きもの文化と日本

きものを世界遺産に?「死んだ文化」では生き残れない 伊藤元重 矢嶋孝敏 共著「きもの文化と日本」(2)

2017/7/12

伊藤 どうして大衆文化でないと生き残れないんですか?

矢嶋 ただ見るものになって、自分が参加しなくなるからね。アメリカンフットボールが日本で普及しないのは、あれは見るものであって、やるものじゃないからでしょう。自分でやらないから、裾野が広がっていかないわけ。それに比べて水泳は、オリンピックで見る一方、自分もプールに通う。ピンポンだってそう。

伊藤 ピアノも同じですよね。プロの演奏を聴く一方で、自分でも弾いたりする。すると、ピアノ教室という新しいビジネスも生まれてくる。関連したマーケットが広がっていくわけですね。

矢嶋 水泳は「やるもの」だから、水着もゴーグルもいろいろ新商品が出てくるし、スイミングスクールもたくさんできる。筋肉を鍛えるためのマシンだって発売される。「見る文化」と「やる文化」では、市場規模がケタ違いなんです。

伊藤 じゃあ、「きものを世界遺産に」なんて風潮に対しては……。

矢嶋 抵抗があります。遺産では、死んだ文化だからね。和食もそうですが、生きた文化のまま、産業化することで生き残る道を探さないと。

矢嶋孝敏氏(左)と伊藤元重氏
伊藤元重
東京大学名誉教授、学習院大学国際社会科学部教授。1951年静岡県生まれ。東大経済学部卒業。ロチェスター大学ph.d。専門は国際経済学。政府の経済財政諮問会議民間議員などを兼務。
矢嶋孝敏
やまと会長。1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政治経済学部卒業。88年きもの小売「やまと」の社長に就任、2010年より現職。17年に創業100周年を迎える同社できもの改革に取り組む。

第1回「昔の花火大会、ゆかた姿はなかった 『制服化』のなぜ」では、きもの産業の現状と課題について語り合ってもらいました。第3回「『きもの』から『KIMONO』へ 活路はメンズにあり 」とあわせてお読みください。

「きもの文化と日本」記事一覧

きもの文化と日本 (日経プレミアシリーズ)

著者 : 矢嶋 孝敏, 伊藤 元重
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 940円 (税込み)

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