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使わなきゃ損! 個人型DC iDeCo

個人型DC、金融機関選びカギ 長期運用でコストに差

2017/4/30

個人型確定拠出年金は1月からほぼすべての現役世代が加入できるようになった

 ここは筧家のリビングルーム。良男が会社から帰宅すると、恵と幸子がお茶を飲みながら話し合っています。テーブルの上には金融機関のパンフレットが広げられ、恵の手には電卓。1回計算するたびに、ため息をついては何かをメモしています。

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 良男の妻。ファイナンシャルプランナー資格を持ち、家計について相談業務を手掛ける。 筧良男(かけい・よしお、52=中) 機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。最近、親の相続が気になり始めた。 筧恵(かけい・めぐみ、25) 娘。旅行会社に勤める社会人3年目。自分磨きと"コスパ"にはかなりこだわっている。

 良男 おや恵じゃないか。今日は帰りが早いね。大型連休を控えて仕事が忙しいと言ってたけど、峠を越したのかな?

  なんとか。ただ同僚から別の難題が持ち込まれて。

 幸子 個人型確定拠出年金(DC)を始めたらどうかしらって。若いときから老後の備えをしておくことは悪くないわ。

 良男 「iDeCo(イデコ)」っていう愛称だよね。国民年金や厚生年金とどう違うの?

 幸子 最大の違いは自分で掛け金を決めて口座を開き、運用する金融商品も自分で選ぶという点。これまでは20歳以上の自営業者や勤務先に企業年金がない会社員が対象だったけど、今年1月から公務員や専業主婦、企業年金のある会社員なども入れるようになったの。対象者は約2600万人とみられ、現役世代のすべてをカバーするといわれているわ。

  自分で出した掛け金は全額、所得税や住民税の控除の対象になるの。例えば企業年金のない会社員で税率が20%の人が、ひと月の掛け金の限度額2万3000円を毎月、積み立てると、1年間で5万5200円節税できる計算よ。10年だと約55万円にもなるわ。運用益は全額非課税だし、将来受け取るときも税の優遇があるってパンフレットに書いてあるわ。

 良男 それはやらないともったいないね。

  でも、どの金融機関を選べばいいのか分からなくて。

 幸子 選ぶときには、口座管理費用、運用できる金融商品の品ぞろえ、相談窓口などのサービス体制の3つが大事だといわれているわ。どれも金融機関によって差があるのよ。

 良男 口座管理費用って口座を持っていると毎月、費用がかかるということかい?

 幸子 まず加入する時に金融機関を通じて一度だけ、2777円を国民年金基金連合会に払うの。いくつかの金融機関はここで1080円の手数料がかかるわ。運用を始めた後も毎月、同連合会と信託銀行などの事務委託先金融機関に合計167円(年間2004円)の口座管理費用を払うの。これらに加え、多くの金融機関が運用が始まってからも手数料を取るわ。

  資産の残高によっては、この手数料を取らないところもあるわ。スルガ銀行は残高にかかわらず無料。楽天証券は10万円以上、SBI証券や大和証券は50万円以上であれば無料なので、口座管理費用は年間2004円で済むの。でも毎月450円かかる銀行もあって、そこを選ぶと年間7404円。年間5400円の差でも、10年だと5万4000円の差になるわ。

 良男 口座管理費用の平均はどれくらいなのかな?

 幸子 調べてみたら5000円台が67%、6000円台も14%あったわ。ただ高いところの相談体制が充実しているとは限らないし、個人型DCは原則、60歳になるまで資産を引き出せないから長期の運用になる。口座管理費用が安いところを選ぶのが大事になるわね。

 良男 預貯金で運用しても、低金利下では資産は大きく増えないからね。個人型DCは投資信託で元本を増やしながら、複利で積みますのに向いた仕組みと聞いたことがあるな。

 幸子 よく知っているのね。金融機関選びでは運用商品の品ぞろえも大事になるわ。個人型DC向けの投信は購入時の販売手数料は原則無料だけど、口座管理費用とは別に運用管理費用、つまり信託報酬がかかる。投信の品ぞろえは金融機関によってさまざまで、インデックス型の日本株投信では、ある金融機関は信託報酬が年0.21%の商品があるけど、別の金融機関では年0.67%の商品しかない。この2つの金融機関で毎月、2万3000円を拠出して年4%で30年運用したと仮定すると、信託報酬の合計額の差は90万円近くにもなるの。

 良男 ほかにはどんなことに気をつけたらいいの?

 幸子 個人型DCの申し込みは基本的にはネットと郵送だから、金融機関のウェブサイトの操作性やコールセンターの対応も大事ね。損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントは資料請求すると、簡単な5つの質問に答えるだけで、おすすめの資産配分がわかる「資産配分チェックシート」を同封してくれるわ。三井住友銀行やりそな銀行などでは多くの店頭で加入手続きができるのが強みね。

  金融機関選びでは確定拠出年金教育協会の「iDeCoナビ」や投信評価機関のモーニングスターのiDeCo総合ポータルサイトが便利よ。口座管理費用や投信の品ぞろえが簡単に閲覧できるの。

 良男 一度選んだ金融機関は変更できないの?

 幸子 引き出しは原則、できないけど、金融機関を変えることは可能よ。コストが安い金融機関へ乗り換えることも一手だけど、運用している投信や預金はいったん解約して、現金にして次の金融機関に預け替えないといけないから、もしも値下がりしている投信があれば損失が確定してしまうことになるわ。手続きにも2~3カ月かかるし、手数料を取る金融機関もあるから注意が必要ね。

■全体の費用考え資産形成を
 ファイナンシャルプランナー 山崎俊輔さん
 金融機関を選ぶ際には、口座管理費用と商品として用意している投資信託の信託報酬をトータルで考えてみるといいでしょう。口座管理費用は定額なので残高が増えれば負担感は薄まりますが、信託報酬は定率なので残高が増えるほど負担額は膨らみます。投信の運用コストが高いのは資産形成にはマイナス要因といえます。
 選ぶ目安は「スコア」です。残高100万円に対する口座管理費用の割合を出します。年2004円なら0.2%。これにバランス型投信の信託報酬を加えます。自分で資産配分を決めるのは難しくても、バランス型なら内外の株式や債券に分散投資したことになります。信託報酬が0.6%ならば合計のスコアは0.8と評価します。スコアが低ければ好スコアです。1を超える金融機関は候補から外していいでしょう。
(聞き手は川鍋直彦)

[日本経済新聞夕刊2017年4月26日付]

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