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子供にお金の話をしよう

資産1000万円以上の20代 お金の知識は家族から

日経マネー

2017/5/23

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日経マネー

今回からフィデリティ退職・投資教育研究所所長の野尻哲史さんの日経マネー連載「子供にお金の話をしよう」の転載を開始します。第1回のテーマは「その金融知識、もし20代で知っていれば……」です。

[親父の悩み]自分の資産は何とかつくってきた。でも子供の学費や結婚費用も考えると、老後の生活にはギリギリだ。少子高齢化などで将来は今よりもっと厳しくなりそうなのに、子供には何も残してあげられないのだろうか……。

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イラスト:ふじわらかずえ

読者の皆さんは自分の老後が心配ですか? お給料の中から少しずつ貯蓄をして、最近では運用もするようになり、今ある資産から自分たちの老後の費用にはめどがついてきた──。このような方が多いのではないでしょうか。

一方で、皆さんのお子さんの将来についてはいかがお考えでしょうか?

人口構成は厳しさを増し、現在20歳の子供が65歳になる2060年頃には、65歳以上が総人口の4割に達しそうです。年金は減りそうで、健康保険制度も不透明。自分たちより厳しい老後になるのでは、と心配になりませんか?

子供に残せるほどの資産がないのなら、何を残してやれるのか。あなた自身、真剣に考える必要があります。自分の若い頃を振り返って、「あの時、これをやっていれば」「あの頃、これを知っていれば」という資産形成にまつわる経験や後悔。それこそ子供に残せる最良の資産ではないでしょうか。

このコラムは、子供に資産形成の第一歩を少しでも早く踏み出してほしいと思う、そういった50代の読者に読んでほしいのです。

■情報、「家族との会話から」

フィデリティ退職・投資教育研究所では毎年、アンケートを行っています。対象は普通のサラリーマンですが、投資をしている人は3割程度で、まだまだ投資が一般的にはなっていません。

しかし、20代で金融資産が1000万円以上と答えたサラリーマンが同年代の7%強もいたことには驚きました。それ以上に注目したのは、その人たちは他の20代に比べて「お金の情報を家族との会話から得ている」とする比率が高かったことです。

注:フィデリティ退職・投資教育研究所調べ。複数回答のアンケート結果から抽出

決して、親のアドバイスが無視されるわけではないのです。むしろ、失敗も成功も経験した親のアドバイスは最も役に立つはずです。

そこであえて聞きたいのですが、あなたは子どもに自分の年収を話していますか?

お金の話をするのは「卑しいこと」とか「他人に話してしまいそうで嫌だ」とかの理由で話していないのではないでしょうか。しかし、前述したアンケート結果に従えば、家庭での「お金の話」は子供にとって良き教科書となっています。

イラスト:ふじわらかずえ

そこで、まだ働いて稼ぐイメージがつかない大学生や新社会人にとって、最も分かりやすいのは大学教育の費用ではないかと思います。私が、大学で講義をする時には、2つの質問をするようにしています。「自分が通う大学の年間授業料」と「親の年収」の2つを知っているかという質問です。

手を挙げるのは前者で半分、後者では2割もいません。多くの子供が大学に通っていますから、彼らからすると「大変だけど何とか捻出してくれている」と思っているのでしょう。親からすれば「お金のことを気にかけて大学生活を楽しめないのはかわいそう」でしょうか。

しかし、その負担の大きさを当の子供が理解しなければ、彼らにこれからのお金のことを理解させることもできません。まずは親の年収を知らせ、授業料と比較させることがスタートです。

ちなみに、民間給与実態統計調査によると、50代後半の男性の平均年収は約650万円です。これに対して、文部科学省「私立大学等の平成26年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」によると、私立大学の年間授業料は86.4万円、施設整備費18.6万円で合計105万円。年収に対する負担率は16%となります。かなり大変な支出であることは確かです。

出所:私立大学は文部科学省「私立大学等の平成26年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」、国立大学と公立大学はマイナビ「高校生のための進学ガイド、学生納付金の状況(2013年度)」

いずれにしても、子供に自分の年収を話さなければ、この比率は実感できません。いつか彼らが自分の子供の教育費を負担する時に、後悔しないためにきっと役に立つはずです。

■資産をどうつくらせるか

その対策に関しては、20代、30代の方が我々の世代よりも恵まれています。教育費を早めにつくり上げていく制度の後押しが多くなっているからです。

例えば少額投資非課税制度(NISA)です。14年に始まったので親世代にとっては遅過ぎたのですが、現在の若者はうまく使えば効率的に資産形成ができる制度です。本来はもうけに掛かる20%の税金が掛からないのですから、使わない手はありません。子供の名義で同じ非課税投資ができるジュニアNISAも16年から始まりました。20年間資産準備ができる点は効果的です。教育資金に関する一括贈与の非課税措置なども活用の余地があります。

このコラムでは、資産形成にまつわる「親子の会話」のきっかけになるような制度やデータを紹介していきます。世代をまたいだ資産形成の一助になれば幸いです。

【こんなふうに伝えよう】

投資教育が普及していない日本では、親の体験こそが子供の資産形成に貢献できる最良の教材です。まずはご自身の年収と、大学の授業料などイメージしやすい「お金の話」をするところから始めてみてはいかがでしょうか。

イラスト:ふじわらかずえ
野尻哲史
フィデリティ退職・投資教育研究所所長。一橋大学卒業後、内外の証券会社調査部を経て2006年にフィデリティ投信入社、07年から現職。アンケート結果を基にした資産形成に関する著書や講演多数。

[日経マネー2017年6月号の記事を再構成]

日経マネー 2017年 6月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)

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