「バカか、お前は」 売れないメゾンカイザーを叱咤ブーランジェリーエリックカイザージャポン社長 木村周一郎氏(下)

「従業員というのはお金をもらって働いている人たちだ。それが、お金を出している側の君と同じ意識で仕事ができるわけがないだろう。まずは、そのことを思い知りなさい」と。

「本場のバゲットが全然売れない」とこぼすと、「君はどういうお客さんを相手に商売をしようとしているのか?」と聞かれました。それから二人に、こんなことを矢継ぎ早に言われました。

「本場のバゲットが全然売れない」とこぼしていた

「本場のバゲットならば、欧米から日本に来たお客さんは絶対にノスタルジーを感じてくれるはずだ」「現地に駐在していたことのある日本人も懐かしく感じてくれる」「旅行でパリを訪れたことがある人だってそう」「そういう生活に憧れるお客さんだっているだろう」と。

スターバックスは、コーヒーを飲むこととたばこを吸うことを分けただけで、それまで可視化されていなかった市場を創造した。「だから、君がこれからやろうとしていることも、じつはニッチじゃないのかもしれないぞ」と、そう言われたのです。

お客さんが教えてくれたヒント

従業員と自分は違う人間だと思えば、僕の考えていることを察しろ、と思うこともなくなる。すると、従業員との関係も良くなっていきました。バゲットを売ることに関しては、お客さんからこんなヒントもちょうだいしました。

ある日、店内をざっと眺めたお客様が何も買わずにお帰りになった。店の外で「何かお探しだったのですか?」と声をかけると、「何かおもしろいものがあるかと思って店に入ったけれれど、何もなかった」と言われました。

それでも、何か求めて店にいらしたことに違いはありません。生命保険会社で営業をしていた時、僕は「断られてからが本当の勝負だ」と教わりましたから、めげずに、こう聞き返したんです。「ちなみに今、スーパーのレジ袋を提げていらっしゃいますが、中身はなんですか。よろしければ、今晩のお献立を教えてください」

お客様が考えていた献立は、白身の魚のお刺し身と肉じゃが、それにサラダと味噌汁でした。僕はとっさに、「お刺し身にオリーブオイルと塩をかけたらカルパッチョになります。肉じゃがも、スープで煮たらポトフになりますよ」と勧め、半ば強引にパンを買っていただいた。あれだけ強引に勧めたから、もう二度と店にはいらっしゃらないだろうと思っていたら、翌日、そのお客様がとてもうれしそうな顔で店にいらして、こんなことを教えてくれました。

ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧