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放置すればリスク大 空き家でも欠かせぬ火災保険

日経マネー

2017/5/16

日経マネー

 契約はしたものの、細かな内容はよく知らない――。生命保険や損害保険の契約者の中には、こんな人も少なくないだろう。だが、保険は契約条項ひとつで受けられる補償が大きく変わる上、新たなサービスも続々と登場している。本コラムでは、生命保険と損害保険を交互に取り上げ、保険選びの上で知っておきたい知識を解説する。

◇  ◇  ◇

 親の死亡や施設入居などで空き家になった実家。その管理の手間やコスト負担に頭を悩ます人は少なくない。自分の住まいを既に得ていたり、遠方に住んでいたりする子世代には、まさに重荷だ。処分したくても買い手がないという状況もある。持て余し、結果として放置するケースも耳にする。

 だが、放置された空き家は時間がたつにつれて防災上・防犯上の危険が増す。不審者が入り込み放火するかもしれないし、管理不備で傷んだ家は台風や地震などで被災しやすくもなる。こうしたトラブルが一度発生すれば、建物の取り壊しや残存物の片付けが必要となり、数百万円レベルの費用負担を強いられることもあり得る。

 それだけではない。空き家トラブルで他人を死傷させたり、ものに損害を与えたりして法律上の損害賠償責任を問われる可能性もある。その賠償額は予測もつかない。

 好むと好まざるにかかわらず、空き家を所有する限り管理や費用負担は必須。怠れば、子世代が自らの生活設計を犠牲にせざるを得ない事態も起こるのである。

 空き家がもたらす偶発的なトラブルへの経済的備えとして、火災保険は欠かせない。「住まないから不要」ではなく、「住んでいないから増すリスク」にこそ、十分な対応が必要なのだ。

 実家が空き家になると、親が住んでいた頃にかけていた住宅向け火災保険は継続できず、事務所や店舗向けの事業物件用の火災保険に入り直すことになる。補償内容は、火災をはじめ風・水害やその他偶然の事故について、ほぼ住宅同様にカバーが可能だ。ただし、事業物件扱いとなるため地震保険はかけられない。空き家では地震被害に対する補償手段がないことは知っておきたい。

 加えて、空き家が原因で生じた他人への損害賠償に備えるため、施設賠償責任保険の契約も必要だ。

 補償内容をほぼ同条件とした場合の、使用中の住宅と空き家との年間保険料を比較したのが下の表。賠償責任保険を含めた年間保険料は、空き家の方が約1万2000円高い。住まない家の方が、維持コストは高くなるわけだ。

注:東京都の木造住宅(H構造)、保険期間1年として損害保険ジャパン日本興亜の商品で試算。*1=店舗総合保険は風災・ひょう災・雪災では損害額20万円以上の場合が対象 *2=店舗総合保険は水災では損害の程度に応じて3段階の保険金支払い

 国内の空き家総数は現在約820万戸。団塊世代の高齢化に伴い今後さらに増加するとみられており、実家の取り扱いに悩む子世代も一段と増えることだろう。

 住宅の所有には、言うまでもなく相応のコストが必要とされる。住宅の取得理由の多くは「家族のため」。だが、時間の経過に伴い家族の形態は変わっていく。今だけではなく、自らが高齢者になり、そしてこの世からいなくなった時のことも考え、子世代に“負の資産”を残さない住まい方を考えるべき時代が来ている。

清水香
 生活設計塾クルー。学生時代から生損保代理店業務に携わり、2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。翌年、生活設計塾クルー取締役に就任。『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。財務省「地震保険に関するプロジェクトチーム」委員。

[日経マネー2017年6月号の記事を再構成]

日経マネー 2017年 6月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)


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