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又吉直樹、『劇場』を語る 「今の僕は負けから入る」

2017/5/8

 芥川賞作家にしてお笑い芸人の又吉直樹さん(36)の小説第2作「劇場」(新潮社)が11日に刊行される。同作が載った「新潮」4月号は文芸誌としては異例の5万部が完売するなど、単行本の発売前から注目を集める。この作品に込めた思いなどを又吉さんに聞いた。

「小説でもお笑いでも面白い場所を作りたい」と語る

 「劇場」は無名の劇団で戯曲と演出を担当している「僕(永田)」を主人公とする長編小説。女優を目指して上京してきた「沙希」に街中で声をかけて知り合い、恋人となった彼女の部屋で暮らし始める。

 「演劇はもともと好きな表現ジャンル。ほかの設定も考えましたが、小説全体を考えると、演劇がぴったりだと思いました。東京に出て何か夢を抱いている人を思い浮かべたとき、書きたいと思ったのは劇作家でした。お芝居を作っている人たちが、どんな風景を見ているのか考えるのは楽しかった。(作中劇のような形で)小説に登場する演劇は若い頃にやって失敗したコントなどが基になっています」

 「僕は結婚もしてないし、恋愛はよく分かっていない。すごく難しいものやなと思います。基本的に人は好きですし、もちろん女性を好きになることはある。いろいろな人に話を聞いても、人間と人間が出会って関係を深めていくやり方はバラバラじゃないですか。そういうのも含めて面白い。性的な場面を描写する方法もあるとは思いますが、ああいう(直接は描写しないという)形になった。恥ずかしかったから書かなかったわけではありません」

■感覚のズレ、生きづらさに

 「劇場」で自意識過剰の「僕」は理想と現実のギャップに苦しみ、嫉妬もあって周囲とあつれきを起こす。自己中心主義のダメ男を優しく受け止めていた「沙希」だったが、2人の関係は次第に変調をきたしていく。

 「2人は現代的な感覚とは違っているところが、生きづらさを感じる原因ではないですか。ただ、正しいかどうかは別にして、30年前、40年前だったら(自己本位の男性と支える女性という関係は)あったと思います。そうした生き方をしている人は(少なくなったが)今も確かにいる。だから意識して古風な女性を書こうと思ったわけではありません」

 「(愛読している)太宰治にはいろいろな短編があります。『ヴィヨンの妻』ではわりと女性が男性を支えるが、『きりぎりす』では女性が反撃しているところがある。男性がこうで女性がこうでという設定から入るというより、男女の日常の暮らしを描いていくなかで、コンプレックスなどで男性が示すわがままな部分や自己中心的な部分に、女性がどう対応するかを描いている。太宰作品の女性に関して、男性に都合良く描かれているといわれることもありますが、そういわれて傷つくのは当の女性だと思います。もっとも、僕が描くとき、太宰がああ書いているから自分もこうしようという意識はありません」

 「コントを作るときでも、むちゃくちゃヘンな人がいて、それをまっとうな人が問いただすというやり方より、ヘンな人に一見まともそうだが、実はヘンな人が関わっていくというやり方の方が面白い。前作は恋愛小説ではないですが、先輩・後輩という関係性の中から見えてきたものがありました」

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