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白河桃子 すごい働き方革命

キリン「なりきりママ」、次はパパ 介護にも生かせる キリン「なりキリンママ」プロジェクト(後編)

2017/4/21

■「なりキリンママ」は、介護をする社員にも必要なこと

――今回の試みは、子育て社員に限らず、介護をする社員にも必要な取り組みではないでしょうか。仮に子どもをもうけないという選択をしたとしても、いずれは多くが介護の問題に直面します。将来的に介護をする社員にとって、今回のような試みは大事なシミュレーションの機会となるはずです。

 特に男性比率の高い会社は、すでに介護休暇を取得する方が多い傾向があります。例えば大手の建設株式会社では、介護休職をする男性の数が、育休を取る女性を上回っているそうです。

 しかも、介護は育児よりも早く帰らねばなりません。介護サービスは午後4時半には終了し、その後は自費でヘルパーさんに依頼したとしても、会社員の収入でやりくりするとなると1日2時間のサービスが限度。延長保育はあっても延長介護はないので。そうなりますと、午後6時台には会社を出なければなりません。

加藤 実は、「なりキリンママ」プロジェクトには、介護しながら働き続ける環境づくりをするという狙いもあります。

 子育ても介護も、突然やって来る可能性があります。そういった時、これまでは、働き続けるか、会社を辞めるかという極端な選択肢しかありませんでした。そこで、この実験を通して事前にシミュレーションをすれば、「両立する」という新しい選択肢を加えながら考える時間をつくることができるのではないでしょうか。

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あとがき:このプログラムの優れたところは、なりキリンママに関わるすべてのステークホルダー、上司、同僚、顧客、業界全体への波及効果があることです。営業女子のまきこみ力は感服しました。

 働き方はなぜ変えなければならないのか? なぜ生産性をあげなければならないのか? いくら「べき論」で説いても、頭では納得しても体はついていかない。長年の働き方、こうあるべきという考えが染み付いているからです。働き方改革はまずアクションから。アクションすることで、本人たちも「働き方は変えられる」と実感し、そんな彼女たちを見て上司や顧客たちも変わる。

 労働時間をただ削減するのではなく、「時間の制限」という今まで考えなかったことに着目することで、さまざまな生産性向上へのTIPSが得られる。それにとどまらず、会社のほうも「なぜ生産性高く成果を出しても、お給料が減るのか」という疑問に答えてくれるといいですね。働き方改革はただの生産性向上ではない。人材が豊富にいた頃の会社のシステム、ビジネスモデルが変化を迫られているという大きな変革の流れなのです。

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。「一億総活躍国民会議」委員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「婚活時代」(山田昌弘共著)、「妊活バイブル」(講談社新書)、「産むと働くの教科書」(講談社)、「専業主婦になりたい女たち」(ポプラ新書)、「進化する男子アイドル」(ヨシモトブックス)など。「仕事、出産、結婚、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。

(ライター 森脇早絵)

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