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定員たった18人 「個室仕様」夜行バスの贅沢を体感

日経トレンディネット

2017/5/2

JR高速バスの「ドリーム ルリエ」はイメージキャラクターとしてAKB48の横山由依を起用
日経トレンディネット

ジェイアールバス関東と西日本ジェイアールバスが2017年3月31日、新型夜行高速バス「ドリーム ルリエ」の運行をスタートした。東京-大阪間で48年の歴史を持つドリーム号の中で「最上のくつろぎ」をうたい、1台の定員はわずか18人。従来の「グランドリーム号」の定員28人よりも少なく、そのぶんゆったりとした座席配置となっている。

老舗のJRバスに対し、ここ10年で向こうを張る規模まで急成長を遂げたウィラー エクスプレス ジャパンも、同年2月に同じ18人乗りの新型車両「リボーン」を投入。同社の平山幸司社長は「これからは快適なだけでなく、休息できるかどうかが重要」と強調する。

なぜ両社とも「18人乗り」にたどり着いたのか。そして、その実力は? リボーンで一夜を過ごし、その快適性を確かめた。

■ポイントはシート以外にある?

旧・国鉄バス時代から48年間運行を続けている「ドリーム号」。これまで様々なシート配置のバスが導入されてきたが、今回のドリーム ルリエへの力の入れ具合はこれまでにないものといえる。当面は1往復の運行にとどまるにもかかわらず、イメージキャラクターとしてAKB48の横山由依を起用。記者発表会まで開かれた。

記者発表会より

座席は前方の4席が通路を挟んで左右1列だけの「プレシャスクラス」。後方の14席が3列独立シートの「アドバンスクラス」。プレシャスクラスの料金は1万4000~1万8000円と新幹線並みの一方、アドバンスクラスは1万400~1万2500円で新幹線より安価に設定されている。席数は限られるが、アドバンスクラスは乗車日前日まで9800円で買える「早売1」もある。

ただ、どちらの座席も実は新開発のものではない。プレシャスクラスのシートは「プレミアムドリーム号」に設置されている「プレミアムシート」(1万1500~1万3300円)にレッグレストのヒーターを追加したもの。アドバンスクラスのシートは「グランドリーム号」の「新型クレイドルシート」(8000~1万円)のリクライニング機能を向上させたものだ。

ポイントはシート以外にある。「従来はシートで差異化を図ってきたが、よりプライベート空間が必要だと考え、個室感を加えた」(西日本ジェイアールバスの宇都宮道夫社長)。プレシャスクラスでは、通路と後ろの座席との間にそれぞれパーティションを設置。アドバンスクラスでも、座席の左右にパーティションを設置し、座席前後はカーテンで仕切るようにした。加えて、シートピッチも1m以上に広げている。

「プレシャスクラス」は前後の席と通路との間についたてがある
「アドバンスクラス」は通路との間はついたて、前後はカーテンで仕切る

■なぜ18席になったのか?

従来からあるフリーWi-Fiや充電用コンセントに加え、全席にiPad mini 4を設置したのも目新しい。夜行高速バスでは本来、消灯後のスマホやタブレットの利用は、睡眠を妨げるのでご法度。しかし、パーテーションなどで光漏れが防げるため、採用に至ったという。タブレットでは「dマガジン」や「Abema TV」が無料で見られる。料金は「新幹線を当然意識しつつも、従来のシートに付帯サービスが加わったぶんを上乗せした」(宇都宮氏)という。

1台に2つの座席クラスを配置した背景には、運行コストとの兼ね合いがある。これまでのプレミアムシートは2階建てバスの一部に設置。大部分は3列または4列シートにすることで、定員を32~34人とし、採算を合わせてきた。この2階建てバスの更新時期を迎えているが、「現在は国産の2階建てバスが生産されておらず、輸入車を導入するにもクリアすべき課題が多い」(宇都宮氏)。そのため、1階建てのハイデッカー車にせざるを得ない。

夜行バスの主流だった国産の2階建てバスは製造終了から7年が経過し、置き換えが課題になっている

ただ座席数が減れば、当然1席当たりの料金は上がる。1月から同じ東京-大阪間で運行を始めた「ドリームスリーパー東京大阪号」(関東バス、両備ホールディングス)は、1台11席の完全個室が売りだが、料金は新幹線のグリーン車を上回る片道1万8000~2万円。従来からの高速バスユーザーは、新幹線より安価で効率的に移動できることに価値を見出しており、ここまでの料金を払うのは躊躇(ちゅうちょ)するだろう。一方、事業者にとっては高額な座席を空席のまま走らせるリスクも減らしたいところ。長年の歴史を持つ老舗事業者がたどり着いた最適解が、2列シートと3列シートを組み合わせた定員18人だったようだ。

■ウィラー「リボーン」に乗ってみた

JRバスに先行する形で新型車両を導入したウィラー。こちらは3列シート1種類だけで18人乗り。「リボーン」の愛称で、17年2月17日から東京-大阪間を1往復している。料金はドリーム ルリエのアドバンスクラスと同程度の1万800~1万5000円だ。3列シートながらも、シートの左右をFRP製のシェルで覆ってプライバシー感を確保。リクライニングすれば、前後左右の乗客が気になることはないとうたう。この辺りはJRバスと共通する思想だ。

こちらも相当に気合が入っており、これまでピンクを基調としたパステルカラーがトレードマークだった車体を、シルバーに青いストライプに改めてイメージを一新。「これまでメーンターゲットとしてきた若い女性だけでなく、ビジネスパーソンに乗ってもらいたい」(ウィラーの平山氏)からだという。

ウィラーらしからぬデザインの「リボーン」

座席のスペックを見る限り、寝心地は良さそう。ただ、気になる点が2つあった。1つは、車内にトイレが付いていない点。数時間おきに立ち寄るパーキングエリアでトイレ休憩を行うというが、それによって睡眠が妨げられないのか。そしてもう1つは、完全消灯を行わないという“決断”だ。深夜は室内灯を消すのが一般的だが、「真っ暗で不安になるという声もあった」(平山氏)。そこで完全に消灯せずとも安眠を誘う調光を採用したのだという。果たしてその効果は本当なのだろうか。

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