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セブン&アイHDの伊藤順朗常務

セブン&アイHDの伊藤順朗常務

4月6日に2017年2月期決算を発表したセブン&アイ・ホールディングス(HD)。まもなくトップに就任して1年を迎える井阪隆一社長は、百貨店や総合スーパーの構造改革を断行する一方で、同日に米国でのコンビニ事業の取得を発表、事業の選択と集中を推し進めている。16年5月にカリスマ経営者といわれた鈴木敏文氏が会長を突然退任して「セブンの変」と騒がれたが、足元の業績は堅調。この会見には新たな主役も姿を見せた。創業家出身の伊藤順朗常務執行役員だ。

創業者、今もほぼ毎日出社

「いじめないでくださいよ」

6日夕、都内でセブン&アイの決算会見終了後に年配の記者から「デビューですか」と問われると、照れ笑いを浮かべながら、伊藤常務はこう答えた。16年末、鈴木氏の次男の鈴木康弘取締役は退任したが、伊藤氏は執行役員から常務執行役員に昇格した。現在は経営管理部門などを担うが、同会見では井阪社長の隣に座った。公の会見に出席するの初めてという。

伊藤常務はセブン&アイ名誉会長でイトーヨーカ堂創業者である伊藤雅俊氏の次男。92歳になる創業者は「今もほぼ毎日、数時間ですが、出社している」と伊藤常務は話す。創業者は息子に何を語りかけているのか。

「父はもう細かいことは言いません。いつも同じ言葉ですね。『常に謙虚に、人の話を聞きなさい』と話している」という。確かに会見中も、その後記者に囲まれても、伊藤常務は言葉少なで礼儀正しく振る舞っていた。

井阪社長、逃げずに改革

日本最大級の小売りグループに成長したセブン&アイ。「2人の創業者」がいるといわれた。総合スーパーを創り上げた伊藤名誉会長と、日本のコンビニの生みの親と呼ばれる鈴木敏文氏だ。鈴木氏は約25年にわたり同社を率いた。次男の康弘氏を取締役に引き上げ、ネット戦略を任せた。ところが16年4月、当時、セブン―イレブン社長だった井阪氏の解任を求め、逆に取締役会で否決された。結局、鈴木氏は自らの退任を決め、後任には井阪氏がついた。

井阪社長はこの1年を振り返り、「偉大なカリスマ経営者の後を継いだ。まだ改革は途上だが、逃げずに真っ正面から取り組んできた」と堂々と語った。6日の会見も様々なデータを交えながら、プレゼンテーションし、メディアの質問にもてきぱきと回答。米国のコンビニ1108店舗を約3660億円で取得する件について、記者から「高すぎないか」と問われても、「むしろ安いと考えている。米国のコンビニはガソリンスタンドを併設している。投資回収のめどはある」と強気の姿勢をつらぬいた。

セブンの牙城崩れず

セブン&アイHDの井阪隆一社長(左)と伊藤常務

セブン&アイHDの井阪隆一社長(左)と伊藤常務

業績も堅調だ。店舗閉鎖などの構造改革をすすめているため、17年2月期は3.5%の減収だったが、連結営業利益は前期比3.5%増の3645億円となった。国内のコンビニ市場でのシェアは1ポイント上昇して42.7%と王者セブン―イレブンの牙城は崩れていない。「シェア50%を目指す」と井阪社長は強調、セブン&アイのトップとして順調な滑り出しをみせている。

伊藤常務を伴い、就任1年目の決算会見を無事に乗り切った井阪社長。カリスマ鈴木氏の旧体制からの脱却と創業家回帰の動きが強まっているのは確かなようだ。

(代慶達也)

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