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消耗品から「高級実用品」へ ボールペン、進化の秘密

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新しいシーズンがスタートする4月は、仕事道具を見直す絶好のタイミング。現在、仕事でどんな筆記具を使っているだろうか。書きやすさを重視して、プラスチック軸のボールペンを利用している人も多いのではないか。実は最近、これらの書きやすいインクを使いながら、金属製のボディーを持った高価格帯のボールペンが人気になっている。コンビニエンスストアで100円台で買えるイメージがあるボールペンが、なぜ高級品に進化したのか。長年、文房具をウオッチしてきた納富廉邦氏が解説する。

実用品ではなかった高級ボールペン

日本で「高級筆記具」というと、長い間、それは万年筆を指す言葉だった。

もちろん、ボールペンにしろシャープペンシルにしろ、100円から500円のものばかりではなく、数千円から数万円のものもあったのだが、その多くは贈答用の製品であり、あまり実用品とは捉えられていなかった。

その理由の一つは、ボールペンやシャープペンシルは消耗品だと考えられていたこと。また、ボールペンやシャープペンシルの高価なモデルは万年筆との組み合わせ用製品だと思われていたこともあげられる。

もちろん、モンブランやクロス、カランダッシュ、フィッシャーなどの海外筆記具メーカーのボールペンは、数万円のものも実用品として使われていた。だが、かつて万年筆が日本に初めて登場した頃、粗悪な国産コピー製品が出回った時期があり、その記憶が根強く残っていた筆記具市場では、海外製に比べ国産の筆記具は安いが性能は劣るというイメージが長く残っていた。それもあり贈答品としても海外製のボールペンの方が売れていたのだ。

リーマン・ショックで会社から支給がなくなり……

ところが、1990年代あたりから、国産のボールペンは大きな進化を遂げる。信じられないかもしれないが、それ以前のボールペンは試し書きしてみないとインクが出ない危険があるほど品質が安定していなかったのだが、この頃から全体の品質が向上していった。さらにゲルインクのボールペンの発売で、カラフルな色のインクが流行。パイロットの「ドクターグリップ」のような、「握りごこち」「疲れにくい」といった部分でのアピールをする製品も登場したのもこの時期だ。

21世紀に入っても国産ボールペンは進化し続ける。2006年には、油性ボールペンなのにスラスラ書ける低粘度油性インクを搭載した三菱鉛筆の「ジェットストリーム」が登場。翌年、パイロットが消せるボールペン「フリクションボール」を発売した。

そしてその直後に、リーマン・ショックが起こる。

不景気の影響で、ボールペンなどの文房具を会社から支給されなくなったビジネスマンは、自ら使う筆記具を調達する必要に迫られた。そこにスイスイ書ける筆記具が登場したのだから、それはブームにもなる。それまで、自分が普段使っているボールペンのメーカーさえ意識していなかった人々が、「ジェットストリーム」「フリクションボール」と名指しで買うようになったのだ。

ボールペン・ブームで高い筆記具が苦境に

実は、このボールペン・ブームが万年筆以外の高価格帯の筆記具をさらに苦境に追い込んだ。200円で買える消耗品が、その書き味において、数千円のボールペンを大幅に上回るのだ。そうなると高級筆記具は買いにくい。フィッシャーの「スペースペン」のように、上向きでも水の中でも無重力でも書けるという特殊性があるならともかく、ブランドイメージが高いメーカーでさえ、チップ(ペン先)やインクの性能においては、200円のボールペンに一歩も二歩も譲るのだから。

この時点で日本のメーカーは、スラスラ書ける低粘度油性インクを高級筆記具にも搭載すればよかったのだが、それには問題があった。高級ボールペンは、高級なゆえに、インクを金属製のリフィル(カートリッジ)に入れている。そのため、低粘度油性インクを用いた高級筆記具を作るには、金属製リフィルを新たに用意する必要があったのだ。

ペン先も低粘度油性インクに対応するものを開発しなければならない。あまり知られていないことだが、ボールペンはかなりデリケートな製品で、例えば、同じインクを使っていても、ボール径を0.7mmから0.5mmにするだけでも、インクから作る必要があるのだ。当然、インクが変わればペン先の仕様も変わる。細字タイプ、太字タイプを出すだけでも、そう簡単なことではない。

余談だが、日本ではキャップ式よりノック式ボールペンが圧倒的に売れる。このキャップ式をノック式にする事なんて、さらに大変なのだ。インクは一から作り直しだし、構造も新しく作らなければならない。「フリクションボール」がノック式を出すまで時間がかかったのも当たり前のことなのだ。

書きやすくて見栄えもするボールペンが人気に

ともあれ、ここにきて、ようやく各筆記具メーカーは自社の高価格帯のボールペンを高品質インクに対応させてきた。そのタイミングで、10年前、普段使うボールペンの書き味に意識的になったユーザーが、今度は、人前で使って恥ずかしくないボールペンを求め始めた。

自分が使う筆記具を意識するということは、人が使っている筆記具が気になるということでもある。一度、意識してしまうと、150円のプラスチックのボールペンは取引先の前では出しにくくなる。万年筆は使い方に慣れが必要だし、緊張する場面では使いにくい。普段の仕事のモチベーションを上げるためにも、人前で使えるボールペンが欲しくなる。

という形で、金属軸や高級樹脂軸の書きやすいボールペンが市場に出回るようになる。パイロットの「タイムライン」や「コクーン」のような、従来から人気のあった製品は、低粘度油性インク「アクロインキ」を搭載したことで、ギフト用途だけでなく一般利用のために購入する人が増えた。

三菱鉛筆は13年に「ジェットストリーム」の高級ライン「ジェットストリームプライム」を発売。高級軸の多色、多機能ペンを開発し人気を得た。

さらに、ここ数年、「芯が折れない」シャープペンシルが人気になり、大人もシャープペンシルを使うようになった結果、大人向きの金属グリップを持った1000円程度のシャープペンシルにも人気が集まった。そして、ぺんてるの「オレンズネロ」という3000円のシャープペンシルが大ヒットとなる。この製品のヒットについては、また別の事情があるのだが、それは別の機会に。

ゲルインクの高級ボールペンも登場

そして16年には、それまで学生ユーザー中心に使われていたゲルインクのボールペンの高級軸バージョンも登場した。

細い文字が安定して書けるゲルインクのボールペンは、低粘度油性インクよりもさらにサラサラと書けるし、発色も鮮やか。水性ボールペンと油性ボールペンのいいとこ取りをしたような高性能のインクだ。その実用性の高さに、ビジネスユーザーが飛びつく形で、ゼブラの「サラサグランド」、ぺんてるの「エナージェルフィログラフィ」などのヒット商品が生まれた。

いつの間にか高級筆記具は、贈答用の飾りではなく、ビジネスで使う実用品として認知されてしまったのだ。

納富廉邦
佐賀県出身、フリーライター。IT、伝統芸能、文房具、筆記具、革小物などの装身具、かばんや家電、飲食など、娯楽とモノを中心に執筆。「大人カバンの中身講座」「やかんの本」など著書多数。講演、テレビやラジオの出演、製品プロデュースなども多く手がける。

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