医者が適応障害という病名を使うときは、「明らかなストレス原因」があって発生していると判断される抑うつ状態や、不眠、メンタルが原因の身体症状(めまい、動悸〔どうき〕、頭痛など)、勤怠不良などがみられるときに使用します。総じて比較的軽めの症状に使用されることが多い病名です。

適応障害はストレス原因がはっきりしているので「ストレスから離れると6カ月以上症状が持続することはない」とされていますが、6カ月を過ぎても症状が改善しないこともあり、このときは「うつ病」など別の病名に診断が移行することもあります。

五月病はこのように病名がつくまで重症化する人もいますが、「何となくやる気が出ない」「身も心も重くてだるいなあ」と感じたまま、病気とは気づかずに自力でなんとか回復していく人も多くいます。

しかし油断は禁物です。繰り返しますが、どんな人だって五月病になり、場合によっては悪化していく可能性はゼロではないからです。そのリスクが特に高いのが、先ほど列挙した「変化が多かった人」「大きな変化を経験した人」です。

ポジティブな変化もストレスになる理由

昇進、就職などの一見おめでたい変化も、緊張を生み、疲れの原因に(c)racorn-123rf

実はあらゆる変化は人にストレスを発生させる原因となります。昇進、就職といったうれしい変化や、子どもの入学や卒業といった一見おめでたい変化でさえも、ストレスの原因になり得ます。

なぜかというと人は何らかの変化に遭遇したとき、程度の差はあるものの緊張したり警戒したりします。また、その変化に心身を対応させるために気力や体力を普段より使うからです。

例えば異動によって新しい部署に配属されれば、新しい上司、同僚に対して気を使いますし、新しいフロアやデスクといった環境、新規の仕事の手順など、さまざまな「新しいこと」があり、慣れるまで緊張しますよね。

さらに通勤場所が変化した場合は、生活リズムや通勤経路も変化します。朝ギリギリまで寝ていて家を飛び出し、寝ぼけ眼でボーっとしたままでも乗り換えや運転をこなして会社に到着していた日々とは異なり、新しい起床時刻や通勤経路に慣れるまでは落ち着かずピリピリします。

こうした緊張で「身も心もピーンと張りつめている感じ」のときには、自律神経のうち交感神経が普段より活性化します。

交感神経が活性化すると、体内ではアドレナリンやノルアドレナリンが分泌され血圧、脈拍、体温、筋肉の緊張度、脳の覚醒度が普段よりもアップしていきます。つまり簡単に言うと、変化が起こるとその変化になじむために、普段より「身体エネルギーを過剰に使っている状態」になるのです。そのため変化が重なったり、大きな変化に遭遇したりすると心や体のエネルギーを知らず知らずのうちに消耗してしまうというわけです。

この「変化ストレス」を数値化した非常に有名な指標に、「ストレスマグニチュード(社会的再適応評価尺度)」というものがあります。次回は、自分の変化ストレスの度合いがチェックできるその指標を紹介するとともに、変化ストレスが大きい人にとっての、連休中やそれ以降の過ごし方の注意点について紹介します。

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第6回「過労死は『好きで仕事をしている人』にも起こる

第5回「「過労」はサイレントキラー 体力がある人ほど注意

第4回「危険な『睡眠不足』 こんな兆候は要注意!

奥田弘美
 精神科医(精神保健指定医)・産業医(労働衛生コンサルタント)・作家。1992年山口大学医学部卒。精神科臨床および都内18カ所の産業医として日々多くの働く人のメンタルケア・ヘルスケアに関わっている。執筆活動にも力を入れており「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネジメントセンター)など著書多数。日本マインドフルネス普及協会を立ち上げ日本人にあったマインドフルネス瞑想の普及も行う。

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