「バカか、お前は」 売れないメゾンカイザーを叱咤ブーランジェリーエリックカイザージャポン社長 木村周一郎氏(下)

「いつも一生懸命に献立を考えて夕飯を作っても、無言で食べられてしまう。それがすごく嫌だったの。でも、昨夜は家族が『どうしたの、こんなにしゃれちゃって』と驚いてくれた。だから、今日も何かおもしろいもの、ない?」

パンを通じて人の喜ぶ顔が見たい

じつを言いますと、僕はパンを売ることがパン屋さんの使命だとは思っていません。職人、接客、お客様、それぞれの喜びが交錯する場がパン屋であってほしいし、それを実現するのがエリックカイザージャポンという会社でありたい。

「フランスの食文化にあるパンと日本の食習慣・食文化をマリアージュするのが究極の使命」

たとえば、奥さんを亡くした友人が、お子さんの夏休みの自由研究をどうするか、で困っていたことがありました。そこで、僕が1日、お子さんを預かって一緒にパンを作ることにしたんです。すごく楽しかったようで、「また作りたい」という反応があった。翌年もその翌年も続いたので「だったら、ほかの家族も呼んでみんなで一緒にパンを作ろう」と、不定期でパン教室を始めました。

ご自分でパンを焼くことが趣味の方がいたら、その方の質問にお答えするのもパン屋の使命だと思っています。僕はなにも、日本人にフランスパンだけを食べてほしいとは思いません。パンと食材を組み合わせ、どうすれば日本の食習慣と食文化をもっと多様にしていけるのか、を考えている。

フランスの食文化にあるパンと日本の食習慣・食文化をマリアージュするのが、僕らの究極の使命。そういう意味では、西洋のパンと日本のあんを組み合わせて日本にパンを定着させた祖先と、じつは同じことをしようとしているのかもしれません。

この商売を立ち上げて16年、おかげさまで年商40億円を突破する規模に成長しました。これはパン業界ではすごいことだと言われますが、一歩外へ出たら「16年でまだ40億円なの?」と言われてしまいます。そう考えると、パン屋さんというのは、つくづく商売が下手だなと思います。

そんな現状に、なんとか一石を投じたい。もちろん、技術・品質は落としたくありません。アラフィフですから、次につながる人材育成についても考えています。そのためにも店舗を増やし、人が成長していける組織にしていくのは大事だと思います。

※前回掲載「あんパン木村屋の御曹司が、メゾンカイザー開いたワケ」では、天才パン職人、エリック・カイザー氏と出会い、日本でフランスパン専門店を開くまでを聞きました。

木村周一郎
ブーランジェリーエリックカイザージャポン社長。1969年東京生まれ。慶応義塾大学法学部卒。91年、千代田生命保険相互会社入社。97年に退社し、米国立製パン研究所(AIB)でパン作りを学ぶ。ニューヨークでの修業を経てパリのメゾンカイザーへ。2000年、帰国してエリックカイザージャポンを設立。01年、国内1号店の高輪本店をオープン。

(ライター 曲沼美恵)

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