又吉直樹、『劇場』を語る 「今の僕は負けから入る」

「火花」は漫才、「劇場」は演劇と、才能が問われる世界をともに舞台にしている。お笑いコンビ、ピースのボケ役として人気を集め、作家としても芥川賞を受賞している今、才能についてどう考えるのか。

面白さを求めて

「芸人になろうと東京に出てきたのが18歳のときで、当時周りは自分には才能があると思ってきて集まってきた人ばかり。僕にはもともと二面性があって、『いける』という思いと『自分には無理』という思いがあった。『いける』という感覚は年々薄れていき、今の自分は負けから入っている。もちろん才能に関して悩むのはその人の自由であり、恋愛も一種の才能だと思います」

「僕自身は世に出ることとか、芥川賞をとることは目標として掲げてこなかった。芸人としては面白いことを言いたい、小説を書かせてもらえるなら面白いことをやりたいというのが目的だった。今でも自分の能力に自信があるかと問われたら、自信はない。ただ、可能性を信じられなかったらやらない方がよい」

「小説でもお笑いでも面白い場所を作るというのは自分にとっての第一意義。面白いというのは、笑えるとかだけではなく、複合的な瞬間だと思っています。その場に集まってくれた人が楽しんでくれたら僕にとってもうれしい」

相方であるピースのツッコミ担当、綾部祐二さん(39)がニューヨークに拠点を移すため、コンビとしては活動休止となる。

「僕のライブ活動は今まで通り。僕が作ったコントを集団で演じるといった試みも始めました。綾部はいつ帰ってくるか分からないが、ピース解散ということではない。彼の夢だったので相方として応援したい。2人で出ていた番組は3つぐらいは卒業したので、僕自身も新たな気持ちで取り組みます」

「小説に関しては第3作を書きたいなとは思いますが、まだ書けていません。今後も小説は書いていくが、それがどういうものになるかは分からない。読むのは純文学といわれるものが好きですが、書く方はそれとは違うものになるかも。とらわれずに書いていきたいと思います」

(編集委員 中野稔)

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