きもの文化と日本

昔の花火大会、ゆかた姿はなかった 「制服化」のなぜ 伊藤元重 矢嶋孝敏 共著「きもの文化と日本」(1)

2017/6/28

「成人式は振袖」が当たり前になった

矢嶋 そう思います。メディアに出てくる映像や写真をチェックしてもそうだし、われわれ小売店の実感としても割合は上がってる。100パーセントに近いというのは、過去に例がないぐらい高い。

伊藤 どうしてそこまで、誰も彼もが着る感じになったんでしょう。成人式イコール振袖って記号化されてるんですかね?

矢嶋 振袖が成人式の制服になっちゃってる。記号化ですね。

伊藤 行動経済学では、たとえば「あなたはどうして省エネ・節電するんですか?」という質問で、選択肢を4つ用意するんですよ。1番は省エネすると光熱費が下がって得だと。経済的動機ですね。2番は省エネするのが道徳的に正しいと。モラル的動機。3番は省エネすれば地球温暖化を防げると。社会的動機。では4番は?

矢嶋 みんながやってるから(笑)。

伊藤 正解(笑)。で、日本の場合、4番の「みんながやってるから」という回答が圧倒的に多いんです。

矢嶋 振袖もゆかたもそうだと思う。あれは一種の制服なんですよ。

伊藤 そういえば大学の卒業式でも、きものに袴(はかま)姿の女子学生が増えたなあ。最初に見たときは、すごく奇異な感じがした。もう慣れちゃいましたけどね。

矢嶋 それは学習院だからじゃなくて?

伊藤 いや、東大の卒業式でも同じです。

矢嶋 あれなんかは完全に、大正時代の女学生の格好ですよ。誰が仕掛けたのかわからないけど、いつの間にか大学の卒業式でみんな着るようになった。そういう意味で、きものに袴も卒業式の制服といえる。

■ゆかたの人はいなかった

伊藤 振袖の仰々(ぎょうぎょう)しさと比べると、ゆかたはシンプルですよね。ただ、ゆかたって、けっこう昔から花火大会で着られてませんか?

矢嶋 いや、そうでもないんです。僕は新宿で生まれ、小石川で育った。母の実家が浅草だったから、隅田川花火大会は子供の頃からよく行っていたの。だけど昭和30年代だと、ゆかた姿はほとんど見かけなかった。

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