4Kテレビ放送 18年開始も難問山積み、本当に必要?西田宗千佳のデジタル未来図

規格面でいえば、「録画」の扱いもまだ決まっていない。一部の放送局は、4K以上では、番組を選び、特定番組の録画を禁止する技術を導入する意向を持っている。この意見には批判も多く、動向がまだ見えない。現在以上に録画に強い制限がかかると、テレビ視聴そのものにブレーキがかかる可能性が出てくる。

放送一辺倒でなく「価値にあったインフラ選択」を求む

率直にいって、4K放送は難題が多い。ここまでの難題をクリアしてまで「放送」の受信にこだわる人がどのくらいいるのか、と感じる部分もある。20年に向けて、放送業界は4K/8K放送を推すだろうが、行く末はそう明るいものではない。各種課題をできるだけ速やかにクリアし、消費者に分かりやすいものにする必要がある。

特に、アンテナ整備の面については深刻だ。すでに述べたように、衛星放送はケーブルテレビや光回線での再配信も利用できる。インフラの状況によってはこちらへ変更した方が楽な場合もある。そうした選択肢も含め、様々な方法で視聴する手段を検討できるよう、周知と準備を進める必要がある。

4K放送は、本来、単に映像の解像度が上がる以上の価値をもっている。現在赤・青・緑各色8ビットで表現されている色を各色10ビットにすることで色域をあげ、HDRを採用することでダイナミックレンジをあげることで、映像の表現力は劇的に増す。描画コマ数を毎秒30コマから120コマに上げることで、スポーツなどではよりなめらかな動きを再現できる。データ放送などもよりリッチなものにできる。8K解像度であれば、今までよりも精細なだけでなく、立体感も得られるようになる。

とはいえ、こうした「質的な向上」は、すべての人が求めるものではない。特に8Kについては85型以上で見るのが最適、とされており、一般家庭に入れる意味があるのか、はなはだ疑問である。

こうした技術を使い、ネット配信などとも歩調を合わせ、「必要な人に必要な価値を届ける」ことが、今必要とされている技術ではないだろうか。

海外においては、4Kは放送よりもネット配信先行で進んでいる。HDRの導入も同様だ。それは、「高画質を求める人は、高速なネット回線と高品質のテレビをもっている人であり、付加価値を求める人に、速やかに付加価値を提供する」という合理的な判断が存在するからである。

放送には、国民全員が同時に見てもインフラに負担がかからない、という「同時性」の良さがある。一方ネット配信には、付加価値を求める人に付加価値を素早く届けられる、という良さがある。その両者をうまく使い、国民に大きな負担をかけることなく展開してほしいと思う。今のままだと、「あまり使われないサービスに大きなコストを投入する」形になりかねない。

西田宗千佳
フリージャーナリスト。1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。
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