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介護に備える

離れた老親の見守り方 達人・中村寿美子さんに聞く 帰る度、家の異変をチェックする

2017/4/12 日本経済新聞 夕刊

 進学や就職で親元を離れた子ども世代にとって、気がかりなのは実家で暮らす年老いた親のこと。独り暮らしなら、なおさらだ。離れた場所にいる老親をどう見守ったらいいのか。介護相談に乗ってきた介護コンサルタント、中村寿美子さんに聞いた。

 ◇   ◇

中村寿美子さん 有料老人ホーム・介護情報館館長。70歳。30代で夫の介護を経験し、カウンセリングを学ぶ。有料老人ホームに勤務後、1997年に都内で有料老人ホームや介護の相談に乗る窓口を開設。相談件数は2万を超える。

 ――親が元気なうちに最低限、やっておかなければいけないことは何ですか。

 「携帯電話などでいつでも連絡が取れるようにしておくことは当然ですが、体調を崩した時のために健康保険証や通院している医療機関の診察券のコピーをとっておきましょう。主治医の名前や服用する薬の内容を知っておくのも大事です」

 「倒れて意識を失う場合を考えて、通帳や実印など重要書類の保管場所を聞いておきましょう。親しい友人や近所の人、ふだん通う習い事などの連絡先も把握してください。入院や施設に入所した場合、姿を見せないのを心配する人がいるので、連絡先がわかれば知らせることができます」

 ――離れていると、無事に暮らしているか確かめるのが難しいのでは。

 「民間の見守りサービスを使う方法があります。親が電気ポットを使うと自動的に電子メールで子に知らせる象印マホービンの『みまもりほっとライン』や、一日中ガスを使わないと連絡がくる東京ガスの『みまも~る』などです」

 「ただ、救助してくれるわけではありません。心配なら警備会社の緊急通報サービスを利用するのも手です。センサーが人の動きを感知しない場合、スタッフが電話などで安否を確認し、緊急事態と判断すれば現場に急行します。費用はかかりますが、より安心感があります」

 ――実家に帰った時、気をつけるべき点は。

 「知らないうちに認知症が進むことがあります。帰ったら、それとなく家の中を観察してください。きれい好きだった親が片付けできていない場合は要注意。洗濯物や新聞が乱雑に置いてあったり、流しに食器が山積みになっていたりしたら疑いましょう。認知症の人はうまく段取りができず、家事や整理整頓ができなくなる傾向があります」

 「冷蔵庫の中をチェックしてください。賞味期限切れのものや同じ食品がたくさんあったら注意が必要。買ったことを忘れ食べないままでいたり、毎日好きな物を買い続けたりするからです。においにも気をつけましょう。場所や時間がわからなくなり、部屋の中で小便をする人やタンスの中に便を入れる人もいます」

 「たまに子どもと会うと、親はしゃきっとして認知症の症状が出ないことがあります。実家に帰ったら最低、1泊はして親の様子を見てください。もし、認知症の疑いがあると思ったら、早めに専門医に診せましょう。根治は難しいにせよ、投薬などで進行を遅らせることができます」

 ――もし、衰えが目立ってきたら、どう対処したらいいですか。

 「年をとると料理が面倒になり、コンビニ弁当などに頼ることがあります。カロリーは足りてもタンパク質やビタミンなど必要な栄養素は摂取しにくくなります。病気になったらすぐに回復せず、骨折しやすくなります。そんな時は配食サービスを使うといいでしょう。栄養のバランスを考えた食事を届けてくれます」

 「自活が難しくなったら、公的な介護サービスを利用しましょう。子が代理で役所に申請することができます。自治体によって内容が違うので調べてください。自治体は必ず介護のしおりや小冊子を出しています。ホームページで公開しているので、ダウンロードすれば入手できます」

 ――介護コンサルタントになったきっかけは。

 「30代で夫の両親の介護を経験した後、夫と自分の両親をおくりました。子育てしながらのダブルケアだったので、非常につらかったです。同じようにつらい思いをしている人の役に立てればと思い、自治体の社会人講座でカウンセリングや介護の勉強をして、セミナーの講師資格を取得しました」

 「現在、介護相談に乗るほか、施設入所を希望する人にふさわしい有料老人ホームを紹介しています。紹介業者の中には質の悪い施設を勧めるところもあります。本人や家族が悪徳業者の食い物にされないよう、これからも正しい情報を提供したいと思います」

[日本経済新聞夕刊2017年4月12日付]

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