義足開発、めざすは「メガネ」 障害の意識なくしたい為末大さんと遠藤謙さんの対談から(下)

――実際に施設の運営を始めて、当初の狙い通りになっていますか。

為末 幸いにして、スタジアムの利用者の3~4割が障害を持っている人だ。運営しながら「いいな」と思っている風景は、子供たちと障害を持っている人の交流。義足を見ても子供には抵抗感がないし、聴覚障害のある人と筆談をしたり、スマートフォンの画面に文字を入力したりしていて、自然な空気を出せていると思う。今後は、もっと認知度を高めて、利用者を増やしたい。そしてテクノロジーとスポーツをもっと融合させたい。

スタジアムにはスポーツ以外にもアートなど幅広い世界の人たちが集まってきている(アート集団のスローレーベルが昨年12月の開業式典で披露した車いすのパフォーマンス)

――スタジアムにはスポーツ以外にもアートなど幅広い世界の人たちが集まってきているようですね。

為末 「スローレーベル」という名前の障害を持っている人のアート集団がスタジアムを拠点に活動している。リオデジャネイロ・パラリンピックの閉会式では、(スローレーベルの代表者がステージアドバイザーとなって)車椅子を使ったパフォーマンスを披露していた。2020年の東京パラリンピックでは、僕が指導したアスリートがサイボーグの義足を履いて出場し、開会式か閉会式をスローレーベルが演出できれば、我々にとっての成功だろう。

昨年は食の世界の人たちが中心となって、走った後に沖縄そばを食べるイベントもあった。これまでスポーツ施設は堅いイメージがあったが、スポーツは楽しむためにあるのだから、柔らかくしたい。すべての人がスポーツの世界に入りやすくするのも役割だと思っている。(やりすぎだと)怒られるまでやろうというのが僕のコンセプト。とりあえず「ビールを飲みながら」は怒られていない。これがウオッカになったら怒られるかもしれないが(笑)。

――スタジアムでの活動は将来、どんな形で社会に広がっていきますか。競技用義足の開発で培った技術はどう生かされるのでしょうか。

遠藤 人間が身体に近い状態で受け入れているテクノロジーは少ない。定着している例はメガネぐらいだ。昔は、目の悪い人は障害者のような扱いを受けていたかもしれないのに、今はメガネをかけている人を見ても、誰も視力が悪いことを気にしない。テクノロジーが身体に近い状態で社会に受け入れられると、それを人は使わざるを得なくなる。使われないのはテクノロジーが未熟だからだ。成熟度が高まれば、身体の周りにテクノロジーを受け入れざるを得なくなる。

義足についても同じ。義足を使っている人が障害者といわれるのは、義足が健常者の足に比べて未熟だからだ。もし健常者の足と同じような動きができて、見た目も健常者の足と変わらなかったら、メガネを使っている人と同じように、義足を使っている人も障害者といわれなくなるかもしれない。将来は義足だけでなく、足腰が弱い高齢者が歩けるようになるテクノロジーも出てきて、社会になじんでいくフェーズになると思う。そんな未来の姿を思い描いている。

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