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東京で大阪の串カツ 母の屋台の味、ソースにこだわり 賢人コラム(森一起)

2017/4/17

「お客さん、それ使っちゃダメ、計算用だからね」、カウンターの湯のみに挿された箸でサワーを混ぜようとした客に、極太の菜箸を手にした店主たけちゃん(武田典之さん)が優しく注意する。

「たけちゃん」の特等席、フライヤー前の立ち飲みカウンターに、珍しく一見のお客さんが迷い込んだようだ。

Summary
1.地下鉄三田、JR田町駅からすぐ、慶応仲通り商店街すぐの立地
2.実家はいまも大阪・平野で串カツ屋台「武田」を営む、そのまんまの大阪の味
3.串カツの価格も牛肉で90円など、価格もスタイルも大阪そのもの

 すかさず、近くの常連客がアドバイスする。「その少し派手な箸が飲み物、で、食べ終わった串も、捨てないで湯のみに入れてね、長さと本数で計算するから。あと、ソースは2度漬け禁止ね」。

■串カツの命は、ソースや!

極太の菜箸を手にした店主たけちゃん

 今では都内でもポピュラーになった2度漬け禁止という言葉を、最も早い時期に東京に浸透させたのが、北千住の「天七」とここ「たけちゃん」だ。大阪に続き、いつのまにか串カツチェーンだらけになった東京だが、本場の串カツスピリットが生き続けるのは老舗の2軒。

 特に「たけちゃん」は、大阪・平野で現在も串カツ屋台「武田」を営むお母さんのDNAが100%引き継がれた、そのまんまの大阪の味だ。ここには、揚がるのを待つ間のどて焼きも、紅生姜の串カツもある。

 バルブ屋さんだった父親が串カツ屋を目指したのは、まだ、たけちゃんが少年の頃だった。

そのまんまの大阪の味

「串カツの命は、ソースや!」、そう信じていた父親と一緒に、大阪中の有名な串カツ屋に出かけては、小さいスポイトで味の秘密をサンプリング。どこにもひけを取らない、独自のブレンドを完成する。

 程なくして、前から目星を付けていた平野の古い住宅街に建つ寺の外壁脇に、屋台「武田」を開店。西成の「ひげ勝」とともに、現在でも大阪を代表する串カツの名店だ。

 大学進学と同時に上京し、そのまま就職したたけちゃんも、やがて思うところあって脱サラ。父と同じ、串の迷宮へと泳ぎ出していく。

 サラリーマンの妻から串カツ屋の女将へ、家族の生活も一変する。戸惑いの中でスタートした「たけちゃん」だったが、始まってからは、江戸っ子の女将さんの凛とした客捌きが店のもうひとつの顔になっている。

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