初めての海外スマホ 期間と利用頻度で3つの選択肢
現在、スマートフォン(スマホ)は、海外旅行に必携のアイテムとなっている。スマホがあると旅行先での情報収集に役立つからだ。一方、日本国内で使っているスマホを海外で使う際に注意点もある。旅行中、国際ローミングでスマホを利用した場合、その利用期間や頻度によって、その料金が高額になることがあるのだ。
そこで、今回は「海外旅行でスマホを利用するのは初めて」という人に、海外でスマホを使うにあたっての基本を紹介する。なぜ海外でスマホを使うのか、使うにはどんな準備が必要なのか。具体例として人気のハワイ旅行を例にとりながら解説していこう。
スマホが使えるか使えないかで海外の安心感は桁違い
これまでの海外旅行で、次のような体験をしたことはないだろうか?
「ガイドブックで紹介されている飲食店を訪れてみたら、そのお店が存在しなかった」
つまり、ガイドブックの情報が古く、実際にその店を訪れた時は、すでにそのお店が廃業してしまっている、という状況である。
こんな時にスマホが役立つ。現地で出かける前にお店の最新情報を手早く確認できるからだ。例えば、クチコミ共有サービスYelpのアプリを利用すると、「ちゃんと営業しているか」も含めて、旅行先のお店の最新情報が簡単に確認できる。無駄足を踏まずに済むわけだ。
海外旅行先でスマホを使えると、慣れない場所で道に迷ったときも安心できる。地図アプリで現在地を確認できるからだ。
スマホは旅行先での家族間のコミュニケーション手段としても役立つ。例えば、旅行先の治安面の不安から、家族をホテルの部屋に残して、父親だけが何か買い出しに行く、というシチュエーションは意外とある。そのようなときに、「ほかに何かいる?」のような連絡をスマホのチャットアプリを使って取り合うことができる(ホテルは客室でWi-Fiが利用できる場合が多い)。
以上で述べたスマホの使い方は、実は普段の日本での日常生活で行っている当たり前の使い方だ。つまり、海外旅行中にスマホが使えないと、日本で当たり前にできていたことができなくなる。いつものようにスマホが使えない状況を体験してみると、それがいかに不便か、自分たちがどれだけスマホに頼っているかを実感するだろう。
海外でスマホを使う場合の選択肢は3つ
では、海外でスマホを使うためにはどうしたらいいのか。一般的には次の3つの選択肢がある。
2. 「モバイルルーター」をレンタルする
3. 「現地プリペイドSIM」(以下、現地SIM)を購入する
国際ローミングは、日本のキャリアのサービスを利用して、いつも使っているスマホをそのまま海外で使えるようにする方法だ。海外でスマホを使う方法としては一番手軽な手段となる(国際ローミングに関しては渡航先や機種によって使えない場合もあるので、事前にキャリアのサイトを確認したい)。たとえばNTTドコモの国際ローミングサービス「海外パケ・ホーダイ」は1日2980円(20万パケットまでなら1980円)。日本近隣のアジア圏に2泊程度で旅行するならば、気軽に使うことができる。ただし、旅行期間や使用頻度によっては、その利用料はそれなりに高額になる。
選択肢2は、旅行先で利用できるWi-Fiルーターをレンタルする方法である。スマホからは、そのWi-Fiルーターに接続することで、データ通信が行えるようになる。この方法では、その利用料が国際ローミングと比べお得になることが多い。たとえば海外用Wi-Fiルーターのレンタルを行う「グローバルWi-Fi」の場合、ハワイで7日間というプランを選ぶと6790円だった(4月24日サイトで確認。利用プランは4G-LTE、補償パックには加入せず)。Wi-Fiに接続するだけなので操作も簡単だ。一方で、この方法で使えるのは、あくまでデータ通信のみとなる。
3つ目の現地SIMを利用する場合は、まずSIMロックがされていないスマホ(以下、SIMフリースマホ)での使用が前提となる。そのスマホに、旅行先で旅行者でも契約できる現地のプリペイドSIMを差し込んで利用する。この方法では、SIMフリースマホと現地SIMを準備する必要があり、3つの方法の中では、一番手間がかかる。
しかし、この3つの中で、筆者がお薦めしたいのは、「一番手間のかかる」と述べた、現地SIMを利用する方法だ。
手間がかかるけど日本と同じ感覚で使える現地SIM
現地SIMを薦める理由は、この方法を使うと、料金やデータ通信量に関して、「日本と同じ感覚で使える」安心感があるからだ。
大抵の場合、現地SIMは、「この条件ならいくら」という固定料金のプランが利用できる。つまり、現地SIMを利用した場合、「最初に払った以上のお金はかからない」という安心感がある。
この安心感は、国際ローミングと比較すると、大きなメリットとなる。というのも、国際ローミングを利用した場合、旅行期間が長引けば長引くほど、その利用料が増えてしまうからだ。
現地SIMは価格も安い。日本で購入できる「ZIP SIM」という現地SIMは通話とSMS、500MBの通信ができる7日プランが2350円となっている(価格はAmazon、4月20日調べ)。これはモバイルルーターとくらべてもさらに安い。
モバイルルーターのように、スマホ以外の機器を持ち歩かなくてもすむ。別の機器を持ち歩くということは落として壊す、盗難に遭うなどの危険が伴う。そこでモバイルルーターのレンタルでは、レンタル料とは別に、「1日○○○円」という補償料が必要になることもある。これは、旅行中の盗難や故障のためにかける保険のようなものだが、契約をした場合、旅行期間に比例して利用料が高くなる。
ただし現地SIMを使う場合、事前に確認すべきことがある。それは自分のスマホの機種が対応する電波の周波数帯である。その周波数帯によって、現地SIMが使えない可能性があるからだ。日本にいる段階でしっかりと調べておきたい。
モバイルルーターを使うメリットは、こうした心配がいらないということだ。現地SIMを利用するためには、SIMフリースマホを準備したり、複数ある現地SIM業者から絞り込んだり、SIMを交換しスマホの設定を変更したりと、利用するためのハードルが高い。しかしモバイルルーターなら日本で使っているスマホをそのまま使うことができる。
そのため、次の条件を満たす場合は、モバイルルーターを借りるのもいいだろう。
・音声通話はできなくても構わない
・とりあえず外でネットが使えれば十分
つまり、手間はかかっても日本と同じようにスマホを使いたい人は現地SIM、できることは限られても手軽に使い始めたい人はモバイルルーターを選択するのがいいことになる。家族旅行なら自分のスマホだけSIMフリーにして現地SIMを使い、家族にはSIMロック解除をしなくても使えるモバイルルーターを渡すという方法もあるだろう。こうすれば家族が分かれて行動してもメールやLINEなどで連絡がとれる。
現地SIMを選ぶなら「通話とSMS付き」を
ちなみに現地SIMを使う場合、「データ通信のみ」というプランが用意されていることがある。この場合、現地SIMを使うなら「通話とSMS付き」のプランを選びたい。
「海外に知り合いはいないし、日本でもほとんど音声通話を使わないから」「仲間の間での音声通話はLINEで十分」という人でも、海外の場合、電話会社の音声通話が使えたほうが安心だからだ。
以前、ハワイで借りたレンタカーで交通事故を起こしたことがある。そのとき、911(米国の緊急通報用電話番号)やレンタカー会社に連絡するのに、音声通話が役に立った。
緊急時ではなくても、旅行会社のハワイ現地ツアーデスクや、クレジットカード会社が提供するラウンジなどの問い合わせ窓口に問い合わせできるのも大きなメリットだろう。ツアーデスクに電話ができれば、日本語が通じないレストラン予約の代行を気軽に依頼することができる。
電話番号さえわかればショートメールが送れるSMSも、使えると便利な場面が多い。たとえばガイド付きのオプショナルツアーを利用する場合、ガイドの携帯電話番号を事前に聞いておけば、前日からSMSで連絡が取れる。「明日お世話になる◯◯です。明日ホテルのロビーに着いたらこの番号に連絡ください」のようなメッセージを事前に送ることができるのだ。
まずはSIMロックを解除するところから
では、ここから、現地SIMを使うための手順を具体的に紹介しよう。今回は代表的な観光地であるハワイ旅行を例にあげるが、注意すべきことは他の地域でも共通する。
現地SIMを利用するためには、次の2つの準備が必要になる。
2. 現地SIMを手に入れる
SIMフリースマホの準備方法だが、普段使っているスマホのSIMロックを解除する方法と、SIMフリースマホを買う方法の2つがある。2015年5月以降に発売されたスマホの場合、購入から半年以上たてばSIMロックを解除してSIMフリースマホにすることができる(正確な条件は自分のキャリアのサイトを確認してほしい)。これ以前に購入したスマホは原則としてSIMロックを解除できない。SIMロックを解除できない人は、新たにSIMフリースマホを準備することになる。
日本で買える現地SIMもある
SIMフリースマホが用意できたら、次は現地SIMを手に入れる。この場合、前に書いた通り、自分のスマホで使える現地SIMかどうかの確認を忘れずにしたい。
その上で考える必要があるのは「どこで現地SIMを手に入れるか」。というのも、日本でも入手可能な米国のプリペイドSIMがあるからだ。
例えばハワイの場合、米国のキャリアT-MobileのMVNOであるZIP SIMは、公式サイトで購入すれば日本の住所に向けて発送してもらえる。日本のアマゾンで購入することもできる。
もし可能なら、初めて現地SIMを使う場合は日本で入手することをお勧めする。現地でSIMを探す手間を省けるからだ。また日本で入手しておけばホノルル空港に到着してすぐにスマホを使えるようになる。
現地でSIMを契約すれば、設定までしてもらえる
もちろんSIMフリースマホがあれば、現地に行ってからプリペイドSIMを契約することもできる。
ワイキキから近いアラモアナセンターには、AT&Tの直営ショップがあり、日本人旅行者でもGoPhoneというプリペイドSIMを契約できる。事前に希望するプランなどを調べておけば、それほど難しい英語は必要としない。対面で契約できるため安心感があるし、「自分が使ったデータ通信量の調べ方がわからない」と困った場合も、ショップに行けば有人のサポートを受けられる。
また現地でプリペイドSIMカードをスマホに差し込んで利用し始めるには、原則としてSIMカードをアクティベーションする必要がある。しかし直営店ならアクティベーションもその店のスタッフが行ってくれる。
スマホにプリペイドSIMを差し込み、アクティベーションを済ませたら、最後にAPNの設定を行う。APNは「Access Point Name」の略でデータ通信をするために必要な設定だ。大手キャリアのスマホにはあらかじめ設定されているが、格安SIMや海外のプリペイドSIMを使う場合には設定する必要がある。手動でAPNを設定しないとうまくデータ通信ができない場合もあるので、利用するプリペイドSIMのAPN設定は、日本にいる間に事前に調べておいた方がよい。
以上の作業が終われば、日本と同じようにスマホを利用できるようになっているはずだ。
今回は、ハワイ旅行を例としたため、筆者がハワイで最も使い勝手がいいと考えている現地SIMを使う方法にフォーカスした。だが、実際には、どの方法も一長一短がある。長所と短所を把握して、旅行の期間や利用頻度に応じて適切な方法を選ぶのがいいだろう。
(文 菅原英治)
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