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「県外留学生」が半数、企業戦士が担う離島の未来 島根県の海士町(下)

2017/5/4

海士町にある公立塾「隠岐国学習センター」

童謡『ふるさと』の歌詞を覚えているだろうか。島根県海士町では「志をはたして」の部分を、「志をはたしに」と言い換えて歌う。地方自治体の多くが産業を誘致して地域起こしをしようとしたのに対し、海士町は「島でしかできない教育」で注目を集めた。大人たちが手をつないで歌う『ふるさと』には、教育に対する地元関係者の並々ならぬ期待が詰まっている。

■離島にSGH 半数は県外から「留学生」

海士町の玄関口「菱浦港」から歩いて5分、町で最も賑わう中心街の一角に、全国的にも珍しい公立塾がある。西ノ島、中ノ島、知夫里島から成る島前3島で唯一の公立高校「隠岐島前高校」と連携した、「隠岐国学習センター」だ。

裏手の高台に建つのが隠岐島前高校で、有名大学の付属中学や中高一貫校とともに、2015年度(平成27年度)から、文部科学省のスーパーグローバルハイスクール(SGH)にも指定されている。全校生徒数は184人。うち約半数が県外からきた「島留学生」たちだ。島外の生徒は全員、寮生活を送っている。隠岐国学習センターには、この島留学生たちも通う。

多忙のなか、センター長の豊田庄吾氏が塾の中を案内してくれた。玄関を入ってすぐの1階に、平日の午後1時から午後10時まで、誰でも利用できる交流スペースがある。木製の机と椅子が並び、土足のままくつろげるゆったりした空間が広がっている。いわば、島の「サードプレイス(第三の居場所)」だ。

「Wi-Fi(ワイファイ)も完備していますから、ここでコーヒーやお茶を飲みながらパソコンを使って調べ物をすることもできます」。離れには畳敷きの和室もあり、豊田氏を含む地域の有志約10人が早朝、自主的に集まり、月に一度、海士町の未来を語り合う「あさあま」会議を開いている。

■「竣工式で涙が止まらなかった」

隠岐国学習センターのセンター長、豊田庄吾氏

「塾を開設したのは2010年7月。空き家を借りて、そこに机と椅子をかき集めて運び込んでのスタートでした」。生徒数が100人を超えるようになり、古民家を改修した現在の建物へと引っ越したのは2016年4月のこと。それまでの日々を思い出し、竣工式の日は、涙が溢れ出て止まらなかったという。

「開設して最初の半年間は無料で塾を開放したのですが、初日、開始予定時刻の午後7時になっても誰も来なかった。午後8時になってようやく一人来たかと思ったら、こう言われました。『ぼくは自分の意思で来たわけじゃないですから。お母さんが行けって言うから来たんです。勘違いしないでください』」

「いいからとにかく入れ」と促し、スタッフも交えて3人で語り合った。最初の半年間は1学年10名程度で、細々と授業を続けた。

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