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住宅ローン金利が上がる? 日銀の次の一手、その条件 物価上昇、2%達成前でも可能性

2017/4/20

日銀本館

 住宅ローンの借り手にとって気になるのが今後の金利動向だろう。その行方を左右するのが、日銀の金融政策だ。足元で物価が上がり始めたことを受けて、専門家の間では日銀が次に政策を変更するときは「緩和」ではなく「引き締め」との見方が増えてきた。では、どんな条件が満たされれば日銀は動くのだろうか。頭の体操をしてみた。

 銀行は住宅ローンの金利をどう決めているのか。借りた後、全期間あるいは一定期間同じ水準が続く固定型の適用金利は、長期金利を参考とする。半年ごとに水準を見直す変動型は、短期金利を目安とする(グラフA参照)。

 どちらにも大きな影響を及ぼすのが日銀が現在とる「長短金利操作政策」。今の誘導水準は長期金利(10年物国債利回り)がゼロ%程度、短期金利(日銀当座預金の一部金利)はマイナス0.1%になっている。

■引き締め派多く

 「次の一手は引き締め」。民間エコノミストに日銀の政策変更の行方を聞いたESPフォーキャスト調査(3月)で、そう予想する回答者数が、「緩和」や「中立」より多くなった。

 4月公表分ではこの傾向が強まり、引き締め派が前月より3人増えて19人と、回答者全体の半数に達した。反対に、緩和派は3人減って6人となった。専門家は、日銀がまず長期金利の誘導水準の引き上げ(ゼロ金利解除)にいずれ着手すると考え始めている。

 理由は原油価格の上昇などから物価に上げ圧力がかかり始めたこと。消費者物価上昇率(生鮮食品を除くコア)は1月にプラスに転じ、2月にプラス幅は0.2%に広がった。「秋頃に1%程度まで拡大する」(第一生命経済研究所の新家義貴氏)との予想が聞かれる。米長期金利の上昇が日本の金利に上昇圧力を加えるとの見方も多い。

 仮に利上げがあるとすれば、いつごろか。4月のESP調査で、次の政策変更を引き締めと答えた人のうち、時期を年内としたのは約2割。残りは、2018年3月以降とした。日銀も「2%の物価安定目標にはなお距離がある」(黒田東彦総裁)などとして早期利上げに否定的だ。

 そもそも、日銀はどんな条件が満たされれば利上げするのか。時々聞くのは、2%超の物価上昇率が安定的に実現するまで行動を起こさないとの見方。これが正しいなら、利上げは長期間ないとの見方が説得力を持ちそうだ。

 

なぜならグラフBの通り「安定的な2%超」が実現した時期はバブル期に遡らないとなく、ハードルが高いからだ。1997年度と2014年度にも2%超となったが、消費増税による1年限りのものだった。

 だが、以上の見方は誤解だ。確かに日銀は昨年9月、「安定的な物価2%超」の実現までマネタリーベース(日銀が国債などを買う見返りに供給した資金の残高)の拡大方針を続けると約束した。しかし、利上げをしないと約束したわけではない(図C)。

 実は日銀は「2%超」どころか「2%」が実現していなくても利上げはできるようになっている。日銀が現状の長短金利の水準を維持しているのは、「物価2%」の安定的な持続を将来実現するように物価にモメンタム(勢い)を付けるため。利上げしても2%への物価の勢いが崩れないと判断するなら、動く可能性がある(図C)。足元で2%が実現しているかどうかは必ずしも関係ない。

 利上げまでにはまだ時間がかかりそうだ。2%に向けた物価の勢いを強めるためには、人々の物価観が強気化する必要がある。日銀によれば、先行きの物価動向に関する予想(予想物価上昇率)は「弱含みの局面が続いている」。

 日銀短観(企業短期経済観測調査)で聞く経営者の予想物価上昇率も、昨年12月調査で拡大に転じたものの、今年3月には横ばいにとどまった。これでは、利上げに耐えられるだけの物価の勢いはつきにくい。

 日銀は経済・物価情勢について「上振れるより下振れるリスクの方が大きい」と見ている。北朝鮮情勢など海外に様々な不確実な要素があるためで、これが人々の物価観に影響を及ぼしているようにもみえる。

 状況が改善しないと、今の超低金利政策が長引く可能性もある。仮にそうなるなら、借入期間があまり長くない人などにとっては、低水準で推移している変動金利で住宅ローンを借り続けるのが正しい選択肢になることもあり得る。

■固定でリスク管理

 ただ、最近の物価情勢が方向としては上向きになっているのも事実。注意すべきは、固定型のローン金利は既に上がり始めている点だ(グラフA)。長期金利は将来の経済情勢に先行して動く。日銀も長期金利の利上げから着手するとの見方が出ており、固定金利が変動金利より先に上がっても不思議はない。

 金利水準が低い変動型で借り続けた場合、将来借り換える時に、固定金利が今よりもさらに上がっているかもしれない。固定金利は変動金利より高めだが、今のうちに固定に借り換えて将来の金利上昇リスクを回避した方が賢明だったということもあり得るわけだ。

 変動と固定のどちらの金利がトクか、現時点で確実なことは誰にもわからない。ただ、上述した通り、日銀は物価2%が達成されるまで利上げしないと約束しているわけではない。経済・物価情勢や日銀の情報発信に注意を払いながら、先行きの金利動向について判断していく必要がある。

(編集委員 清水功哉)

[日本経済新聞朝刊2017年4月15日付]

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