国・地域で同性婚が認められるようになり、そのほとんどが養子縁組を認めています。

ベルギーやオランダ、ニュージーランドでは精子をもらうなど生殖補助医療によってできた子どもも同性カップルの子として認めるようになりました。どの国でも慎重な意見はありますが、大きな流れは二人のパパ、二人のママといった多様な家族を認める方向にあります。

■渡辺京産大教授「同性カップル、子を持つ流れ変えられず」

同性カップルの家族形成についてどう考えれば良いのだろうか。この問題に詳しい京都産業大学の渡辺泰彦教授に話を聞いた。

――男性カップルが里親となったことをどう受けとめていますか。

京都産業大学の渡辺泰彦教授

「今回の里親認定について大きな反響があったのは、『同性カップルに子どもが育てられるのか』という疑問が社会にあることの表れだと思う。よくある反対論の1つが、『母親だけ、父親だけしかいなくてきちんと育つのか』というものだ。これについては米国で1990年代から、母子家庭の子の発育についての研究を発展させる形で研究が進んだ」

「欧州でも、例えばドイツのバンベルグ大学で2009年に767家族、852人の子どもを対象にした調査がされた。その結果、子どもの育ちに重要なのは『家族の構成ではなく家族内の関係の質』だという結論になった。例えば、周囲から差別的なことを言われたとしても親がきちんと話を聞いてあげるといったことだ。同性カップルの養育能力に疑問を呈する論文もないわけではないが、養育能力には問題がないとする方が主流といっていいだろう」

――日本はこれからどうなっていくでしょうか。

「実は日本でも子を育てている同性カップルは存在している。例えば、同性愛者が一度異性と結婚し子どもをつくり、離婚。その後、同性とつきあい2人でその子を育てているようなケースだ。こうしたケースは法律上、カップルの子になるわけではないので、表面化しにくい。また女性カップルでは知り合いなどから精子提供を受けて妊娠し、2人で育てているケースもあるだろう。そうした現実が進んでいけば、法整備も必要になる」

――世界的に政治が保守化していますが、影響はありますか。

「同性愛を禁止するような政党が台頭したとしても、一度、結婚や子どもを持つことを認めたら、それをなかったことにするのは容易ではない。すでに家族や子どもがたくさんいるからだ。もし結婚を無効などにしたら社会は大混乱になる。一度進んだ時代の針を戻すのは簡単ではないはずだ」

(福山絵里子)

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