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不妊治療、保険で備え 1回10万円受け取れる場合も 国や自治体の助成、世帯年収などで制約

2017/4/29

 子供を授かりたい。切なる願いを胸に不妊治療に向き合うカップルを支える保険が出てきた。この保険に入っておけば、不妊治療の費用をまかなう保険金を受け取れる。保険による備えがあれば、「特定不妊治療」と呼ばれる高度で高額な治療も受けやすくなる。国や一部の自治体には不妊治療への補助制度もある。誰もが望まない「不妊」のリスクに備える仕組みが、少しずつ整ってきた。

 人工授精1回数万円、体外受精1回数十万円、1人の子どもを授かるための費用は100万円以上。不妊治療を経験した多くの人が口にするのは「想像以上にお金がかかる」という費用の問題だ。治療が1年以上続くケースも多く、負担の重さを理由に治療をあきらめるカップルもいる。

 国立社会保障・人口問題研究所によると、不妊治療をするカップルは6組に1組。晩婚化などを背景に出産年齢が上がり、35歳以上の母親による出産は2015年に全出産数の28%と、20年前の10%から急増した。

■多額出費に備え

 不妊治療が一般的になるなか、日本生命保険は不妊治療向け保険「シュシュ」を発売した。月1万円前後の保険料で、体外受精や顕微授精など「特定不妊治療」を受けた際に1回当たり5万~10万円を最大で12回受け取れる。

 満期一時金は保険期間10年で最大100万円、20年で同200万円。治療の際の保険金はこの満期一時金を取り崩して支払われ、最終的には「支払った保険料の約8割が戻る計算」(商品開発課長の神山亮弘氏)。払い込む保険料がすべて返ってくるわけではないが、一度に多額の出費になるのを防ぎたい人には保険金が助けになる。

 年間1万人の加入目標数に対し、発売から半年間で20代後半を中心に約5000件の契約があった。保険金目的で不妊治療を始めるといった加入者を防ぐため、特定不妊治療に対する保険金の支払いは加入から2年後に設定している。妊娠を希望する数年前から加入をしなければならない点には注意が必要だ。

 不妊治療への保険が解禁されたのは16年4月。これまでは「仮に保険業者から商品申請があっても、審査の根拠があいまいだった」(金融庁)との理由で開発が遅れていた。支払金の設定の難しさなどからまだ商品数は限られるが、「検討を進めている会社がいくつかある」(同)という。

■初期検査も支援

 保険制度の整備に加え、国や自治体の助成も少しずつ整備されてきている。厚生労働省は43歳未満の女性に対し、体外受精や顕微授精に初回は30万円、その後は1回あたり15万円の助成金を出す。埼玉県は母親が35歳未満の場合は助成金を上乗せするなど、独自の拡充策もある。

 不妊治療の初期段階に対する助成も広がりつつある。東京都は18年3月までに、国の制度では対象外となっている体外受精のための検査や、妊娠しやすいタイミングの指導を受ける療法など、初期の治療に対する助成を始める計画だ。対象となるいずれかの治療を受けた場合、1回に限って最大5万円を支給する。

 ただし、国や自治体の助成制度には世帯年収の上限など給付対象の制約がある。少子高齢化の緩和に向けて支援の仕組みは広がりつつあるが、不妊治療は家計に負担がかかることを念頭に、早めの備えが肝要だ。

(経済部 中村結)

[日本経済新聞朝刊2017年4月22日付]

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