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ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測しているリブロ汐留シオサイト店だ。この店の定番の売れ筋、企画やマーケティングにからむスキル系の本は相変わらずよく売れているが、今回目立った売れ行きを見せていたのは、近くに本社がある電通に関する本だった。

等身大の電通像を描く

その本は中川淳一郎『電通と博報堂は何をしているのか』(星海社新書)。PRプランナーやネットニュース編集者として活動する著者は博報堂で新人から4年ほど働いた経験があり、その後も電通、博報堂をはじめ広告代理店の社員や関係者との付き合いが深い。自身の体験や十数人の両社の現役社員への取材をもとに、「真実の会社案内であり、業界案内」として書いたのが本書だ。

五輪エンブレム騒動や長時間労働問題で世間から厳しい視線を向けられている広告代理店だが、その視線の背景には、タイトルにあるように「何をしているのか」わからないことがあると著者は見る。何をしているのかわからないのに、世間を牛耳っているように見えるし、けっこうもうけている。その反映で厳しいバッシングが起きる。だが、業界のインサイダーともいえる著者の実感からすると、広告代理店の社員は「単なるモーレツサラリーマン・社畜」にすぎない。顧客第一主義のもと、クライアントからの様々な要求に応える。あるいは応える姿勢を見せる。ここから長時間労働体質が生まれてくる。そんな実態をいろいろなエピソードを組み合わせて描いていく。

総合ランキングトップに

『ネットのバカ』『ウェブはバカと暇人のもの』などの過激なネット論で知られる著者だけに言い方はきつめだが、働いているのは「ごく普通の人々」ということがたびたび強調され、業界へのシンパシーが感じられる。ネットなどにあふれる電通陰謀論などに振り回されずに等身大の姿を知ってほしいという思いが本書に結実したようだ。新書版なのでビジネス書のランキングからは外れているが、総合ランキングで売れ筋第1位。「やはりお膝元なのでよく売れている」と店長の三浦健さんは話す。

電通本はもう一冊、作家の大下英治氏による『電通の深層』(イースト・プレス)も3月半ばに刊行されていて、メインの平台で隣同士に並べている。著者の大下氏は週刊誌記者を振り出しにノンフィクション中心の作家として活躍しているが、最初の本が『小説電通』だったという。新著はこの『小説電通』を第2部に収め、第1部に新たに取材した電通論を収める。こちらは電通のOBや外部の関係者の取材から今の電通の企業体質や業界への影響力に迫っていく内容で、黒い装丁も含めて前者の本とは対極的なアプローチだ。

マーケティングや語学、「学び本」上位に

それでは、先週のベスト5を見ていこう。

(1)AI経営で会社は甦る冨山和彦著(文芸春秋)
(2)デジタルマーケティング 成功に導く10の定石電通デジタル著(徳間書店)
(3)まんがでわかる伝え方が9割佐々木圭一著(ダイヤモンド社)
(4)電通の深層大下英治著(イースト・プレス)
(5)なぜ「戦略」で差がつくのか。音部大輔著(宣伝会議)

(リブロ汐留シオサイト店、2017年4月3日~4月9日)

1位は経営共創基盤の冨山和彦氏による経営論。人工知能(AI)の発達で稼ぐ仕組みや産業構造が変わるとして、その中での勝てる経営を論じる。2位はデジタルマーケティングの解説書。2月の発売以来、この店ではずっと売れ行きがいい。3位は2月の回で紹介した1冊。こちらもロングセラーになっている。4位に『電通の深層』。5位はマーケティングのプロによるマーケティングの戦略論で、汐留の書店らしい売れ筋だ。ビジネス書には分類していないが、総合ランキングの2位にはTEX加藤『TOEIC L & R TEST 出る単特急 金のフレーズ』(朝日新聞出版)が入った。「4月に入って語学関連本の動きがいい」(三浦さん)と言い、経営やマーケティング理論、英語と学びの本がこの季節の売れ筋のようだ。

(水柿武志)

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