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チェリスト山崎伸子 10年公演の次はバッハ

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NIKKEI STYLE

チェリスト山崎伸子さんの10年にわたる「チェロソナタ・シリーズ」が5月のリサイタルで最終回を迎える。公演のたびにライブCDも出すなど、50代を通じての大仕事を終える今、次の目標としてバッハの「無伴奏チェロ組曲」への深い取り組みを掲げる。

「サイトウ・キネン・オーケストラ」にその名を冠し、指揮者・小澤征爾氏の師でもあった日本屈指の音楽教育者、斎藤秀雄氏。指揮者兼チェリストだった彼の晩年の愛(まな)弟子の一人が山崎さんだ。「本当によく怒られた。弾けても弾けなくてもどっちにしても怒られる。それでバッハが嫌いになったくらい。でも斎藤先生の厳しい指導があったからこそ今のチェリストとしての自分がある」。山崎さんはこう語り、小学5年で広島から上京し、桐朋学園で斎藤氏に学んだ頃を振り返る。山崎さんが桐朋学園大学2年の時に斎藤氏は世を去った。

チェロソナタの名曲を網羅した10年シリーズ公演

その後、山崎さんはスイスのジュネーブに留学し、20世紀の巨匠チェリスト、ピエール・フルニエ氏に師事した。「彼は本当に演奏家だった。レッスンは2時間で、1曲を終えてしまう。実際に間近で弾いてくれて、チェリストの音作りがどんなものか実地で教わったことがその後のプロとしての活動に大いに役立った」とフルニエ氏の指導を思い出す。そんな昔話をしながら、斎藤氏やフルニエ氏の写真が飾られた自宅地下の練習室で彼女はJ.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲第6番」を弾き始めた。斎藤氏とフルニエ氏の秘蔵っ子が鳴らすチェロの音色は、音楽がデジタル化する前の、20世紀巨匠たちの人懐こい響きを今に伝えるはずだ。

彼女が今、とりわけバッハの「無伴奏チェロ組曲第6番」の練習にいそしむのは、5月25日に紀尾井ホール(東京・千代田)で開く「山崎伸子チェロソナタ・シリーズ最終回」で演奏するからだ。同シリーズは2007年から毎年1回開いてきたリサイタル。「ちょうど50歳の年に、これから50代の10年間を何にどう取り組むべきかを考えていた時期だった」と言う。当時のマネジャーが「山崎さんはチェロソナタの演奏が素晴らしいから様々な作曲家のソナタの名曲を網羅するリサイタルをやるべきだ」と提案したのをきっかけに10年シリーズを始めた。

チェロソナタは通常、チェロとピアノによる二重奏のスタイルをとる。2015年の第9回までにベートーベンの全5曲、ブラームスの全2曲をはじめ、ロマン派のメンデルスゾーンやショパン、ロシア(旧ソ連)のプロコフィエフやショスタコーヴィチ、近現代フランスのフォーレやドビュッシーら、様々な作曲家のチェロソナタを演奏してきた。「チェロソナタを書いた作曲家にはピアニストが多い」とピアノの重要性を指摘し、「それぞれの曲にふさわしいピアニストに共演を頼んできた」と話す。10年シリーズのうち第1回と第3回で共演したのは、オランダを拠点に活躍したピアニストで、2011年に亡くなった長岡純子さん。ほかのピアニストもヴァディム・サハロフ氏、清水和音氏、ヴィレム・ブロンズ氏ら国内外の実力派ぞろいだ。

毎年の公演ごとにCDへのライブ録音も重ねてきた。中でも4枚目のCDは、ピアニスト兼作曲家の野平一郎氏と共演してドビュッシーとフォーレ、プーランクというフランス近現代作曲家の「チェロソナタ」を収録し、2011年度レコード・アカデミー賞室内楽部門賞を受賞した。さらにピアニストの加藤洋之氏と共演した9枚目は、ショパンの「チェロソナタ」を収め、クラシック音楽専門誌「レコード芸術」の「特選盤」になるなど高い評価を受けた。そして最終回のピアニストは、第5回と第8回でも共演した小菅優さんだ。「彼女は私が今最も注目しているピアニスト」と山崎さんは小菅さんに厚い信頼を寄せる。「やり残した名曲があと2つある」と語り、マルティヌーの「チェロソナタ第1番」とラフマニノフの「チェロソナタト短調」を2人で共演する。シリーズ最終回に先立ち、5月13日には彩の国さいたま芸術劇場(さいたま市)でもマルティヌーの「チェロソナタ第1番」を、こちらは加藤氏との共演で披露する。

次の目標に掲げるバッハの「無伴奏チェロ組曲」

ここで再びバッハの「無伴奏チェロ組曲」に話が戻る。チェロとピアノが織りなす「チェロソナタ」10年シリーズの最終回でなぜ、ピアノ伴奏が無いチェリストひとりだけの「無伴奏チェロ組曲第6番」も弾くのか。それは彼女が「次」を見据えているからだ。「全6曲あるバッハの『無伴奏チェロ組曲』をこれから深く掘り下げていきたい」と語る。「無伴奏」は斎藤秀雄氏に少女時代からみっちり厳しく教わった作品なのはもちろんのこと、チェリストにとっての聖典でもある。チェロソナタの名曲を弾き終える今、「どうしてもバッハの『無伴奏』に取り組むしかない」と宿命のように語る。

バッハの「無伴奏チェロ組曲」は「第1番」から「第6番」まで番号が増えるごとに演奏の難易度も上がっていくという。本稿の映像では、東京都内の自宅で、最も難しいといわれる「第6番」の「前奏曲(プレリュード)」を練習する山崎さんの様子を捉えている。「バッハの作品については弾く側にも聴く側にもいろんなイメージがある。制約がないから逆にどう弾いていいのか分からなくなって難しい」と話す。しかも「チェロソナタはピアノが和声をつくるが、無伴奏はチェリストが弾く単音の流れの中に和声が含まれている。自分ひとりで和声もつくっていかなければならない」と難易度の高さを指摘する。

若手演奏家との室内楽での共演にも力を注ぐ

「第6番」は「もともとが5弦の楽器のために書かれている。それを4弦の現代仕様のチェロで弾くこと自体が技術的に難しい」と言う。ここで彼女が独自のアプローチのヒントになりそうな事例として挙げたのが、指揮者兼ピアニストのダニエル・バレンボイム氏によるバッハの「平均律クラヴィーア曲集(24の前奏曲とフーガ)第1、2巻」の全曲公演だ。「バレンボイムがピアノで弾いたバッハのフーガからは、のちのワーグナーや(現代音楽の開祖である)シェーンベルクが使った響きまで聞こえてきた。無伴奏チェロ組曲の演奏にも宇宙的な広がりというか、そういう可能性があるはずだ」と抱負を語る。

こうしてバッハの「無伴奏チェロ組曲」を新たな挑戦と位置付けるのだが、「ひとりきりで弾くのは孤独で寂しい」とも言う。「本当は仲間と一緒に演奏する弦楽四重奏曲のような室内楽が好きなんです」。そこで彼女が力を注ぐもう一つの分野が、若手演奏家との共演による室内楽だ。「桐朋学園で学んでいた頃の愉快な思い出は、仲間との弦楽四重奏曲の練習だった」と話す。その楽しい経験を生かし、「輝く若手演奏家による『未来につなぐ』室内楽」と呼ぶシリーズ公演を自らプロデュースして始める。第1回を5月11日に横浜市のフィリアホールで開く。「クァルテット・トイトイ」という桐朋学園大の学生による弦楽四重奏団などを指導し、「毎回必ず1曲は自分も入って共演する」と言う。ドボルザークの「弦楽六重奏曲イ長調」を彼らと一緒に弾く。

「今の学生はよく指が回るし、演奏技術は確かに高い」と言いつつも、「最近はどんな音楽でもユーチューブ(動画共有サイト)で聴いて確認し、正確に弾くことに気を取られる傾向が強い」と不満を漏らす。ただ機械的に間違えずに弾くだけでは芸術作品にならないのは言うまでもない。「室内楽の演奏では、みんなぴったり合いすぎてしまうので、ちょっとずらして、と指導している」と話す。

20世紀の巨匠、パブロ・カザルス、ヤーノシュ・シュタルケル、フルニエの各氏は、バッハの「無伴奏チェロ組曲」で歴史的名演と名盤を生み出した。彼らの演奏には人間臭い揺らぎや表情が多分に含まれていたともいわれる。斎藤秀雄氏の門下生である堤剛氏や藤原真理さんらにも、「無伴奏」で巨匠たちがたどった高みの境地を目指す心意気が感じられる。学生たちとの室内楽の共演で演奏家の原点を見つめ直しつつ、バッハの「無伴奏」と向き合う。山崎さんの10年公演の「次」が聞こえてくる。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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