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歴代5機種、ずっと販売 ソニー「RX100」人気のワケ

日経トレンディネット

2017/4/14

RX100シリーズは、4年半以上前に登場した初代RX100(右端)から最新のRX100 V(中央)まで、過去に登場したシリーズ5機種すべてを現在でも併売している。それぞれ機能や装備、価格に違いがあり、最新モデルがベストバイとは限らない
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 大型の撮像素子や明るいレンズを搭載し、デジタル一眼に迫る高画質での撮影が楽しめることで人気なのが、レンズ一体型の高級コンパクトデジカメだ。高級感のあるデザインを採用する機種が多く、“大人の道具”としての所有欲もくすぐってくれる。

 ここ数年、高級コンパクトで定番といえる地位を獲得しているのが、ソニーの「Cyber-shot DSC-RX100」シリーズだ。2012年6月に登場した初代モデルから数えて5世代目となる最新モデル「RX100 V」が2016年10月末に登場して話題を呼んでいるが、実はRX100シリーズにはほかにはない特徴がある。過去に登場したシリーズの5機種すべてを現行モデルと位置づけており、現在でも5機種を併売しているのだ。しかも驚かされるのが、装備の乏しい初代モデルがダントツの一番人気であること。新しい製品ほど好まれるデジカメ業界において異例の状況となっている。

 RX100シリーズがどうして幅広いユーザーにウケているのか、各機種の違いや選び方のポイントはどこにあるのか、改めて見ていきたい。

■デジタル一眼と同等の高画質や操作性、機能が評価された

 前述の通り、RX100シリーズは現在までに5製品が登場しており、すべての機種を併売している。基本的なデザインや本体サイズをまったく変えておらず、一見するだけでは機種の違いが分からないほど。「デザインをむやみに変えないのがよい」と評価する声が多く、製品のコンセプトは固定ファンの多いリコーの高級コンパクト「GR」に似た印象を受ける。

 RX100シリーズが評価された理由は多岐にわたるが、もっとも大きな要因は「小型軽量ながらデジタル一眼に迫る高画質で撮れること」にある。初代モデルが登場した2012年6月当時、1/1.7型や2/3型の小さな撮像素子を採用していた他社に先駆けて1型の大型CMOSセンサーを搭載し、「手のひらサイズのカメラなのにこんな高画質で撮れるのか!」と写真ファンをあっと言わせた。広角側F1.8の明るいレンズにより、コンパクトデジカメでは難しかったボケを生かした表現が楽しめる点も評価された。

 このサイズながらマニュアル撮影にしっかり対応しているのも評価されているポイントだ。絞り優先やシャッター速度優先、マニュアル露出などの各露出モードを搭載しているほか、レンズ周囲の大型リングと背面の電子ダイヤルで露出補正や設定値がスムーズに変更でき、普段デジタル一眼を使っている人でも同じような操作感覚で思い通りの表現に仕上げられる。ボタンやダイヤルに好きな機能を割り当てるカスタマイズ機能が充実している点も、ストレスなく扱いたい写真ファンに評価された。

RX100が採用した1型のイメージセンサー(左)。一般的なコンパクトデジカメが採用する1/2.3型のイメージセンサー(右)と比べると面積の違いは一目瞭然で、これが高画質に直結した
ズーム倍率をあえて抑えてレンズの明るさを追求したことも、RX100シリーズが高く評価されたポイントの1つだ

 いち早くUSB充電に対応したことも挙げられる。Androidスマートフォン(スマホ)などと同じmicroUSB端子経由で充電する機能を備えており、コンセントがない場所でもモバイルバッテリーやパソコンがあれば充電できる。初代RX100の登場時、競合モデルの多くはコンセントに差し込む専用のバッテリーチャージャーを使わなければ充電できなかった。指をくわえてシャッターチャンスを逃すしかないバッテリー切れを回避できるUSB充電の搭載は、多くの写真ファンに評価された。発売当初から要望の声が多かったグリップを、両面テープの貼り付けタイプで安く製品化したことも注目された。

■RX100シリーズ、機種ごとの違いをチェック

 初代モデルの大ヒットにあぐらをかくことなく、改良を重ねた新機種をコンスタントに投入していったのも、RX100シリーズの魅力だ。ただ、RX100シリーズは外観が基本的に同じこともあり、「機種ごとの違いがよく分からない」「どの点を見て選べばよいのだろうか」と感じる人も多い。機種ごとのおもな特徴をおさらいしてみたい。

初代RX100と比べて一般的に優れているといえるポイントをオレンジ色で示した。RX100 III以降の機種は5000円のキャッシュバックキャンペーンが始まった点にも留意したい

▼装備は簡素だが画質は現役の「初代RX100」

 RX100シリーズの購入を検討しているならば、まずは初代RX100を知る必要がある。シリーズは世代を重ねるごとにさまざまな進化を遂げていったが、“素”のモデルといえるRX100と比べることで、2世代目以降のモデルで追加されたり改良された装備が自分にとって必要かどうかが判断できるからだ。

現在でもシリーズで一番の人気を誇る初代RX100

 初代RX100のレンズは、35mm判換算で28~100mmをカバーする光学3.6倍ズームだ。広角側がF1.8と明るいのがポイントだが、接写性能に弱いのが留意点といえる。広角端では約5cmまで近づけるものの、ちょっとでも望遠側にズームすると途端に撮影距離が延びてしまうので、小さな花や食べ物を大きく写し取るのは難しい。シーンによっては、広角側の引きが足りないと感じることも多い。テーブルフォトや広角撮影重視ならば、レンズユニットを一新したRX100 III以降の機種もチェックしたい。

 撮像素子は、裏面照射型ではないCMOSセンサーで、高感度こそシリーズで唯一ISO6400止まりとなるが、低感度での撮影ならば最新のRX100 Vと比べてもそん色のない画質を誇る。シリーズで定評のある高画質は、初代RX100でも健在なのだ。

 液晶モニターはオーソドックスな固定式で、電子ビューファインダーなどのプラスアルファも持たず、さすがに装備は物足りなさを感じる。だが、その分重量はシリーズでもっとも軽く、バッテリーとメモリーカードを含んでも240gに抑えた。フットワークの軽さを重視するならば注目できる。

背面液晶は固定式で電子ビューファインダーも搭載せず、シンプルな作りだ

▼唯一のホットシューを搭載するが中途半端な印象の「RX100 II」(DSC-RX100M2)

 RX100をベースに、シリーズで唯一のホットシューを搭載したモデル。ソニー独自のマルチインターフェースシュー規格なので、クリップオンストロボだけでなく外付けの電子ビューファインダー(EVF)も搭載できる。ストロボでバウンス撮影をしたい人にとっては唯一の選択肢となるが、RX100でクリップオンストロボが必要になるシーンはそう多くはないだろう。

シリーズで唯一のホットシューを搭載する2世代目のRX100 II

 液晶はチルト式を採用するが、RX100 III以降で採用された180度回転タイプではないので、自分撮りには対応しない。レンズはRX100と同じ。ホットシューがどうしても必要な人以外には、全体的に中途半端さを感じさせるモデルといえる。

背面液晶はチルト式を採用するが、自分撮りには対応しない

▼EVFの搭載とレンズユニットの一新で大改良、バランスがよい「RX100 III」(DSC-RX100M3)

 ポップアップ式の電子ビューファインダー(EVF)の搭載とレンズユニットの一新で、大きく魅力を増した3世代目。144万ドットのEVFはポップアップ式で、使う際は接眼部が高くなって見やすくなるうえ、使わない時は収納することで出っ張らずに済む。

レンズを広角寄りの明るいタイプに一新した3世代目のRX100 III

 レンズも大きく変わった。24~70mm相当の光学2.9倍ズームと倍率が控えめになった代わりに、レンズの明るさがF1.8-2.8と望遠側が明るくなった。弱点とされた接写性能が改善され、テーブルフォトもある程度撮りやすくなった。背面のチルト式液晶が上方向に180度動くようになり、自分撮りに対応したのも注目される。

レンズを広角寄りの明るいタイプに一新した3世代目のRX100 III

▼積層型CMOSの搭載と4K動画への対応を図った「RX100 IV」(DSC-RX100M4)

 基本的な装備はRX100 IIIを継承しつつ、撮影データの読み出し速度を従来の5倍以上に高めた積層型CMOSセンサーを初めて採用。連写は16コマ/秒に向上し、1/32000秒の高速シャッターに対応するなど、1枚1枚をゆっくり撮影するという高級コンパクトの常識を覆した。だが、像面位相差AFを搭載して追従性能が飛躍的に向上したRX100 Vが登場したことで、AF性能は物足りなさを感じる。撮影時間は5分と短いものの、動画は4K画質での撮影に対応。EVFは259万ドットの高精細タイプに進化した。

ポップアップ式の電子ビューファインダーはRX100 IIIと同じだが、259万ドットに高精細化された

▼像面位相差AFで圧倒的な撮影性能を備えた「RX100 V」(DSC-RX100M5)

 積層型CMOSセンサー搭載のRX100 IVをベースに、オートフォーカスの速度や精度を改良して速写性能を飛躍的に高めたモデル。撮像素子に325点の像面位相差AFを搭載し、オートフォーカスを働かせながら24コマ/秒もの高速連写ができるようになった。素早く動くペットなどの被写体にもしっかり追従し、速写性能は高性能一眼レフをも上回るレベルになった。

最新モデルのRX100 V。前面の塗装を一部変更するなどして、質感の向上が図られた

■RX100シリーズは奇数型番の3機種から選ぶのがベター、キャッシュバックにも注目

 1機種も販売終了にすることなく5機種も併売することにした狙いについて、ソニーの広報担当者は「さまざまな撮影シーンや撮りたい被写体、ユーザーの撮影スタイルに合わせて選んでもらえるよう、5機種すべてを併売している。シンプルな高画質モデルを求める人にはRX100を、電子ビューファインダーやチルト式液晶でさまざまな撮影スタイルを試したい人にはRX100 IIIを、動きものを素早く正確に撮影したい人にはAF/AE追従の24fps連写が可能なRX100 Vを、と自分が求めるものに合ったベストな1台を選んでもらえる」と語る。

 価格.comのデータを見ると、その言葉通り機能や装備が充実した最新のRX100 Vの人気がもっとも高いわけではない。実は、発売から間もなく5年を迎える初代RX100が一番売れているのだ。次いで、RX100 IIIとRX100 Vの2機種が2位グループを形成している。

 初代RX100が圧倒的な人気を集める理由は、ズバリ「高画質で撮れるのに安い」という買い得感の高さだ。初代RX100の最安値は3万6500円前後(税込み、以下同)と、4万円を大きく切る水準で推移している。各社の1型センサー搭載モデルは3万円台で買えるものが存在せず、高級コンパクトデジカメ全体で見ても初代RX100の安さが際立つ。この価格で最新のRX100 Vに迫る写真が撮れるとあらば、電子ビューファインダーや速写性能などの付加機能がなくても納得できる。「高級コンパクトが欲しいが予算はできるだけ抑えたい」と考える人には断然お薦めだ。

最安価格の推移グラフ。初代RX100の安さが目を引く 価格.comの「トレンドサーチ」から引用。表記の価格は税込み Copyright (c) Kakaku.com, Inc. All Rights Reserved.

 RX100 IIIは、明るいズームレンズと電子ビューファインダー、自分撮り対応のチルト液晶を搭載したモデルが比較的手ごろな価格で入手できるのが魅力だ。最安値は6万4000円前後なので、初代RX100と比べれば3万円近く高いが、RX100 Vよりは4万円以上安い。Wi-Fiなどの付加機能も得られることを考慮すれば、納得できる価格差といえる。

 RX100 Vは、最安値が10万5000円前後と群を抜いて高い。だが、同等のオートフォーカス性能や速写性能をこのサイズにまとめたカメラが現状ではほかに存在しないことから、価格はどうであれこの性能を手にしたい!と考える人には唯一の選択肢となる。性能を評価できる人ならば、頑張って購入しても後悔はしないはずだ。

 RX100 IIとRX100 IVは中途半端な印象が漂う。RX100 IIは、ホットシューの搭載しか魅力がなく、必要なければRX100かRX100 IIIを選ぶべきだ。RX100 IVはRX100 Vに迫る装備を誇るが、オートフォーカス性能やAF追従の連写性能はRX100 Vより明らかに劣る。RX100 IVの最安価格は8万1000円前後と価格差は2万5000円近くあるが、どうせ高いカメラを買うならば最高峰のRX100 Vを選びたいところ。

 3月31日より、RX100シリーズのキャッシュバックキャンペーン「RXプレミアムキャンペーン」を開始することが発表された。対象機種はRX100 III/IV/Vの3機種で、いずれも5000円がキャッシュバックされる。RX100 IIIは6万円を切る価格で入手できる計算になるので、がぜん買い得感が高まる。現時点では、「コスパ最高で万人向けの初代RX100」「電子ビューファインダーやチルト式液晶で撮影の幅が広がるRX100 III」「あらゆる被写体を確実に捕らえられる最強コンパクトデジカメのRX100 V」と、奇数型番の3機種から自分の要望に合ったカメラを選ぶのがよさそうだ。

(日経トレンディネット 磯修)

[日経トレンディネット 2017年3月30日付の記事を再構成]

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