不動産・住宅ローン

REIT投資の勘所

不動産高騰で警戒モード REIT運用は安定重視に

日経マネー

2017/5/5

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 2016年下期のREIT全体の1口当たり分配金は、前年同期比4.8%の伸びとなった(対象可能な銘柄の単純平均値)。ホテル系銘柄の多くは稼働率の上昇で15%を超えている。しかし、賃貸市況の好調に加え、低金利の資金調達が可能な現在の投資用不動産市況を鑑みると、全体で5%弱という伸びは投資家にとって「物足りない」と映るかもしれない。

 増配率が低調な背景には、多くの銘柄が安定性を重視した運用にかじを切り始めたことがある。

■運用側は警戒モード入り?

注:投資口価格は2017年4月6日時点

 まず増資で調達した資金を使って借金を返す、つまり借入金比率を下げる銘柄が目立って増えている。調達した資金を使って新たな物件を取得すれば、借入金比率を維持したまま分配金を増やせる。

 だが、今は物件価格が高騰しており、新たな物件は買いにくい。一方、増資で得た資金を借金返済に充てれば、増配には寄与しないが、将来の物件取得余地は拡大し、価格高騰時に取得した物件の含み損発生リスクを軽減できるといったメリットも期待できる。

 物件売却益を内部留保に回す動きも目立つ。これは売却益を使った分配金の一時的な増加に投資家が反応しなくなってきていることが背景にありそうだ。この動きを端的に示したのが、スターアジア(SAI)が17年2月に発表した分配金の上方修正だ。

 2月末、SAIは物件売却益の寄与を理由として、当期(17年7月期)の1口当たり予想分配金を、3120円から4340円へ引き上げた。分配金の増加率は40%近くなったが、発表翌日の投資口価格は5%しか上昇しなかった。投資家は売却益が剥落した後の分配金水準を意識していることは明らかだろう。

 物件売却と同時に新たな物件を取得したような銘柄では、取得物件の簿価を引き下げる「圧縮記帳」を行う動きも広まっている。

 17年3月にスターツプロシード(SPI)は保有2物件の売却を発表したが、その売却益である約1.5億円弱のうち、約1.3億円は同時期に取得した物件の圧縮記帳に用いることを明らかにした。この物件の取得価格は3.8億円だが、圧縮記帳によって簿価は2.5億円まで下がるとしている。

 もし、SPIが今回の圧縮記帳に使ったお金を分配金に充てていれば、当期(17年4月期)の予想分配金は4200円から4700円程度まで増えたはずだ。しかし、SPIは増配を選ばなかった。

 REITが簿価の引き下げに走るのは前述したように「不動産価格が高過ぎる」という認識があるからだ。簿価を下げれば取得物件が将来含み損を抱えるリスクは減るし、現時点についても圧縮記帳分だけ含み益を積み増せる。

 このようにREITは不動産価格の高騰を警戒し始めている。分配金の増加率を犠牲にしてでも、利益は将来への備えに使うという姿勢はこれからも強まりそうだ。

関大介
 不動産証券化コンサルティングおよび情報提供を手掛けるアイビー総研代表。REIT情報に特化した「JAPAN-REIT.COM」(http://www.japan-reit.com/)を運営する。

[日経マネー2017年6月号の記事を再構成]

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